4月29日、新潟市民芸術文化会館(りゅーとぴあ)に、さまざまな制服に身を包み、楽器を手にした中学・高校生420人が勢揃いした。今年で13回目を迎えた「Joint Concert in Brass」。新潟県下越地方の中学校と高校の吹奏楽部員、合唱部員が集まり、ひとつのステージをつくり上げるイベントで、今年は中学校4校、高校5校が参加し、「皆の者!愛=音楽 これが我らの青春じゃ!」をスローガンに、約2時間半の演奏を繰り広げた。
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「今度、一緒に勉強会やろうてば」
スタートは、2人の吹奏楽指導者のこんな何気ないひとことだった。
中学・高校の吹奏楽部では、毎年秋に開催される全日本吹奏楽コンクールに向けて、課題曲と自由曲をじっくり練習することが活動の中心になっている。共に国立音楽大学で学んだ先輩後輩の間柄だという元新潟商業高校吹奏楽部音楽監督の村山文隆さん(現・東京学館新潟高校吹奏楽部顧問)と、江南高校吹奏楽部顧問だった河本隆吉さん(現・長岡高)は、それぞれの部の技術向上を目指して、1997年、万代市民会館で初めての2校合同演奏会を企画。これが他の吹奏楽指導者にも伝わり、翌年は関屋中が参加、名称も「Joint Concert in Brass」と変更されて新潟県立音楽文化ホールで行われ、99年にりゅーとぴあがオープンしてからは同館コンサートホールで実施するようになった。参加校は毎年少しずつ増え、2005年からは9校で定着し、1,900席のコンサートホールがほぼ満席となる吹奏楽の祭典へと成長した。
「生徒たちと顧問の先生、スタッフとして参加してくれる先生、保護者の熱意でここまでになりました」と村山先生。あくまで部活動の一環と認定され、市や文化財団などからの助成がなかなか下りず、すべて入場料収入で賄っているという。
各学校から代表者が集まって実行委員会をつくり、練習の計画と進行、コンサートの構成、チケット販売からプログラム作成、会計、ステージの進行、記録、楽器運搬、会場運営など参加者が手分けして行う。まさに手づくりのイベントなのだ。
コンサートの準備が始まるのは毎年1月中旬頃。それから先生方や実行委員が打ち合わせを重ね、春休みの1週間にわたる合同練習に突入する。演奏会もさることながら、この合同練習こそが、このイベントの“肝”になっている。
新潟商業高校に生徒たちが集まって朝9時から夕方4時まで、連日練習に汗を流す。「大人数だから教室を移動するのも時間がかかって大変なんです」と村山先生。期間中に交流会なども開催され、最初は壁があった中学生も高校生もみるみる仲良くなっていく。連帯感と責任感を強め、ひとつの目標に向かって結束し、短い時間で大きく成長するのだという。
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開演前に、合同練習会で選抜されたフルート、サックス、打楽器パートによるロビーコンサートも行われ、13時、いよいよ本番の幕が上がる。オープニングを飾ったのは、各高校の新1年生ユニットによる演奏だった。中学時代とは違う楽器を担当する生徒、あるいは初めて楽器を手にした生徒。新しい環境に入ったばかりの生徒たちが、緊張した面持ちで華やかな旋律の『スパニッシュ・フィーバー』で勢いをつける。
続いて学校単位でコンクール課題曲を演奏し、さらにOB演奏、全員の合唱で第1部が終了。合唱では、第11回開催時に作曲家・木下牧子さんに委嘱した作品『いま!』が披露された。第2部は50人程度の混成6チームに分かれての演奏会。最後の全員参加による合奏では、ホールのいたる所に生徒が散らばり、誇らしげに楽器を持ち、音を奏で、拍手はいつまでも止むことはなかった。
新潟市立高志高校吹奏楽部部長の丸山優子さんは、「中学生は高校生のレベルの高さに刺激を受けるし、高校生は一生懸命練習している中学生の姿を見て、初心を思い出す。互いに励みになるし、多くの仲間ができるのが嬉しい」と終演後のロビーで顔を紅潮させながら話してくれた。
同じ音楽を志し、切磋琢磨できる仲間がいる─学校を越えてこうした場をプロデュースすることは容易ではないが、観客はそこに変わらぬ青春の姿を見て感動し、活力をもらう。地域に溶け込むイベントに成長した理由がわかった気がした。
(ライター・土屋典子)
●第13回Joint Concert in Brass 2009
~皆の者!愛=音楽 これが我らの青春じゃ!~
[主催]合同演奏会実行委員会事務局
[会期]4月29日
[会場]りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館
[参加校]新潟市立関屋中、小針中、坂井輪中、山の下中、新潟県立新潟商業高、新潟青陵高、東京学館新潟高、新潟市立高志高、新潟県立新潟南高