一般社団法人 地域創造

「東京芸術見本市2008」地域創造主催セミナー終了報告

 3月4日から7日まで恵比寿で「東京芸術見本市2009」が開催されました。この時期に合わせてさまざまな自主公演が企画されるようになり、参加者は見本市を起点にして、夜は都内の各劇場に出掛けて行くという広がりある催しとなりました。

 6日には地域創造主催セミナー「アウトリーチを検証する!」が行われました。吉本光宏さん(ニッセイ基礎研究所)の進行により、まず、津村卓地域創造プロデューサーが財団の推進してきたアウトリーチ事業を踏まえ、「なぜ学校に届けるのか目的が明確になっていない」「アウトリーチを行うアーティストを誰が育てるのか」「学校とアーティストを繋ぐコーディネーターが必要」と問題提起。続いて、これまで1万5,000人の子どもたちにアーティストとの出会いを提供してきたNPO法人芸術家と子どもたちの堤康彦さん、美術館・博物館の教育普及事業の専門家であるイデア代表の大月ヒロ子さんが事例を紹介。

 札幌のNPO法人S-AIRがコーディネートを行い、現代美術のアーティスト・河田雅文さんが子どもや地域の人たちと一緒に小学校の校庭で巨大な雪の富士山をつくったプロジェクトについて、校長先生が、「完成形を誰も予測できないからみんなでつくり上げたいと思った。創造するというのはモノだけを創造するのではなく、人間同士が創造的に結び付いていくというのが面白い」とコメントされていたのが印象的でした。また、昭和時代のいらなくなったものをコレクションした北名古屋市歴史民俗資料館「昭和日常博物館」がそのコレクションを高齢者ケアに役立てているという回想療法の事例も興味深いものでした。

 こうした事例を踏まえ、奥村高明さん(国立教育政策研究所)、中村透さん(琉球大学教育学部教授)がコメント。孤立化した社会の状況に対して「アートを媒介にした繋ぎ直しが行われている」「アウトリーチではなく“クロスリーチ”ではないか」といったキーワードが次々に飛び出すなど、刺激的なセミナーになりました。

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