一般社団法人 地域創造

「ステージラボ徳島セッション」報告

ステージラボ徳島セッション報告 2009年2月3日~6日

Photo04.jpg
写真:
左上・「阿波人形浄瑠璃を体験しよう!」(共通プログラム)
右上・「阿波おどりをたのしもう!」(共通プログラム)
左下・山田うんさんのワークショップ「身体と頭を解放する」(文化政策企画・文化施設運営コース)
右下・田村緑さんの「体感しよう 音楽編」(自主事業コース)

 今回のステージラボは、阿波踊りや人形浄瑠璃で有名な徳島県で開催されました。会期は2月3日から6日までで、会場となったのは徳島県郷土文化会館です。

 徳島県には、神社の境内などに209棟もの農村舞台が残っています。その内、208棟が人形芝居用の舞台で、それは日本に現存しているものの9割以上に当たります。県ではこうした地域文化資源を活用した「文化立県とくしま」の推進を目的に、平成20年度に2億円の基金を創設。飯泉嘉門知事を会長とした推進会議を設けて、「人形浄瑠璃」「阿波踊り」「藍染め」「日本初演が行われた第九」の4つの柱で事業を進めています。新年度には、農村舞台などを活用した「阿波人形浄瑠璃月間~ジョールリ100公演」(2009年10月3日~11月3日)を開催する予定です。

 今回のラボでは、こうした徳島らしい伝統芸能体験プログラムが企画されたほか、指定管理者制度への移行を経て、改めて公立ホールやアウトリーチの意義について考えてみる機会ともなりました。共催者として全面協力をいただきました徳島県、財団法人徳島県文化振興財団の皆様には、心よりお礼申し上げます。

 

●アウトリーチがテーマ

 今回のラボでは、いずれのコースも初日の自己紹介からコーディネーターの問題意識が反映したプログラムとなりました。

 環境の激変が続く今だからこそ「改めてホール運営について考え、課題を共有しよう」というテーマのホール入門コースでは、初日からお互いの課題を出し合うという厳しい現実からスタート。自主事業コースは、日本クラシック音楽事業協会の丹羽徹さんが初コーディネーターを務め、自分の好きな曲をかけてその良さをみんなに伝えるという面白い試みが行われました。クラシックだけでなく、ポップス、民謡、演歌など「選ぶのが大変だった」という1曲に託されたさまざまな思いが溢れ、音楽事業を行う原点を共有する貴重な時間となりました。

 文化政策企画・文化施設運営コースは、考える前にまずは頭と身体をほぐしてもらおうと、山田うんさんによるコンテンポラリーダンスのワークショップが行われました。『スーダラ節』や『サザエさん』などコミカルな音楽に乗せて、跳びはね、おしりで歩き、徹底的にウォームアップ。最後は二人一組になって「じゃんけん」や「あっちむいてホイ」という身近な手遊びをアレンジした“全身じゃんけん”や“最大級あっち行こうホイ”などで汗を流しました。「ダンスは身体のド真ん中のエクステンションだと思っています。ド真ん中から信号を出すことによって、普段身体を動かしているかどうかに関わらず、あり得ないほど身体が動く」とうんさん。

 今回のラボでは、全コースでアウトリーチをテーマに取り上げました。音活登録アーティストOBのピアニスト・田村緑さんによる小学生向けのモデル・プログラムを実際に体験し、それぞれの観点から講義が行われました。このモデル・プログラムは、子どもたちが練習している曲を取り上げた演奏と楽曲解説、楽器の体験的学習(ピアノを解体して構造を見せ、響板の下に潜るなどして体験的学習を行う)、子どもと演奏家を近づけるコミュニケーション(夢について語る)、鑑賞(音楽絵本『スイミー』)、参加(演奏技術がなくても演奏できるハンドベルを用いた共演)を1コマで行うという、考え抜かれたものです。

 自主事業コースで行われた児玉真地域創造プロデューサーによる講義では、「公立ホールの役割は自治体の文化政策の具現化だとすると、ホールの中だけで事業は完結しません。ホールが活動していくことによって生活が変わるような、ホールが出来て良かったと思えるような恩恵を地域に広げるには、ホールがアートセンターとして開かれた事業を行う必要があります。アウトリーチはそのためのアートの側からの働きかけであり、“使える(有効な)”形式です」と整理されていました。

 この他、ホール入門コースでは、国指定重要文化財の犬飼農村舞台に出掛け、保存会の指導で襖カラクリ(人形浄瑠璃の背景画を転換する仕掛け)の操作を体験したり、文化政策企画・文化施設運営コースでは、PFIの建設と直営による事業運営で注目を集めている福島県いわき市いわき芸術文化交流館アリオスについて学ぶなど、いつもながらにバラエティに富んだカリキュラムとなりました。

 

●徳島の心にふれる?阿波踊りと浄瑠璃体験

 ステージラボ恒例の共通プログラムで取り上げたのは、もちろん徳島名物の阿波踊りと人形浄瑠璃です。阿波踊りの指導をしていただいたのは、阿波おどり振興協会・徳島県阿波おどり保存協会合わせて33連ある内で、囃子の実力にかけては右に出るものがないという娯こじゃへい茶平の方々。男踊り、女踊り、女ハッピ踊り、笛、鉦、太鼓に分かれて稽古を行いましたが、腰を落として地をはうように進む男踊り、手を高く掲げ半身にそらして優雅に進む女踊りの魅力に、参加者はみんな虜になっていました。また、人形浄瑠璃は、阿波十郎兵衛座と阿波人形浄瑠璃研究会青年座の方々に指導していただき、『恵比須舞』『三番叟』『傾城阿波鳴門』のさわりを稽古しました。

 大ホールで受講生による発表を行った後、指導していただいた3団体の本番を鑑賞。フィナーレ、阿波踊りが描かれた緞帳が上がると、絵から抜け出たかのような総勢60名の娯茶平連が登場し、迫力あるパフォーマンスを披露。まさに徳島の心に触れた、贅沢な共通プログラムとなりました。

 

●ステージラボ徳島セッション カリキュラム

pic01.gif

 

●コースコーディネーター
◎ホール入門コース
津村卓(地域創造プロデューサー)
◎自主事業コース
丹羽徹(社団法人日本クラシック音楽事業協会事務局長)
◎文化政策企画・文化施設運営コース
吉本光宏(ニッセイ基礎研究所芸術文化プロジェクト室長)

 

●ステージラボに関する問い合わせ
芸術環境部 尾形尚子
Tel. 03-5573-4076

カテゴリー