公共ホールが演劇作品の共同製作を行う「公共ホール演劇製作ネットワーク事業」を地域のニーズに合わせて衣替えした「公共ホール演劇ネットワーク事業」が、今年度からスタートしました。新事業は、演劇の手法を使ったアウトリーチ・プログラムの普及と、地域における演劇公演の開催を目的としています。地域創造の津村卓プロデューサーは、「公演事業をしっかり実施することと共に、学校でどのようなことができるかアーティストにも提案してもらいたいし、この事業でホールの担当者に演劇の力を社会に活かす取り組みにトライしてもらいたい」と話しています。
一昨年4月に公共ホールによる企画プレゼンテーションを行った結果、1回目となる今年度は、大阪を拠点に活躍する南河内万歳一座の『なつざんしょ』の公演と、同劇団主宰で劇作家・演出家の内藤裕敬さんによるアウトリーチ・プログラムを、千葉県南総文化ホール(2008年11月25日~30日)、北九州芸術劇場(2009年1月13日~18日)、大野城まどかぴあ(1月19日~25日)、長崎ブリックホール(1月27日~2月1日)で行うことになりました。
基本的な枠組みは、各地域で学校へのアウトリーチを1コマ90分×最低3コマ、ホールでの一般の方を対象にしたワークショップを1コマ90分×最低1コマ、および演劇の本公演を行うというものです。以下、北九州芸術劇場のコーディネートにより、1月13日に行われた尾倉中学校でのアウトリーチ・プログラムの模様をご紹介します。
◎演劇ならではの想像力に訴えるアウトリーチ・プログラム
北九州芸術劇場では、これまでも演劇の手法を使ったアウトリーチ・プログラムを積極的に展開し、40を超える小学校で実践してきました。今回はこれまであまり対象としてこなかった中学校へのアウトリーチを企画し、秋の文化祭で演劇を行う尾倉中学2年生51人を対象としました。
13日は約半数の27人を対象に、前半は身体を使ったワークショップ、後半は台本を使ったワークショップが行われました。前半は、両手、両足を開いたり閉じたりする体操や、V字腹筋をやりながら数をカウントするなど、一見誰でもできそうな単純なワークを使って、「自分の身体は自分の思いどおりに動かないこと」「そういう自分を知らないと芝居ができないこと」「たとえ間違っても舞台に立った限りは堂々とした顔をしてやり通すこと」「集中力で相手を感じて呼吸を合わせること」といった演劇の基本となる心得を伝授。
後半は、台風が通り過ぎる様子を屋上で見ているという設定の短い台本を使い、言葉と向き合うことで想像力をふくらませるワークショップが行われました。「台本に書かれていないことをどれだけ想像できるかがお芝居の稽古。屋上からどんな景色が見えるのか、雲がどんな風に流れているのか、屋上に上がって来るまではどんな気持ちだったのか、イメージすることが大切」という演出家の存在によって、子どもたちの反応が見る間に変わっていきました。
内藤さんは、「演劇のある部分が教育現場で応用できる可能性は確かにあると思います。しかし、小学校、中学校、高校もあれば、6歳~60歳まで30人のグループもあるなど、受け入れ団体が多岐にわたっていて、ワークショップでどのような反応が出てくるか全く計算できない。その場でどれだけ対応できるか、演出家としての力量を問われます」と、最後まで気が抜けないといった面持ちでした。
左:『なつざんしょ』舞台写真(撮影:谷古宇正彦)
右:尾倉中学校でのアウトリーチの様子
●平成22年度「公共ホール演劇ネットワーク事業」プレゼンテーション団体募集
平成22年度の事業に向けて開催する事業説明会でプレゼンテーションを行っていただく団体を募集します。
◎事業までの流れ
①応募団体およびカンパニーは地域創造のヒアリングを経て、事業説明会で関心のある団体に対してアウトリ-チと演劇公演の内容等をプレゼンテーション。
②事業説明会後、参加希望団体からどのカンパニーで事業を実施したいか意向を集約。その結果と事業の実現性、予算額、事業実施時期を検討、事業実施カンパニーと事業参加団体を決定。
◎応募方法
同封の概要、要項をご覧の上、申請ください。申請書は地域創造のホームページの「様式箱」でダウンロードできます。
(地域創造HP:http://www.jafra.or.jp)
[募集締切]2月20日(金)必着
◎事業説明会とプレゼンテーション
4月13日(月)に地域創造の会議室で行います。翌14日(火)には演劇の事業に関するセミナーを開催する予定です。ご興味のある方は、担当までご連絡ください(詳細は次号に掲載します)。