一般社団法人 地域創造

第2回「都市行政文化懇話会~文化による都市づくりを考える~」終了

 文化芸術による地域づくりに高い関心をお持ちの市長を迎えた「都市行政文化懇話会」の2回目が、10月2日に地域創造会議室で開催されました。
 冒頭、林理事長から、「地域社会を活性化するという全国知事会・市長会・町村会から付託された使命を果たすべく、財団としてもっと行政の中に飛び込んでまいりたいと思っています。顕在化するまでに時間はかかりますが、文化芸術は今の地域社会が抱えている課題に対する総合的な処方箋になり得ます。そうした最新の情報をお伝えする機会として、このような懇話会を企画させていただきました」と趣旨説明が行われました。
 その後、全国各地で現代アートのプロジェクトを実践している北川フラム氏、文化行政の最新動向について詳しい吉本光宏氏、創造都市の日本における第一人者である佐々木雅幸氏による講演が約1時間ずつ行われました。
 北川氏は、1994年から行っている米軍跡地の大規模な再開発事業「ファーレ立川」のアートプロジェクトと、過疎地域の200集落とアーティストが交流し、世界的に注目されている「越後妻有アートトリエンナーレ」の2つの取り組みを紹介。「立川では、便利なだけで人間の香りのしない町はさびれてしまうので、アートを導入してヒューマンな“驚きと発見の町をつくろう”と提案しました。それに対して越後妻有では、アートをひとつの道祖神として訪ねながら、集落や里山や風や身体に戻っていくようなことをやっている。今ではアートの展覧会というより地域とどう関わるかがテーマになっています。地域に流れてきた固有の時間という大切なものを組織化できるのは、文化芸術しかないのでは」と話されていました。

 吉本氏は、まず、1992年に1兆円近かった地方公共団体の文化予算が2006年には約3分の1の3,776億円にまで減少している厳しい現状を指摘。その上で、現在の文化政策の潮流のひとつである「事業領域の拡大」について、イギリスの「クリエイティブ・パートナーシップ」と「コミュニティ・ダンス」を例に紹介されました。クリエイティブ・パートナーシップは、イギリス政府が2002年から4年間で300億円を投入して実施したもので、アーティストなどを学校に派遣し、教育のあり方をクリエイティブに変革する取り組みです(雑誌「地域創造」23号参照)。また、コミュニティ・ダンス( 制作基礎知識シリーズVol.29 参照)では、少年院の子どもたちの更正プログラムにダンスを取り入れた例を紹介し、「人間の力を回復するためにアートは力がある」ことが事業領域拡大のバックボーンになっていると説明されていました。
 佐々木氏は、世界的に注目されている「創造都市」について、1985年にメリナ・メルクーリが欧州文化都市を唱えたことに遡るその成り立ちから始めて、自ら関わった金沢市や高く評価されているボローニャの事例を紹介されました。「4月にリチャード・フロリダ著『クリエイティブ資本論』が翻訳されたが、その中でクリエイティブな職業の人たち=クリエイティブ・クラスが集まる都市が発展するという考え方が紹介されている」「2005年からユネスコが創造都市のネットワークづくりに動き始め、現在12都市が指定されている」といった最新情報が次々に飛び出し、刺激的な懇話会となりました。

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