今年の夏もまた、全国各地でさまざまなフェスティバルやイベントが行われます。
老舗系では、今年で飯田市での開催が最後となる「アフィニス夏の音楽祭」が20周年を迎えるほか、札幌市のパシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)が創設者のバーンスタインの生誕90周年を記念して特別プログラムを企画しています。同時期に、札幌では、観光文化都市を目指して昨年からスタートした「サッポロ・シティ・ジャズ」(大道公園の映像が映る特設テント「ホワイト・ロック」をメイン会場に3週間にわたって街中で開催されるビックイベント)も開催され、“夏の北海道は音楽”が定番になりそうです。
今年から始まる新しい取り組みで注目されるのが、静岡県コンベンションアーツセンター(グランシップ)が企画している「グランシップ 音楽の広場」です。お祭りになりがちな夏の音楽企画ですが、これは静岡ゆかりの演奏家300名が集結して、現代音楽を含めて、本格的にクラシック音楽を楽しんでもらおうという特別企画です。クセナキス作曲の『ノモス・ガンマ』では、アリーナ中央の指揮者を98名の演奏家が囲んで円陣を組んで演奏し、聴衆がその中に入って聞くという世界初の試みも行われます。
アートの力で地域活性化を目指す取り組みとして注目されている越後妻有では、来年のトリエンナーレを見据えて、今年もいろいろな催しが行われます。常設展示160作品の一挙公開、各集落でのイベントに加えて、特に注目されているのが、鉢集落で廃校になっていた小学校を絵本作家・田島征三と集落の人たちが協力して美術館として再生するプロジェクトです。来年「絵本と木の実の美術館(仮称)」として開館するのに先駆け、地元で収穫された数百個のかぼちゃを吊り下げたインスタレーションや民話を描いた原画を展示する「カボチャの空に民話の星々」(8月1日~31日)と田島さんによるコンサートやワークショップ(8月2日、3日)が行われます。また、1909年に建設されたレンガ造りの銅の精錬所が近代化産業遺跡として残る岡山県の犬島では、その精錬所をアートセンターとするプロジェクトが立ち上がっていますが、今年の4月に最初の施設として「精錬所」がオープン。夏の間は、水曜日~日曜日・祝日に公開されます。
美術館では夏休みの親子向けに、コレクションを活用した展覧会企画が目白押し。近隣小学校と連携し、ワークショップなどの成果を踏まえた展示を行う神奈川県立近代美術館や、1年を通して子どもや親子を対象とした常設展示を展開する兵庫県立美術館など、地域の子どもたちがより足を運ぶ“場”となるような企画が目につきます。
また、桜美林大学プルヌスホールでのワークショップ「劇場であそぼう」や、福井県鯖江市で開催される「河和田アートキャンプ2008」など、芸術系の大学生が中心となって積極的に企画を立案、参加するイベントも。行政、地域住民、NPO、企業、学生―さまざまなアートの担い手がそれぞれの立場を活かした企画が、夏の思い出を彩ることでしょう。