一般社団法人 地域創造

平成20年度「公共ホール音楽活性化事業」全体研修会

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写真:20・21年度おんかつ登録アーティストプレゼンテーションの模様(津田ホール)
左上・吉川健一(バリトン)
左下・ドゥオール/藤井隆史&白水芳枝(ピアノデュオ)
右上・Quintet「H」(木管五重奏)
右下・研修会の模様(地域創造会議室)

●参加館の経験を次に繋げる研修プログラム

 11年目を迎える公共ホール音楽活性化事業(以下、おんかつ)の参加団体の担当者を対象にした全体研修会が、4月15日から17日まで地域創造会議室と津田ホールを会場にして開催されました。おんかつは、オーディションにより選ばれた登録アーティスト(2年入替制)とコーディネーターを市町村の公立ホール等に派遣し、地方公共団体との共催でコンサートおよびアクティビティ(地域との交流を図るプログラム)を企画・実施するものです。
  昨年8月から9月に参加団体の募集を行った結果、今年度は全国19団体(左データ欄参照)での実施が決定しました。全体研修会では、これまでの実施団体の担当者とコーディネーターから各地の事例が紹介されるほか、登録アーティストによる実演と交流会など行われます。参加団体の担当者はこの研修会を参考にアーティストを決め、コーディネーターの協力を得て企画づくりを行い、年度内に事業を実施します。
  今年度の事例紹介では、パトリア日田とカルテット・スピリタス、四日市市文化会館と荒川洋(フルート)、青森市文化会館とBLACK BOT TOM BRASS BAND(BBBB)による事例が取り上げられました。BBBBは街を行進しながら演奏するニューオリンズ・スタイル(初期のジャズの演奏スタイル)のブラスバンドです。青森市文化会館は、そうしたアーティストの資質とねぶた祭という地域資源をコラボレートし、お囃子とBBBBとのセッション、街中パレードなどを実現しました。同館では地域創造の支援事業などを活用して3年にわたってアウトリーチ事業を実施しましたが、その経験に基づき、こうした地域との関わりや継続の重要性について議論が行われました。
  また、初めておんかつに参加する担当者のために、事業実施に向けた具体的なサジェッションも行われました。コーディネーターのひとりである能祖将夫さんは、「アーティストが子どもたちに呼びかけるビデオレターを事前に見せるだけで親近感が増すし、期待感も高まる。将来の夢や小さかった頃の夢についてのアンケートを行い、そのアンケートを紹介しながらアーティストが自分たちの話をすると音楽がすっと心に届くような親密な空間が生まれる。給食を一緒に食べるという触れ合いも効果的だ」と、アクティビティにおける“場づくり”の重要性について指摘されていました。
  四日市市文化会館の担当者の秦昌洋さんは、「おんかつによってこれまで仕事をしたことのなかった地元のいろいろな人と関係ができた。こうした地域(場所・人)のポテンシャルを引き出していくことがホールの大きな役割だと気づいた。こんな体験は日常の公務のなかではなかなかできない。大変だったけどとても楽しかった」と今年度の担当者にエールを送っていました。
  おんかつは昨年度で10周年を迎え、事例を集めたハンドブックが発行される予定ですが、講義の締めくくりには、その編集にも携わったコーディネーターの吉本光宏さんによるおんかつ事業の整理が行われました。「10年経って形骸化した取り組みも増えてきている。おんかつとは何か、どうやればいいかを常に話し合っていた原点に戻って考える時期ではないか」と言い、「公共ホール・音楽家・市民社会・公共ホールの職員を活性化する」というおんかつの意義、「アーティストから発想し、市民・観客とコミュニケートし、税金を地域や市民に還元する」というおんかつの心得などを新たな担い手たちにバトンタッチしました。

 

●バラエティに富んだ楽曲のプレゼンテーション

 2日目には、アクティビティの事例を映像で紹介した後、新たに平成20・21年度登録アーティスト(右データ欄参照)となった8組の演奏家によるお披露目のプレゼンテーションが約4時間にわたって行われました。
  得意の即興演奏を交えながら、「ホールのない田舎で生まれて、ピアノ1台あればどんな所にも飛んでいって演奏できるようなピアニストになりたいと思っていた」とおんかつの活動が自分の夢のひとつだったと熱い思いを語った今野尚美さん、客席から歌いながら登場して「オペラがもつ喜怒哀楽の魅力を日本語と原語の両方で伝えたい」と語った吉川健一さん、手のひら・爪・腕とすべてを使って立ったまま演奏する珍しい曲を披露した2台ピアノのドゥオール、小さなケルティック・ハープを演奏しながら登場した福島青衣子さんなど、自分の持ち味を理解したパフォーマンスが多く、また、選曲の幅もこれまでになく広がっているなど、演奏家にもおんかつ10年の蓄積が表れていました。また、登録アーティストには、津軽じょんがら節をヴァイオリンで演奏してみせた高橋和歌さんやピアノトリオ・ミュゼ、木管五重奏のQuintet「H」など、地域創造が県等と共催で実施しているアウトリーチ・フォーラム事業出身者も多く、財団事業としての成果を感じられるプレゼンテーションとなりました。

 

●平成20年度「公共ホール音楽活性化事業」全体研修会スケジュール

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●平成20・21年度公共ホール音楽活性化事業登録アーティスト
今野尚美(ピアノ)
高橋和歌(ヴァイオリン)
小谷口直子(クラリネット)
福島青衣子(ハープ)
吉川健一(バリトン)
ドゥオール/藤井隆史&白水芳枝(ピアノデュオ)
ピアノトリオ・ミュゼ(ピアノトリオ)
Quintet「H」(木管五重奏)

 

●公共ホール音楽活性化事業平成20年度実施団体(19団体)
六戸町(青森県)/蔵王町教育委員会(宮城県)/羽後町(秋田県)/小美玉市(茨城県)/(財)日立市科学文化情報財団(茨城県)/吉見町(埼玉県)/深谷市教育委員会(埼玉県)/(財)港区スポーツふれあい文化健康財団(東京都)/(財)くにたち文化・スポーツ振興財団(東京都国立市)/東員町(三重県)/(株)ビー・ビー・シー・サービス(滋賀県大津市)/(財)富田林市文化振興事業団(大阪府)/福崎町教育委員会(兵庫県)/(財)和歌山市都市整備公社(和歌山県)/琴浦町教育委員会(鳥取県)/(財)高松市文化芸術財団(香川県)/古賀市教育委員会(福岡県)/宮若市教育委員会(福岡県)/臼杵市(大分県)

●公共ホール音楽活性化事業に関する問い合わせ
芸術環境部 清水・瀬川
Tel. 03-5573-4093

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