地域の公立ホール・劇場関係者と国内外の舞台芸術関係者との出会い・交流の場である「東京芸術見本市2008」が、3月5日から8日まで東京・恵比寿ザ・ガーデンルーム・ホールなどを会場に開催されました。第12回目となる今年は、見本市の会期にあわせて、3日から5日までヨーロッパを中心とした舞台芸術プレゼンターの組織であるIETM(Informal European Theater Meeting)の国際会議が同時開催されました。各国から100名以上のプレゼンターが来日し、日本のプレゼンターも交えて、アジアの制作者ネットワークやヨーロッパの状況ついての議論が行われるなど、いつも以上に国際色豊かな催しとなりました。
また、見本市会場で実施するビジュアル・プレゼンテーションやインターナショナル・ショーケースに加えて、都内で行われている本公演を見る事の出来る有料プログラムを新たに設けました。海外からも注目され、来年度は世界20カ国以上で公演を予定しているチェルフィッチュの新作や、公共ホール現代ダンス活性化事業のコーディネーターでもある佐東範一さんが代表をつとめるNPO法人JCDNの「踊りに行くぜ!!」スペシャル公演など、全21公演から選択できるとあって、参加者は会期中公演漬けの“ナイトリーチ”を満喫していました。
●地域創造セミナーは年間プログラムづくりがテーマ
財団法人地域創造では、見本市の関連企画として地域の公立文化施設に関わる重要課題を取り上げたセミナーを毎年企画しています。今回は、指定管理者制度で揺れる公立ホールの足下を見直すことを目的に、全国から特徴あるプログラムづくりを行っている施設のプロデューサー等が集まって経験談を披露しました。
パネラーは、地域創造のプロデューサーでもある津村卓氏(北九州芸術劇場チーフプロデューサー)と児玉真氏(第一生命ホール/いわき芸術文化交流館プロデューサー)に加え、蜷川幸雄が芸術監督を務める彩の国さいたま芸術劇場事業部長の渡辺弘氏、合併した士別市の直営ホールとなったあさひサンライズホールの漢幸雄氏の4名。設置主体(県、政令市、市町村、民間)も運営システム(指定管理者、直営、PFI、NPO法人、芸術監督制、プロデューサー制)も異なる5館がどのような考え方でどのようなプログラムを実施しているかについて、具体的な紹介が行われました。
55歳以上の高齢者によるゴールド・シアターで全国的に有名になったさいたま芸術劇場について、渡辺氏は「蜷川さんは商業劇場で有名なタレントを使った作品をつくる一方、公共劇場で何をやるべきかということを考えられるプロデュース能力の高い演出家。今は、夏のファミリーを対象にした音楽劇づくりの準備をしている」と芸術監督の資質について言及。
津村氏は、北九州劇術劇場に携わった経緯にふれ、「北九州市(市長)がどうして劇場をつくるかというコンセプトが明確で、“劇場をベースに人材育成をしたい”“演劇を中心にした文化のセンターをつくりたい”“再開発地域の賑わい施設として集客をしたい”というそのコンセプトに則ってプロデューサーとして具体的なプログラムをつくっていった」と、そもそものミッションの重要性について指摘。その成果を把握するために毎年調査を行い、市の補助金4億円に対して、現在、経済波及効果が約35億円に上るという評価についての具体的な紹介も行われました。
人口2000人の朝日町立のホールから、合併により人口2万6000人の士別市の直営ホールとなったあさひサンライズホールの漢氏は、市内全17小中学校を対象に音楽、演劇、ダンスなどのアウトリーチを実施するなど「こんな小さなホールが何でもかんでもできるわけではないから、ベタに地に足のついたことを続けている」と直営ホールとしての取り組みを披露。
最後に児玉氏は、民間の第一生命ホールのコンセプトについてふれ、「会社的な位置づけ、地域おける位置づけ、音楽界における位置づけについて考えて第一生命ホールのコンセプトをつくった」と言い、特に地域においては“東京ローカル”をコンセプトにアウトリーチなどのコミュニティ事業を充実させてきたという経験を披露されました。
パネラーの顔ぶれを見るだけでも、現在のホールがおかれている多様な状況がわかるセミナーになったのではないでしょうか。
●「魅力ある公立文化施設のための年間プログラムづくり~政策評価の視点から~」
[日程]3月7日
[会場]恵比寿ザ・ガーデンホール
[主催]財団法人地域創造
[コーディネーター]草加叔也(空間創造研究所 代表)
[パネリスト(五十音順)]児玉真(NPOトリトン・アーツ・ネットワークディレクター)、津村卓(北九州芸術劇場チーフプロデューサー)、漢幸雄(あさひサンライズホール主幹)、渡辺弘(彩の国さいたま芸術劇場事業部長)
●「東京芸術見本市2008」地域創造関連事業に関する問い合わせ
芸術環境部 山下友一
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