一般社団法人 地域創造

平成19年度公共ホール音楽活性化事業全体研修会

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写真:18・19年度おんかつ登録アーティストプレゼンテーションの模様(第一生命ホール)
左上・益田正洋(クラシックギター)と荒川洋(フルート)
右上・Quartet SPIRITUS(サクソフォーン四重奏)
下・加藤直明(トロンボーン)

真剣勝負の公開プレゼンテーション

 財団法人地域創造の新年度事業のスタートを告げる公共ホール音楽活性化事業(以下、おんかつ)の全体研修会が、参加館23館の担当者を対象に、4月17日から19日まで地域創造会議室と第一生命ホールを会場に開催されました。
  おんかつは、オーディションにより選ばれた登録アーティスト(2年入替制)を公立ホール等に派遣し、地方公共団体との共催でコンサートおよびアクティビティ(地域との交流を図るプログラム)を実施するものです。今年で10年目を迎え、これまでに全国176地域で実施するなど、財団事業の重要な柱となっています。
  初日の17日にはおんかつ事業の目的について説明が行われた後、コーディネーターが担当者やアーティストを交えながら過去の事例紹介を行いました。特に今回は、派遣された地域で地元の人たちがいろいろな形で参加しながらオリジナル曲をつくるというユニークな地域交流プログラムの実績をもつ中川賢一さん(平成14・15年度登録アーティスト/ピアニスト・指揮者)とピアノデュオDuetwo(16・17年度登録アーティスト/ピアノデュオ)がゲストで登場。
  中川さんが滋賀県安土町で行った作曲ワークショップ(ピアノの鍵盤に4色の色シールを張り、子どもたちが4色のカードでランダムに選んだ色の鍵盤を弾き、中川さんが和音を加えて音楽をつくる)と、子どもたちや会場のお客さんが描いた絵にピアノの即興演奏で音楽をつけた「安土組曲」などの取り組みが紹介されました。中川さんは、「作曲ワークショップでは自分が弾いた音が音楽になる瞬間を体験してほしかった。お互いにアイデアを出しあえば、どこの町でもそこでしかできない音楽がつくれると思う」と、初めてのおんかつに臨む担当者に檄を飛ばしていました。
  また、各地でオリジナル曲を作曲しているDuetwoが沖縄県南城市の合併記念で行った取り組みも紹介されました。4つの旧町に出向いたアウトリーチでは地域特性で苦労した話やオリジナル曲『ちゅらかぜ』(曲名はアウトリーチ先で募集)についてなど、アーティスト、担当者、コーディネーターそれぞれの立場で意見交換が行われました。コーディネーターを務めた能祖将夫さんからは、「ホールとして地域特性を活かしたアウトリーチをやりたいと思っても全く内容の異なることを4カ所でやるのは準備の都合上難しい。親しみのもてる共通項をベースにして、三線とのコラボレーションなどの地域交流プログラムとアーティストのやりたいことを組み合わせるといった工夫が必要」と実務面でのアドバイスも飛び出していました。
  18日には、クラシック演奏家の見本市とも言える登録アーティストの公開プレゼンテーションが第一生命ホールで開催されました。今年度のおんかつ参加館だけでなく、新しい演奏家との出会いを求めているホール担当者が集合する中、2年目となる平成18・19年度登録アーティスト12組がパフォーマンスを披露しました。演奏の実力、ステージングともに本番さながらの充実ぶりで、「このまま演奏会ができる」という声があちこちから上がっていました。
  お馴染みの宮崎駿アニメのテーマ曲からオリジナル曲、超絶技巧のビアソラまでをフルートで披露した荒川洋さん、縦半分に切ったクラシックギター持参で楽器説明を行い、弦を参加者、コードを演奏家が担当して即席演奏をする二人羽織奏法(!)に挑戦したクラシックギターの益田正洋さん、心を打つ演奏で会場を一つにしたヴァイオリンの小野明子さん、右手でピアノ、左手でピアニカを弾きながらチェロと合奏するという離れ業で新しい音の世界を見せてくれたDuo Yamaguchi、カツ丼に例えながらイラストを用いてサクソフォーン四重奏の楽器の役割についてユニークな解説をしたQuartet SPIRITUSなどなど、この1年の成長がうかがえるパフォーマンスばかりでした。
  「この10年間でアウトリーチという言葉もすっかり定着し、各地でさまざまな取り組みが行われるようになってきた。しかし、安易にアウトリーチを行うだけで、何のためにやるのか、なぜ公共ホールがおんかつをやるのかを見失っているところもある。原点に戻って考える時期ではないか」とアドバイザーの吉本光宏さん。アーティストの成長に見合うホール側の成長が問われる、そんなことを感じさせるプレゼンテーションでした。

 

●公共ホール音楽活性化事業平成19年度実施団体(23団体)

宮城県本吉町、宮城県大和町、福島県いわき市、群馬県玉村町、埼玉県入間市、千葉県四街道市、東京都江東区、山梨県笛吹市、長野県茅野市、岐阜県白川村、静岡県沼津市、愛知県津島市、三重県伊賀市、岡山県矢掛町、山口県阿武町、高知県四万十市、福岡県宗像市、佐賀県多久市、大分県日田市、宮崎県新富町、鹿児島県徳之島町、鹿児島県鹿屋市、沖縄県北谷町

 

●平成18・19年度公共ホール音楽活性化事業登録アーティスト

奈良希愛(ピアノ)
小野明子(ヴァイオリン)
早稲田桜子(ヴァイオリン)
荒川洋(フルート)
加藤直明(トロンボーン)
大熊理津子(マリンバ)
益田正洋(クラシックギター)
江崎浩司(リコーダー)
片岡リサ(箏・地唄三味線)
渡邊史(ソプラノ)
Duo Yamaguchi/山口博明・山口真由美(ピアノ&チェロ)
Quartet SPIRITUS(サクソフォーン四重奏)

 

●公共ホール音楽活性化事業に関する問い合わせ

芸術環境部
小澤・柿木田・尾形・水上・篠原
Tel. 03-5573-4093

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