一般社団法人 地域創造

平成18年度「公共ホール現代ダンス活性化事業」スタート

photo1.jpg
上:伊藤千枝さんの親子コミュニケーションワークショップ(杜のホールはしもと)
下:勝部ちこさんのワークショップでは即興ダンス(コンタクト・インプロビゼーション)に挑戦(倉敷市芸文館)

 公共ホール現代ダンス活性化事業(以下、ダン活)は、平成17年度からスタートした事業で、今年度は11月の相模原市を皮切りに、全国8地域で実施しています。この事業は、登録されたコンテンポラリーダンスアーティストを1週間程度、地域の公共ホールに派遣してワークショップと公演などを実施するものです。登録アーティストも2年目となり、各地で工夫を凝らした企画が展開されています。近くで開催される事業をぜひご覧ください。
 今号では、今年度の皮切りとなった、杜のホールはしもと/グリーンホール相模大野(神奈川県)と倉敷市芸文館(岡山県)での取り組みをご紹介します。

 

●からだであそぶ 親子ワークショップ~杜のホールはしもと/グリーンホール相模大野

 登録アーティストの伊藤千枝さんは、ファッション、デザイン、音楽業界からも広く注目を集めるポップな表現の“珍しいキノコ舞踊団”を主宰する振付家です。今回、相模原市はワークショップ後、期間を空けて公演を実施する分割実施スタイルで、学校アウトリーチ、大人向けワークショップ(3回連続)、親子ワークショップを杜のホールはしもとを拠点に実施。珍しいキノコ舞踊団の公演をグリーンホール相模大野で開催しました。
 「小さい時は当然のようにあるけれど、子どもが成長するとなくなってしまうスキンシップを通して親子のあたたかさを思い出してほしい」と、対象者を4年生以上に限定して企画した“親子でコミュニケーションワークショップ”には、10歳~12歳の子どもとお母さん5組が集まりました。
 今回のワークショップのテーマは「からだを使ってあそぶ」。伊藤さんはワークショップ冒頭から、子ども×子ども、大人×大人、親子ではない大人×子どものペアを次々に組み替えながらワークを進めました。親子の関係から解放されて、知らない子ども、知らない大人と相手のからだを背負うなどのスキンシップをするうちに、見知らぬ者同士の壁も取り払われて徐々にリラックス。親子で鏡になってリーダーになったほうが相手の体を動かす場面では、大きくからだを使って前後左右にのびのび動く我が子の姿に「うちの子ってこんな発想できたの?」とびっくりするお母さん。負けじと頑張るお母さんの奔放な動きにたじたじな子ども。近づいたり離れたり、お互いのからだで楽しく遊びながら普段とは違った相手の一面を発見し、改めてお互いを見つめ直すきっかけになったようです。
 その後も3人~4人のグループでゾウやムカデの形をつくって動くなど、テンポよく続く楽しい時間に子どもも大人も夢中でからだを動かしていました。「ほかの子やほかの家族も混ざると、親子間にも面白い関係が生まれます。次は子どもだけのクラスの後に、親が加わっていくワークショップに挑戦したいです」と、伊藤さんも手応えを感じているようでした。

 

●触れ合うことから始まるダンス~倉敷市芸文館

 岡山県の倉敷市芸文館では、日本でのコンタクト・インプロビゼーション(CI)シーンをリードする勝部ちこさんによるワークショップと公演が行われました。CIとは「触れ合うことから始まるダンス」で、他の人と何らかの関わり(コンタクト=接触・関係性など)をもちつつ、即興で生み出していくダンスです。倉敷市もワークショップ後、期間を空けて公演を実施する分割実施スタイルで実施しました。
 「これまで倉敷市芸文館では鑑賞型の事業を中心に行ってきましたが、地元にコンテンポラリーダンスのグループもあり、ほかのワークショップでダンスサークルが生まれるなど、ダンスに対する潜在的欲求が高いので、今回の事業でそれを盛り上げていければ」という倉敷市文化振興財団の日下紀文さん。そこで対象年齢を上げ、中学生、大学生のアウトリーチと一般向けのワークショップを実施。一般向けのワークショップでは、参加者の中から希望者を募り、アーティストと一緒に公演に出演する企画にしました。分割実施スタイルのため公演までに約10日間も間隔が空きましたが、事前に基礎編、公演前に応用編として計5日間のワークショップを実施し、17名のワークショップ参加者のうち12名が公演に出演しました。
 ワークショップは、ダンス経験者、未経験者が入り混じり、少し手探り状態からのスタートとなりました。ペアになり、手を合わせ、最初は相手の動きに合わせるところから徐々にお互いを意識して動くワークへと進んでいきました。ペアをどんどん替えながらからだを支え合う、支え合いながら歩くなどのワークを経て、CIの基本の動きの一つである「サーフィン(一人が波のように転がり、その上にもう一人が乗り、まるで波に乗っているかのように動く)」に挑戦。こうしたワークを重ねながら、公演に向けて着々と準備していきました。
 公演では、1部でワークショップ参加者のショウィングを実施。開場中の時間を利用し、公開ワークショップの形で観客にもワークの一部を紹介した後に本番に突入。ペアでお互いを感じながら即興で動きやシーンを生み出すパフォーマンスを20分行いました。今回初めてダンスのワークショップを体験した人も、自由に表現することの楽しさと、心と体の解放感を体感できたのではないでしょうか。

 

●平成19年度公共ホール現代ダンス活性化事業全体研修会&公開プレゼンテーション

平成19年度の内定団体を対象にした「全体研修会」を下記の日程で開催します。オーディションにより新たに選考された平成19・20年度登録アーティストが各30分程度ずつ行うプレゼンテーションは公開しますので、ぜひご覧ください。

[日程(開演予定)]1月29日(月) 16:00~、30日(火) 11:00~
[会場]東京芸術劇場大リハーサル室(東京都豊島区西池袋1-8-1)
[内容]各組30分程度のプレゼンテーションを行います。
[出演(19・20年度登録アーティスト)]
伊藤多恵、岩下徹、岩淵多喜子、黒沢美香、東野祥子、森下真樹、山田うん、砂連尾理+寺田みさこ、セレノグラフィカ(隅地茉歩+阿比留修一)

 

●平成17・18年度登録アーティスト

伊藤千枝、岩下徹、笠井叡、勝部ちこ、北村成美、室伏鴻、山田うん、山田珠実、上村なおか+笠井瑞丈、砂連尾理+寺田みさこ(五十音、ソロ・デュオの順)

 

●平成18年度開催スケジュール・出演アーティスト(*は最終日が公演日)

◎神奈川県相模原市
(杜のホールはしもと、グリーンホール相模大野/ワークショップ:11月30日~12月2日、公演*:12月12日~14日/伊藤千枝)
◎岡山県倉敷市
(倉敷市芸文館/ワークショップ:12月7日~9日、公演*:12月21日~23日/勝部ちこ)
◎北海道函館市
(函館市民会館、函館市芸術ホール/1月14日~18日/砂連尾理+寺田みさこ)
◎福島県会津若松市
(會津風雅堂/2月20日~25日/勝部ちこ)
◎宮崎県都城市
(都城市総合文化ホール/ワークショップ:2月24日~27日、公演*:3月8日~11日/伊藤千枝)
◎愛知県三好町
(三好町勤労文化会館/2月27日~3月4日/岩下徹)
◎愛知県春日井市
(文化フォーラム春日井/ワークショップ:2月22日、3月2日、3日、公演:3月1日~4日/上村なおか+笠井瑞丈)
◎神奈川県平塚市
(平塚市勤労会館、平塚市民センター/3月12日~16日/上村なおか+笠井瑞丈)

 

●公共ホール現代ダンス活性化事業に関する問い合わせ

芸術環境部 南谷・栗林・畑間・関根
Tel. 03-5573-4067

カテゴリー

ホーム出版物・調査報告等地域創造レター地域創造レターバックナンバー2006年度地域創造レター2月号-No.142平成18年度「公共ホール現代ダンス活性化事業」スタート