ますます充実。音楽、ダンスのプレゼンテーション
地域創造の新年度を告げる全体研修会が、今年も4月中に相次いで開催されました。平成18・19年度の新規登録アーティスト12組(16名)のお披露目が行われた「公共ホール音楽活性化事業」(4月19日~21日)、昨年度から2年間のモデル事業として実施されている「公共ホール現代ダンス活性化事業」(4月24日、25日)の全体研修会には、全国から合わせて約70人以上のホール担当者、自治体の事業担当者が東京に集合しました。指定管理者制度への移行期ということもあり、研修会に臨む参加者が時折見せる張り詰めた表情が印象的でした。
●実力派揃いの新規登録アーティスト
「公共ホール音楽活性化事業」(以下、音活)は、オーディションにより選ばれた登録アーティスト(2年入替制)を公立ホール等に派遣し、地方公共団体との共催でコンサートおよびアクティビティ(地域との交流を図るプログラム)を開催するものです。昨年度までは、音活OB館の研修会も同時開催していましたが、今年度からは8月に別途「おんかつ支援事業プレゼンテーション」(仮称)をスタートするため、新規登録アーティストと新規参加館(29団体)というフレッシュな顔合わせとなりました。
19日に行われた研修では、前登録アーティストのマリンバ奏者宮本妥子さんをゲストに迎え、アーティストの立場から音活の経験について話していただいたほか、地域を巻き込んで事業を実施した相模湖交流センターの事例や、若手職員3名がチームを組み、お揃いのTシャツや名刺を作成して事業に臨んだ青森市文化会館の事例(レター2005年11月号参照)など、昨年度の取り組みを映像を交えながら紹介。会議室には新旧音活担当者ら80人近い人が溢れ、大変な熱気でした。
また、津田ホールで行われたプレゼンテーションでは、今回からアーティストが存分に実力を発揮できるよう演奏時間を延長。1アーティスト(グループ)25分ずつ、12組が計6時間にわたってトークと演奏のデモンストレーションを行いました。今回で登録アーティストも5期生となり、実力派のメンバーが揃っているのに加え、新たにリコーダー、クラシック・ギター、箏・地唄三味線も加わり、初年度とは思えない素晴らしいパフォーマンスが披露されました。
箏・地唄三味線の片岡リサさんは、「邦楽という凝り固まったイメージでは敬遠されてしまうので、エッこんなのがあるの? という曲も紹介して、邦楽の魅力に少しでもふれてもらえれば」と言い、古典から多様な奏法を駆使した現代曲、ベルカント風な唄を付けて弾き語りした『アメージング・グレース』などを披露。
また、オペレッタを得意とするソプラノの渡邊史さん、ギタリストの父の横で子どもの頃からギターをおもちゃにして育ったという益田正洋さん、身体構造を理解するために鍼灸学校で学んでいるというヴァイオリニストの早稲田桜子さん、海外でソリストとして活躍している第一線のヴァイオリニスト小野明子さんなど、参加館が人選に迷うほどのタレントばかりでした。
四日市市市民文化課の秦昌洋さんは、「とてもバリエーションに富んでいて、アーティストの演奏以外の個性もわかり、とても面白かった。今日の演奏を聴き、下手な小細工をしないで音楽の力と子どもたちをがっぷり四つに組ませたいと感じた。演奏家を学校に連れて行けば何とかなると安易に考えていたが、全体研修会でいろいろな事例を聞いて、きちんと下地をつくっておかないとダメだというのがわかり、目が覚めた。帰ったら早速チームをつくって対応を考えたい」と興奮気味でした。
●公共ホール音楽活性化事業「全体研修会」スケジュール
1 日 目
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13:30~ | ゼミ(1) 「おんかつとは何か(アウトリーチについて・おんかつ事業の基本的な考え方)」児玉真 |
14:30~ | ゼミ(2) 「おんかつ事業の作り方」小澤櫻作(地域創造) | |
15:45~ | ゼミ(3) 「平成16年度の事業より~新潟県吉田町の事例~」 能祖将夫、宮本妥子(16・17年度登録アーティスト) |
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16:55~ | ゼミ(4) 「平成16年度の事業より~神奈川県相模湖町の事例~」 箕口一美、福島恒昭(神奈川県立相模湖交流センター) |
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18:10~ | ゼミ(5) 「平成17年度の事業より~青森県青森市の事例~」 楠瀬寿賀子、碇谷英里子、田澤拓朗、町田直子(財団法人青森市文化スポーツ振興公社) |
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19:20~ | ゼミ(6) 「事例報告を振り返って」吉本光宏 | |
2 日 目
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9:30~ | ゼミ(7) 「アクティビティーを読む」中村 透 |
10:40~ | プレゼンテーションの見方・考え方 講師:コーディネーター、アドバイザー |
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11:30~ | 平成18・19年度登録アーティストプレゼンテーション | |
18:30~ | 交流会 | |
3 日 目
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9:30~ | ゼミグループ別企画検討 ナビゲーター: コーディネーター(児玉、津村、能祖、楠瀬、丹羽、宮地、本田、片山、柴田、山本) アドバイザー(中村、吉本、深作) |
13:30~ | ゼミ「企画発表“3分間プレゼン”」 |
●公共ホール音楽活性化事業平成18年度実施団体
北海道中標津町、北海道豊頃町、岩手県北上市、秋田県横手市、秋田県秋田市、埼玉県川口市、千葉県東金市、東京都品川区、富山県砺波市、石川県金沢市、石川県珠洲市、福井県鯖江市、福井県若狭町、山梨県山梨市、長野県長野市、岐阜県可児市、静岡県浜松市、三重県四日市市、京都府京丹後市、兵庫県朝来市、岡山県津山市、広島県廿日市市、徳島県海陽町、香川県丸亀市、愛媛県松山市、佐賀県唐津市、長崎県雲仙市、熊本県熊本市、宮崎県清武町
●平成18・19年度公共ホール音楽活性化事業登録アーティスト
奈良希愛(ピアノ)、小野明子(ヴァイオリン)、早稲田桜子(ヴァイオリン)、荒川洋(フルート)、加藤直明(トロンボーン)、大熊理津子(マリンバ)、益田正洋(クラシック・ギター)、江崎浩司(リコーダー)、片岡リサ(箏・地唄三味線)、渡邊史(ソプラノ)、Duo Yamaguchi/山口博明・山口真由美(ピアノ&チェロ)、Quartet SPIRITUS(サクソフォン四重奏)
●公共ホール音楽活性化事業に関する問い合わせ
芸術環境部 小澤・有本・柿木田・水上・飯川 Tel. 03-5573-4076
●昨年度の総括を踏まえ、より実践的に
「公共ホール現代ダンス活性化事業」(以下、ダン活)では、3月13日に昨年度の参加館による報告会(レター5月号参照)が行われるなど、今年度の参加館の担当者は十分な予備知識をもって全体研修会に臨みました。ゼミの内容も、具体的な制作業務チェックポイントやアウトリーチの日程の組み方など、極めて実践的なもので、最終日には館ごとに招聘アーティストを想定した企画づくりのシミュレーションが行われました。
今回のプレゼンテーション会場は東京芸術劇場リハーサル室。登録アーティストは2年目ということもあり、30分の持ち時間を有効に活用して、ワークショップと作品のデモンストレーションを行いました。特にワークショップでは、昨年のプレゼンテーションと異なり、参加館の担当者に実際に体験してもらうものが多く、「コンテンポラリーダンスのワークショップがどういうものかよくわかった」と好評でした。
◎参加者コメント(小松淳子・かすがい市民文化財団)
「私は昨年3月まで大分県文化スポーツ振興財団でダンスの担当をしていた。春日井でも機会があればぜひやりたかった。多治見のダン活の話を聞き面白そうだったので応募した。報告会に参加して、アウトリーチ先との交渉や動員など思ったより大変だなと感じた。特に公演については、舞台にこだわりをもっているアーティストの要望に技術的に応えられるのか不安だった。しかし、今回の全体研修会で、事業の進め方について具体的な説明があり、またテクニカルスタッフの派遣が可能になるなど、前回のダン活の反省点を踏まえた見直しが行われている事がわかり、少し安心した。プレゼンテーションについては、雑誌などで紹介されているようなアーティストが一堂に会していて、それもあんなに間近で見ることができてとても感動した。それぞれのアーティストの動きが全く違っているのがよくわかった。ワークショップも自分で体験してダンスの楽しさがわかったし、これから事業を企画していく上でとても参考になった。財団にはギャラリーを担当している美術グループの職員がいて、学校の先生との交流があるので、そういうネットワークが活かせる企画にしたい。夜になると市役所のガラス窓に向って踊っている若者たちもいるので、彼らをうまく取り込めればと思っている」
ダン活登録アーティストプレゼンテーションの模様
●平成18年度公共ホール現代ダンス活性化事業開催地
北海道函館市、福島県会津若松市、神奈川県相模原市、神奈川県平塚市、愛知県三好町、愛知県春日井市、大阪府箕面市、奈良県奈良市、岡山県倉敷市、宮崎県都城市
●平成18年度公共ホール現代ダンス活性化事業登録アーティスト
伊藤千枝、岩下徹、笠井叡、勝部ちこ、北村成美、室伏鴻、山田うん、山田珠実、上村なおか+笠井瑞丈、砂連尾理+寺田みさこ
●公共ホール現代ダンス活性化事業に関する問い合わせ
芸術環境部 畑間・南谷・栗林・関根 Tel. 03-5573-4067