一般社団法人 地域創造

調査研究事業報告 「公立文化施設における政策評価等の あり方に関する調査研究─指定管理者制度を中心に─」報告書概要

●指定管理者制度の実施に関する留意点を整理

 財団法人地域創造では、「公立文化施設における政策評価等のあり方」をテーマに取り上げ、平成16・17年度の2カ年をかけて調査研究を実施しています。本年度は、「指定管理者制度」を中心に検討を行いました。
 レター2004年12月号で昨年夏に実施した「指定管理者制度の導入状況に関するアンケート調査」(*)の概要を紹介しましたが、その後事例調査を行い、3月下旬には最終報告書を発行します。
 事例として取り上げたのは5カ所10団体です。最終報告書をまとめるに当たっては、9名の委員で構成される専門家研究会を設置して計4回の研究会を開催し、アンケート調査と事例調査の結果を分析・検討しました。アンケート調査および事例調査にご協力いただきました皆さまには、この場を借りまして厚くお礼申し上げます。

 

* アンケート調査は公立文化施設446施設、設置主体である地方公共団体3353団体を対象に実施。調査結果の詳細はこちら。

 

●報告書の内容と構成
 報告書では、アンケート調査や事例調査の結果から、指定管理者制度の実施状況と課題を整理・分析した上で、研究会での議論に基づき、指定管理者制度の実施に関する留意事項をとりまとめました。
 その内容は、下記の目次のとおりで、指定管理者制度の基本的な考え方や、実施プロセスからみた留意事項など、多岐にわたっています。その成果を集約したものが下図の「指定管理者制度の実施フロー」です。
 この図のとおり、指定管理者の実施に際しては、条例の制定や公募要項の作成などの手続きに先立って、十分な時間をかけて文化政策や文化施設の目的や使命を検討することが重要です。また、事例調査などの結果を見ると、検討を始めてから、指定管理者を指定するまでに、概ね1年程度を要しており、指定管理者制度の実施には十分な期間を確保することが必要です。
 また、報告書の第3章では、指定管理者制度と密接な関係にある公立文化施設の評価について、評価の必要性や意義を整理し、評価の項目や指標などについて、ひとつの基準となる考え方を整理しました。その中で、調査研究の成果として、「設置目的・使命の達成状況」「運営・管理状況」「経営状況」「派生的効果」という4つの評価軸を示し、それらの位置づけや具体的な評価項目などを整理しました。
 さらに、研究会の各委員には、それぞれのご専門のお立場から提言を執筆いただきました。
 研究会では、さまざまな意見交換が行われましたが、その中で指定管理者制度については、手続きや方法より、地方公共団体の文化政策の理念や使命、基本方針を明らかにし、当該文化施設の使命や設置目的を抜本的に見直すことが最も重要であるという点で各委員の意見が一致しました。

  調査研究報告書については、3月下旬に全国の地方公共団体、劇場・ホールおよび美術館に送付する予定ですが、 このホームページ上でもご覧いただくことができます。
 来年度は、今回の調査研究の成果も参照しながら、性格の異なる複数の公立文化施設を対象にした具体的な評価に取り組み、そうしたケーススタディを積み上げて、より実効性の高い評価の方法を検討していく予定です。調査結果等につきましては随時、レターで報告してまいります。調査にご協力いただくこともあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 

●報告書の構成

第 I 部 調査研究の結果
【第1章:指定管理者制度の実施状況と課題】
1.指定管理者制度の概要
2.指定管理者制度の実施状況と基本方針
3.指定管理者の募集・選定方法、選定の際に重視する項目
4.指定管理者の業務範囲と指定期間、運営財団
5.指定管理者制度の実施にあたっての施設側の考え方
6.指定管理者制度の問題点や課題
【第2章:指定管理者制度の実施に関する留意事項】
1.指定管理者制度実施の基本的な考え方
2.指定管理者制度の実施プロセスから見た留意事項
3.指定管理者による管理運営
4.スケジュールの明確化
【第3章:公立文化施設の政策評価に関する基本的な考え方】
1.評価の必要性と意義
2.公立文化施設における評価の実施状況と課題
3.公立文化施設における評価のあり方
4.今後の課題と展望

 

第 II 部 委員からの提言
逢坂恵理子「美術館の在り方について」
草加叔也「劇場・ホールへの指定管理者制度導入」
熊倉純子「市場原理ではなく、新たな公共圏を」
櫻井俊幸「文化行政のあり方を考える」
田邊國昭「指定管理者制度におけるアカウンタビリティー」
中川幾郎「自治体文化施設における使命(ミッション)の明確化のために」
橋本博幸「指定管理者の時代とは」
平田オリザ「指定管理者制度に関する所感」
吉本光宏「求められる見識とチャレンジ精神─指定管理者制度が問いかけるもの─」

 

資料編(別冊)
第 I 部 アンケート調査結果
第 II 部 事例調査 ヒアリング記録

 

図 指定管理者制度の実施フロー

002zu.gif

クリックすると拡大図が見られます。

 

「公立文化施設における政策評価等のあり方に関する調査研究」専門家研究会メンバー
研究会委員
逢坂恵理子(水戸芸術館現代美術センター芸術監督)
草加叔也(有限会社空間創造研究所代表取締役)
熊倉純子(東京芸術大学音楽学部助教授)
櫻井俊幸(小出郷文化会館館長)
田邊國昭(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
中川幾郎(帝塚山大学法政策学部教授)
橋本博幸(熊本県立劇場事務局長)
平田オリザ(劇作家、演出家、青年団代表、桜美林大学助教授、富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ芸術監督)
吉本光宏(株式会社ニッセイ基礎研究所 芸術文化プロジェクト室 室長)
オブザーバー
芳賀克男(総務省自治行政局行政課監査制度専門官)
※五十音順

 

「公立文化施設における政策評価等のあり方に関する調査研究─指定管理者制度を中心に─」に関する問い合わせ
芸術環境部 水谷敏司 Tel. 03-5573-4078

カテゴリー

ホーム出版物・調査報告等地域創造レター地域創造レターバックナンバー2004年度地域創造レター4月号-No.120調査研究事業報告 「公立文化施設における政策評価等の あり方に関する調査研究─指定管理者制度を中心に─」報告書概要