●関西を拠点に活躍するアーティストが勢揃い
今回の会場は、京都における芸術振興の拠点施設として平成12年にオープンし、第1回JAFRAアワード(総務大臣賞)を受賞した京都芸術センターです。
京都市の中心街、呉服商が建ち並ぶ室町に位置する同館の前身は、平成5年に閉校した旧明倫小学校。特徴ある外観、大広間や講堂、和室など、昭和6年の改築時のたたずまいを最大限に活かすかたちで改修された、廃校活用の先進事例です。同館では演劇、ダンス、美術、伝統芸能の幅広いジャンルで自主事業を展開するほか、ワークショップや公開制作など地域との交流を条件に、若手アーティストや劇団に最長3カ月間無償でスペースを提供し成果を上げています。
今回のコーディネーターはびわ湖ホール音楽担当プロデューサーの楠瀬寿賀子氏(ホール入門)、地域創造プロデューサー津村卓氏(演劇)、NPO法人JCDN(ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク)代表の佐東範一氏(ダンス)、平塚市美術館学芸員の端山聡子氏と宮城県美術館教育普及部の大嶋貴明氏(アート)がそれぞれ務め、京都をはじめ関西を拠点に活躍する気鋭の劇作家やアーティストが講師として勢揃いしました。
●音楽、演劇のワークショップが充実
ホール入門コースで興味深かったのは、現代リコーダー奏者の第一人者・鈴木俊哉さんによるワークショップと、翌日、受講生が鈴木さんとともにステージに上がり、音楽公演のプロセスを体験したミニコンサートです。声を出しながら息を吹き込む奏法、フルートのように横に構える奏法など、学校で学んだものとはまるで違う、アバンギャルドな鈴木さんの演奏に度肝を抜かれた受講者たち。ワークショップの成果をミニコンサートで披露することもあり、みな真剣な表情で練習していました。
演劇コースは、関西を代表する劇作家・演出家が一堂に会して、「作品を創造すること」に集中した4日間となりました。「戯曲を書いてみる」では、劇団八時半主宰の鈴江俊郎さんが講師として登場。「私は何に泣くか」を受講生が考え、ストーリーを紡ぎ出していきます。
「面白い脚本には2つの要素があります。ひとつは、『克服すべき課題』。もうひとつは『人物の変化』を描くこと。これは話に深みが出ます。私が気をつけているのは、うちのオカンが見てもわかり、面白いと思うものを書くこと。そしてオカンのお気に入りが、2つの要素が完全に入っている『ローマの休日』です。みなさんもぜひそんな戯曲を書いてください」と鈴江さん。
また、劇団MONO主宰の土田英生さんの講義もユーモアたっぷりでした。「人前に立ったとき、人はどういう状態になるのか」という“実験”をしながら、演出の本質を浮かび上がらせる内容に、受講者は深く納得。一方、劇団マレビトの会主宰の松田正隆さんは京都造形芸術大学内の劇場「Studio21」に場所を移し、1週間後に上演される予定の舞台稽古を公開しました。
●京都に息づく伝統芸術を体感
ラボ恒例の共通ワークショップは、能、京舞、茶道という、開催地ならではのラインナップが受講者に大好評でした。
講師にシテ観世流能楽師・田茂井廣道さんらを招いて行われた能のワークショップは、カマエ、ハコビ(すり足)といった基本的な所作から、実際に能面をつけて歩くこと、囃子に使われる楽器を鳴らすことなどを体験。
京舞のワークショップは、講師を京舞井上流の井上葉子さんが務め、大広間で実施。井上先生によるデモンストレーション『黒髪』での、手や足の指にまで神経を行き届かせた艶やかな動きに、みな目を奪われていました。
茶道のワークショップは、裏千家の町田宗隆さんを講師に、茶室「明倫」で開かれました。茶の湯の根底には仏教があり、すべてにおいて清めの所作を大切にしていることなどのお話に続き、薄茶のお点前が披露され、茶の湯の精神を垣間見るものとなりました。
●講座が突如ワークショップに
ダンスコースは佐東範一氏の人脈を生かし、関西で先進的な取り組みを続けている公共ホールやNPO法人のプロデューサー、アーティストが講師となり、地域に根ざしたダンス企画について、豊富な事例を紹介しました。3日目の1コマ目で参加者から「実際に身体を動かしたい」という熱い要望が。アメリカのダンスカンパニー、リズ・ラーマンダンスエクスチェンジの元メンバー、中村栄和さんの講義は急遽ワークショップに変更となりました。
その熱気も冷めやらぬまま、午後は京都のダンス・デュオ、砂連尾理+寺田みさこによるワークショップ。2人一組になって動いたり、ホワイトボードに自由に線を描いたあと、身体の部位を使って線の動きをなぞったり。十分にほぐれ、動けるようになったところで、4~5人のグループに分かれての創作。クレーの3枚の絵画から1枚を選び、そこから想起されるイメージをかたちにします。
最後の発表会では、5組のうち、4組までが同じ絵を選んだものの、それぞれが全く違う表現、アプローチの仕方で、改めてコンテンポラリーダンスの多彩さを知る思いがしました。
アートミュージアムラボでは、ほぼすべてのゼミが「講義+参加者によるディスカッション」というかたちで進められました。“指定管理者制度で美術館はどうなるか”“行政評価で美術館はどうなるか”“学校との連携”などをテーマに、それぞれの所属館の立場やケースについて真剣に意見交換する様子が見られました。
●ステージラボ・アートミュージアムラボ京都セッション スケジュール表
(ここに表挿入)
●ステージラボ/アートミュージアムラボに関する問い合わせ
芸術環境部 富士原・福井・大崎
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