コンテンポラリーダンスの長期ワークショップ「ダンスジェネレイト福岡2004」が、1月15日から2月20日まで福岡市内数カ所の練習スペースで開催されている。これは、創作の環境をつくり、地元アーティストを育成することを目的に、福岡市文化芸術振興財団がNPO法人JCDN(ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク)の協力を得て平成13年度から続けている事業。4回目の今回は、山崎広太(1月15日~20日)、室伏鴻(1月22日~27日)、黒沢美香(1月29日~2月3日)が講師を担当。6日間ずつのワークショップの後、参加者が2週間にわたって、ダンス批評家・桜井圭介のアドバイスを受けながら作品をつくり、最終日にその成果を披露する。また、講師のデモンストレーション公演や初心者向けの短期ワークショップ、桜井によるレクチャーを並行して行い、多角的にコンテンポラリーダンスを知ってもらう内容となっている。1月16日、福岡市民会館練習室での山崎広太のワークショップを訪ね、これまでの取り組みと成果について取材した。
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「次にみんなをあっと驚かせる動きをつくってみよう。ギャラリーのインスタレーションのような気持ちになってみるのもいい。10分間考えてください」
山崎広太の呼びかけに、高校生から57歳まで、16人の参加者(この日は2名欠席)は、思い思いに身体を動かしつつ、真剣な表情で考え込む。10分後。ひとりひとりがユニークなポーズやシチュエーションを発表する。会場にあったマイクスタンドや椅子を使う人、急いで面をつくりポーズを取る人、履いていたシューズを飛ばす人、寸劇風にセリフを入れる人……。それを他の参加者が取り囲んで“鑑賞”する。「意味のない感じがいいね」「恥ずかしい」。感想を言い合ううち、自然な流れでディスカッションへ。「見ることと見られること」についてや「非日常的な動きとは」「突然出現した異空間の面白さ」など、活発なやりとりが続く。
山崎は「ダンスをつくる手がかりやエッセンスを、僕のストックから与えられれば。ディスカッションをしたのは、昨年韓国で教えた経験を生かしてのこと。意見の交換から、アイデアをどんどん取り入れて、ダイナミックなワークショップになればいい。福岡の参加者はポジティブで、積極的にぶつかってくる。何が起こるかわからない面白さがあります」と話す。
できるだけさまざまなタイプのダンスを経験してもらおうという趣旨で、昨年から複数の講師による“リレー式”に変更。「ひとりのアーティストだと、参加者が影響を受けすぎて、独自の表現にたどりつく前に終わってしまいます。また、作品づくりの段階で桜井さんにアドバイスをお願いしたのは、つくり手が自己満足に終わらないよう、プロの批評家の視線が必要だと思ったから。最初の2年は『動く→振付をしてもらう→舞台に上げる』という流れで、広い場所で発表し、それはそれで達成感はあったのですが、『創造』という点では弱かったと思います」というのは福岡市文化芸術振興財団事業課・吉村美紀さん。
今回は、発表会場を「ぽんプラザホール」に変更。「大きなホールをお膳立てするのではなく、最大108席というこじまんりした空間で観客とも近く、創作意欲を刺激するようなところを選びました。見る側も『ダンスが生まれる場所』に、今、まさに遭遇するという感覚を味わえると思います」。
ダンスジェネレイトをきっかけに、新たな動きも生まれている。2回目から参加している中山幸子さん(モダンバレエ教室主宰)は、昨年10月に開催されたJCDN主催の「踊りに行くぜ!! Vol.5」福岡公演でデビュー。「東京やニューヨークで学んでいたのですが、地元に戻って来ました。福岡でこれだけのワークショップが受けられるのは魅力。『踊りに行くぜ!!』も貴重な体験になり、今後の活動に繋がりました」。中山さんは昨年のワークショップ仲間と共に、1月に「ショート・ダンス・パフォーマンス」と題して自主公演を打った。7組9人が出演したという。
自ら創造にチャレンジする人々が、少しずつ増えてきている。吉村さんは「近隣都市で活動しているユニットとの交流を通して、ダンスの活動が盛んになると嬉しいですね」とさらなる期待を寄せている。
(ライター・土屋典子)
●ダンスジェネレイト2004福岡~コンテンポラリーダンス・ワークショップ
[主催](財)福岡市文化芸術振興財団、福岡市
[企画協力]NPO法人ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク(JCDN)
[日程]1月15日~2月20日
[会場]福岡市民会館、パピオビールーム、ふくふくプラザ、ぽんプラザ
[講師]山崎広太、室伏鴻、黒沢美香、桜井圭介
地域創造レター 今月のレポート
2005.2月号--No.118