地域の芸術環境づくりに特に功績のあった公立文化施設を顕彰
1月18日、東京・虎ノ門パストラルにおいて、麻生太郎総務大臣臨席のもと「第1回JAFRAアワード(総務大臣賞)」の表彰式が行われました。
はじめに、財団法人地域創造理事長の遠藤安彦が、「ご理解・ご協力いただいた大臣をはじめ総務省の方々にお礼申し上げるとともに、受賞施設の皆さま方はこれからも住民に大いなる感動を与え続けていただきたい」と挨拶。
麻生総務大臣からは、「日本文化は古代から連綿と続いており完成度が高い。今後は地域独自のソフト展開が重要。今回どの受賞施設も地域色ある取り組みをされており、皆さまの受賞が全国の公立文化施設に対するいい刺激になればと思っています」との激励をいただきました。
表彰式では、第1回JAFRAアワード受賞施設の代表者が一人ずつ壇上に上がり、総務大臣から受賞理由の読み上げと、表彰状および盾の授与を受けました。地域も、規模も、取り組み内容も多彩な9施設が表彰される様子は、とりも直さず、芸術文化による地域づくりの推進により創造的で心豊かなふるさとづくりが全国で実現していることを彷彿とさせられるもので、感慨深いものがありました。
交流会は、木村尚三郎審査委員長による、「第1回ということもあり、委員の激論によって厳選に厳選を重ねました。21世紀は文化の時代であり、美しさが一切の基準となる時代。これからもふるさとに生きる自信の糧となるような活躍を期待しています」との挨拶でスタート。続いて受賞施設が自分たちの取り組みを紹介するプレゼンテーションが行われるなど、地域創造らしい交流会となりました。
記念すべき第1回の受賞館は、いずれも目標を定めてそれを達成するための多彩な事業を展開しているのが共通の特徴となっています。「われわれを支えてもらった町の人たちにいただいた賞だと思っています。10年先、20年先の目標を定めて、これからも精進していきたい」「公共劇場でなければできない変幻性のあるプログラム、地域に親しまれるプログラム、教育に役立つプログラムをこれからもバランスよくやっていきた」などなど、それぞれ明日に向かって思いを馳せている姿が印象的でした。
改めて、受賞館の皆さまには、心よりお祝いを申し上げるとともに、今後のさらなる活躍を期待いたしております。
●JAFRAアワード審査委員会
【委員長】
木村尚三郎(東京大学名誉教授・静岡文化芸術大学学長)
【委員長代理】
蔵隆司(前財団法人神奈川芸術文化財団専務理事兼事務局長)
【委員(五十音順)】
熊倉純子(東京芸術大学音楽学部音楽環境創造科助教授)
児玉真(NPO法人「トリトン・アーツ・ネットワーク」ディレクター)
小林真理(東京大学大学院人文社会系研究科助教授)
下山肇(尾道大学芸術文化学部美術学科教授)
坪池栄子(株式会社文化科学研究所 研究プロデューサー)
平田尚文(前財団法人岡谷市振興公社 岡谷市文化会館館長)
柳沢秀行(大原美術館プログラムコーディネーター・学芸員)
吉本光宏(株式会社ニッセイ基礎研究所 芸術文化プロジェクト室室長)
富良野演劇工場 │北海道
◎「演劇のまち富良野」を目指すNPO法人の運営
NPO法人に公立文化施設の運営を委託した公設民営の先駆け。演劇の創造拠点づくりを標榜する市民が主体となり日本初のNPO法人ふらの演劇工房を設立。富良野を愛する演劇人との連携によりコミュニティに新たな求心力を生みだし、「演劇のまち富良野」のイメージの発信に多大な貢献を行った。
盛岡劇場 │岩手県
◎「もりげき」の愛称で親しまれる地元密着の運営
「演劇によるまちづくり」という旗印を掲げて活動。民間劇場の草分けとして市民に親しまれた旧盛岡劇場(大正2年開館)の育んだ土壌を活かし、その跡地に建設した新劇場で演劇愛好家を育成。多彩な事業を展開し、地域の人材育成に多大な貢献を行った。
世田谷文化生活情報センター(世田谷パブリックシアター) │東京都
世田谷パブリックシアター公演
「エレファント・バニッシュ」(03'/04')
撮影:青木司
◎高度な専門施設としての学芸的な取り組み
東京に立地した都市型公立文化施設の代表。高度な専門施設として学芸的な取り組みを行い、ドラマリーディング、ワークショップなどの手法を定着させた。また、コンテンポラリーダンスの新しい情報を発信し、演劇において海外のアーティストとコラボレーションを行うなど、国際的にも注目されている。
小出郷文化会館 │新潟県
◎広域行政の文化拠点としてクラシック音楽を普及
広域行政として公立文化施設の設置と運営に取り組む。音楽大学等高等教育機関と連携を図り、ホールを拠点に活動する子どもから大人までの幅広い文化団体の育成を行い、地域の人材育成に尽力。特に、広域をカバーするアウトリーチ事業によりクラシック音楽を普及し、多大な成果を上げている。
岡谷市文化会館(カノラホール) │長野県
◎地域の資源を活かした芸術文化の創造
地元諏訪に伝わる「御柱祭」を題材にした創作オペラ『御柱』をプロと市民の交流によりプロデュースし、著しい舞台成果を収める。また、市民オーケストラや合唱団の育成など、オペラの担い手の育成にも尽力。地域の資源を活かした芸術文化の創造を市民とともに推進し、誇りある地域づくりを実践している。
京都芸術センター │京都府
◎旧明倫小学校をアートセンターとして再生
中心市街地の廃校をアートセンターとして活用。行政、地元住民、アーティストの参加により、アーティストの創造環境の支援と地元住民との交流の両立を図るルールづくりを実現。伝統芸能、演劇、ダンス、美術などに関わる人々のネットワーク拠点となり、近代建築の資源を残した、遊休施設の新しい活用モデルとして全国に刺激を与えた。
兵庫県立尼崎青少年創造劇場(ピッコロシアター) │兵庫県
◎県立劇団の長年の活動
演劇による青少年の健全育成を掲げ、日本初の付属「県立ピッコロ劇団」を設立して長年にわたって活動。また、「ピッコロ演劇学校」「ピッコロ舞台技術学校」により人材育成に努め、阪神・淡路大震災では心の支援活動を行うなど、公共劇団として地域に多大な貢献を行った。
伊丹市立演劇ホール(アイホール) │兵庫県
◎関西の若いアーティストの育成
都市近郊の演劇専門ホールとして、アーティストの育成を標榜し、実践した先駆け。関西の小劇場演劇、コンテンポラリーダンスの拠点となるとともに、小・中・高校生を対象にした演劇活動にも尽力するなど、地元をはじめ関西地域全体の芸術文化振興に多大な貢献を行った。
佐敷町文化センター・シュガーホール │沖縄県
◎クラシック音楽を軸にした総合的な取り組み
町立のクラシック専用ホールとして、クラシック音楽を活かした地域づくりのあり方を総合的に提案。行政、教育委員会、専門家が一体となり、学校教育、生涯学習、芸術文化、コミュニティ活動を音楽を軸にして連携させた不断の努力は、町立文化施設の範となるもの。