一般社団法人 地域創造

平成29年度「邦楽地域活性化事業」報告

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●理事長あいさつ

 新年のご挨拶をさせていただく前に、新潟中越地震により被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。また、地元の消防署、消防団をはじめ、復旧に尽力されている方々には心より感謝申し上げます。阪神淡路大震災から今年で10年になりますが、その教訓が活かされている様子が随所に見受けられ、関係各位の日頃の努力の賜物と、大変心強く感じた次第です。

  地域創造は平成16年9月30日に財団設立10周年を迎えました。財団事業の成果を披露させていただくという意味で、紀尾井ホールにおいて、公共ホール音楽活性化事業の新・旧登録アーティストによるガラ・コンサートを開催し、大変ご好評をいただきました。できればこうした試みを続けていければと考えているところです。
 この財団を設立した当初、10年間で基金の積み立てを行うという資金計画を策定し、10年をひとつの区切りと考えて活動してまいりました。今、振り返ってみますと、公共ホールだけとっても全国に約3,000件もあるなかで、年間12、3億円の事業費(今年度は約20億円)でどれほど力添えできたか心もとない感もあります。しかし、ソフト支援、人材育成、情報提供の3本柱を掲げ、精一杯やらせていただいたことは、それなりの評価をしていただけるのではと自負しております。
 特に、公立文化施設には、地域住民と共に協働する、地域住民と共に事業を展開する役割があるという考えを普及できたことが一番の成果であったと思っています。これからもこうした考えによる先導的な取り組みを積極的に支援し、地域の芸術文化環境づくりを向上させる役割を果たしていければと願っております。

  そうした活動の励みにしていただければと、10周年を機に、地域の芸術文化環境づくりに特に功績のあった公立文化施設を顕彰する「JAFRAアワード(総務大臣賞)」を創設いたしました。第1回JAFRAアワードにつきましては、木村尚三郎委員長のもとに審査委員会を設け、厳正な審査のもと、9施設が選ばれました。
 この賞は文化施設を対象にしたものですが、私といたしましては、文化施設に授与するというより、その施設を支えて共に地域づくりに尽力してくださった地域住民の方に差し上げたい、という気持ちで一杯です。公立の文化施設の存在意義は、単に素晴らしい公演や展覧会を企画し、多くの観客を集めることにあるのではなく、地域住民と共に歩み、地域の芸術文化環境を向上させることにあります。今回の受賞施設を支え、共に地域の芸術文化環境の向上に尽力していただいた地域住民の方に心から感謝するとともに、その励ましとなるような賞に育ててまいりたいと思っております。

  一昨年6月に、地方自治法が一部改正され、「公の施設の管理」をNPO法人や民間企業などに委任することができる「指定管理者制度」が導入されました。平成18年の夏には直営で管理する場合を除き、新制度に移行しなければならないことから、現在、公立文化施設においても検討が行われています。
 財団でも昨年から調査研究を始めましたが、公立文化施設において最も留意しなければならないのは、施設管理的な指定管理者ではなく、文化行政の目的に応じたソフト事業を住民と共に展開できる指定管理者を選定するということです。そのためには、設置者側が設置目的について明解、かつ具体的なビジョンをもっている必要があり、自治体にとって大きな宿題が出されたといえるでしょう。これを契機に、設置者、現在の運営者が共に芸術文化振興と地域住民との関係を見直し、芸術文化による地域づくりについて具体的な議論を深めるいい機会になればと思っています。
 指定管理者制度の導入にともない、公立文化施設の評価についても話題になっていますが、地域創造でも研究会を立ち上げて検討を進めています。地域住民の目から見た評価について具体的に示すことができればと思っているところです。

  全国では、今、市町村合併が進められています。地域創造では、こうした合併地域に対して、5年間の経過期間を設けることにいたしました。この間は、助成申請等を旧市町村単位で取り扱い、新市から複数の施設について申請していただいた場合、旧市町村単位で支援を審査します(新市内の複数施設による連携事業の申請も可能)。この経過期間の間に、新市内の公立文化施設の役割分担等を検討していただければと思います。
 地域創造では、今後も地域のご要望にお応えできるよう、一層の努力をしてまいりたいと思っております。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

 

●第1回JAFRAアワード受賞施設
 「富良野演劇工場」(北海道)、「盛岡劇場」(岩手県)、「小出郷文化会館」(新潟県)、「世田谷文化生活情報センター(世田谷パブリックシアター)」(東京都)、「岡谷市文化会館(カノラホール)」(長野県)、「京都芸術センター」(京都府)、「兵庫県立尼崎青少年創造劇場(ピッコロシアター)」(兵庫県)、「伊丹市立演劇ホール(アイホール)」(兵庫県)、「佐敷町文化センター・シュガーホール」(沖縄県)
※授賞式を1月18日に予定しております。受賞施設の活動内容と授賞式の模様は次号のレターでご紹介します。

 

●遠藤安彦(えんどう・やすひこ)
 1940年生まれ。自治事務次官を経て、1998年2月から財団法人地域創造理事長。「2004年は大型台風が連続して上陸したり、直下型地震に見舞われたり、本当に大変な年でした。仮設住宅で新年を迎えられている方、生まれ育った土地を離れなければならない方などのことを思うと、心が痛みます。今、地域創造としても何かできないか、地元の公立文化施設と相談しているところです」

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