アンケート調査の最終集計結果発表
地域創造では平成16・17年度の調査研究事業として「指定管理者制度」と「政策評価」をテーマに取り上げ、検討を進めています。調査の一環として実施したアンケート結果の中間集計結果を「芸術見本市2004東京」のシンポジウムで発表したところ、大変な反響をいただき、地域からの問い合わせが続いております。最終報告は17年度末になりますが、皆様からの問い合わせに答える上でもこれまでの経過について簡単に報告いたします。
●目的・経緯
地域創造では、地域の芸術環境について全国的な視点から実態調査や分析・研究を行い、芸術環境づくりを進めるうえで参考となる指針や基礎資料を提供するため、毎年度、テーマを決めて調査研究事業を行ってきました。
今回は、昨年の地方自治法の改正により創設された「指定管理者制度」と「政策評価」という、公立文化施設にとって今最も注目されているテーマを取り上げ、今年度と来年度の2カ年をかけて調査を行うこととしました。6月には「公立文化施設における政策評価のあり方等に関する調査研究会」を立ち上げ、専門的な視点から議論を重ねています。
地方自治法第244条では、これまで公立文化施設を含む「公の施設」の管理の委託先が、「地方公共団体が出資している法人で政令で定めるもの又は公共団体若しくは公共的団体」とされていました(管理委託制度)。改正後に創設された「指定管理者制度」では、株式会社等の民間事業者に公立文化施設の管理を委任することができるようになり、平成18年の夏までに制度を移行することが定められています。
また、政策評価は、近年、地方の財政状況が厳しくなるにつれ、実施する地方公共団体が増えています。公立文化施設の運営にあたっても評価システムが導入され、施設の稼働率や集客数など経済性、効率性の観点から数値評価を行う地方公共団体等も見受けられますが、今後は、文化施設の設置目的や理念などを踏まえた総合的な政策評価の実施が課題と言えます。
いずれのテーマについても、公立文化施設を巡る重要な課題であり、公立ホールや美術館関係者には、関心の高いものになっています。
●アンケート調査結果の概要
今年の夏、この調査研究の一環として、全国の公立文化施設、およびそれらを設置した地方公共団体を対象に、公立文化施設における評価と指定管理者制度の導入状況や内容、課題等を把握することを目的に、アンケート調査を実施しました。
2000年に行った「地域の公立文化施設に関する調査」の文化施設データベースに基づいて、施設の立地や規模などの条件を勘案して対象施設を抽出し、さらに、それらの施設を設置した地方公共団体を抽出するなど、公立文化施設466件(劇場・ホール:300件、美術館:146件)と地方公共団体353件を対象に調査いたしました。おかげさまで、公立文化施設が265件(59.4%)、地方公共団体が193件(54.7%)と高い回答率を得ることができました。
指定管理者制度の実施に関する設問では、制度の実施状況、選定や募集方法、問題点や課題などを、文化施設の評価に関する設問では、評価の実施状況、その背景や目的、評価の際に重視する項目、問題点や課題などをそれぞれ取り上げています。
●今後の予定
今回の調査研究会のメンバーは、委員8名とオブザーバー1名による有識者で構成されています。今後、調査研究の一環として、指定管理者制度導入に向けた先進的な取り組みを行っている団体などに対する事例調査(ヒアリング)を実施するほか、指定管理者制度実施に関する留意事項の検討などを行い、来年2月下旬を目途に中間報告書を取りまとめます。なお、中間報告書については、地域創造のホームページに掲載する予定です。(参考:アンケート調査結果等)
●「公立文化施設における政策評価のあり方等に関する調査研究会」メンバー
逢坂恵理子(水戸芸術館現代美術センター芸術監督)
草加叔也(有限会社空間創造研究所代表取締役)
熊倉純子(東京芸術大学音楽学部助教授)
櫻井俊幸(小出郷文化会館館長)
田邊國昭(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
中川幾郎(帝塚山大学法政策学部教授)
橋本博幸(熊本県立劇場事務局長)
平田オリザ(劇作家、演出家、青年団代表、桜美林大学助教授、富士見市民文化会館キラリ☆ふじみプロデューサー)
吉本光宏(株式会社ニッセイ基礎研究所 芸術文化プロジェクト室長)
※五十音順
●調査研究に関する問い合わせ
地域創造 田巻・鈴木 Tel. 03-5573-4078