一般社団法人 地域創造

平成16年度「公共ホール音楽活性化事業」スタート

●全国28地域に拡大し、平成16年度事業シーズン突入

 

 公共ホール音楽活性化事業(通称:音活)は平成10年度の事業創設以来、市町村、公立ホールから高い関心が寄せられ、本年度は北海道の利尻町を皮切りに、昨年度の約2倍にあたる全国28地域で実施することとなりました。利尻町では、音活登録アーティストとしては珍しいニューオリンズスタイルのブラスバンド、Black Bottom Brass Bandが吹奏楽クリニックやパレードをするなどのアクティビティを行い、好評をいただきました。
 秋から本格的なシーズンに突入し、月に2、3地域のハイペースで年度末まで全国各地で事業を展開します。今月号では、10月に行われた3地域の模様をご紹介します。

 

公共ホール音楽活性化事業平成16・17年度登録アーティスト

久保田葉子(ピアノ)、佐々木京子(ピアノ)、ピアノデュオDuetwo、神谷未穂(ヴァイオリン)、野口千代光(ヴァイオリン)、永井由比(フルート)、Buzz Five(金管五重奏)、BLACK BOTTOM BRASS BAND(ブラスバンド)、小林厚子(ソプラノ)、菅家奈津子(メゾソプラノ)、宮本妥子(打楽器)、デイヴィッド・ファーマー(クラシックアコーディオン)

 

平成16年度公共ホール音楽活性化事業開催地

利尻町交流促進施設どんと(北海道)、朝日町サンライズホール(北海道)、七ヶ浜国際村(宮城県)、名取市文化会館(宮城県)、田島町御蔵入交流館(福島県)、深谷市民文化会館(埼玉県)、流山市文化会館(千葉県)、相模湖交流センター(神奈川県)、吉田町公民館(新潟県)、新井総合文化ホール(新潟県)、八尾町コミュニティセンター(富山県)、福井市文化会館(福井県)、多治見市文化会館(岐阜県)、菊川町文化会館アエル(静岡県)、豊橋市民文化会館(愛知県)、木ノ本町スティックホール(滋賀県)、朽木村やまびこ館(滋賀県)、佐田町中央公民館(島根県)、伊方町民会館(愛媛県)、丹原町文化会館(愛媛県)、ユメニティのおがた(福岡県)、なかまハーモニーホール(福岡県)、松浦市文化会館(長崎県)、エイトピアおおの(大分県三重町)、大分市コンパルホール(大分県)、中種子町種子島こり~な(鹿児島県)、平良市マティダ市民劇場(沖縄県)、名護市民会館(沖縄県)

 

●地元の資源「越中おわら節」を活用~八尾町コミュニティセンター(富山県)

 富山県八尾町と言えば、情緒豊かな唄と踊りの「おわら風の盆」であまりにも有名です。そこで9月29日から10月2日まで、ソプラノ歌手の小林厚子さんと伴奏のピアニスト瀧田亮子さんによるアクティビティ&コンサートが行われました。

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 初日の9月29日は、地元の子ども合唱団を対象にしたワークショップを実施、小林さんから正しい発声法について指導を受けました。冒頭で合唱団員の子どもが「越中おわら節」の踊りを披露。しなやかでありながら体の軸が通った踊りに、小林さんたちはびっくり。「この踊りの姿勢は、正しい発声の基本にも通じる大切なポイント。発声の時も、足のモーターから送られた空気がすーっと体内のホースを通るような感覚を心がけてください」とアドバイスしていました。
 音活を担当したのは、教育委員会事務局の川口奈央子さん。昨年度まで健康福祉課に所属していて、高齢者に接する機会の多かった川口さんは、町が在宅高齢者の孤独解消や自主的生活支援を目的に行っている講座と連携したアクティビティを提案。10月1日には健康福祉施設でのミニコンサートを実現しました。
 無事事業を終えた川口さんは、「企画の立案に当たっては、各方面との調整で悩み、暗闇を探るようなときもありました。でも、今思えばコーディネーターの方もいて、どんなことでも相談できる幸せな環境だったと実感しています。今後は、音活を通じて交流をもった人たちとのネットワークを大切に活かしていきたいと思います」と話していました。

 

●園児、中学生、高齢者と幅広いアクティビティ~なかまハーモニーホール(福岡県)

 

 北九州市に隣接した中間市では、吹奏楽が盛んなこともあり、金管五重奏のBuzz Fiveを招いて、10月1日から3日まで事業を行いました。なかまハーモニーホールがアウトリーチを行うのは今回が初めて。できるだけいろいろな人に体験してもらいたいと、市立さくら保育園(0~5歳児対象)、市立中間東中学校(吹奏楽部)、県立中間高校(吹奏楽部)、老人ホーム智美園(デイサービス利用者)でのアクティビティを実施しました。

 保育園では、一緒に歌いたがった園児から、「もっとゆっくり弾いて」とリクエストされる場面も。スライドで絵本を写しながらの演奏では、音楽だけで物語をイメージ。園児たちからはいろいろな感想が飛び出し、子ども時代に戻ったような温かい交流になりました。

 また、中間高校での楽器クリニックでは、事前アンケートで集めた質問に、「自分で“演奏家”だと宣言しちゃえば、もう立派な演奏家!」「アンサンブルのタイミング合わせはいつもだいたいで…要は慣れです(笑)」などとメンバーが独創的に(?)回答、笑いを誘っていました。最終日のコンサートには、東中学出身のサックスプレーヤー、楠本理規さんも出演。アクティビティに参加した中高生や智美園の方も多数訪れ、その盛り上がりぶりには、担当の太田環さんも「事業課、管理課といった枠を越えて、こうした事業に取り組んでいければ」と、確かな手応えを感じたようでした。

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●一緒に演奏する喜びを伝えたピアノデュオ~ユメニティのおがた(福岡県)

 福岡県直方市は、昭和初期まで筑豊地区の石炭を運び出すためのSL基地として栄えたところ。音活に参加したユメニティのおがたは、その鉄道跡地に2000年にオープンしました(大ホール1031席、小ホール250席)。そこで10月7日から9日までアクティビティ&コンサートに挑んだのは、木内佳苗さんと大嶋有加里さんのピアノデュオ、Duetwo(デュエットゥ)です。
 事業を担当した津田克之さんは、ステージラボ大分セッションの時に小学校でのアウトリーチを体験したのがきっかけで音活に応募。ホールに2台あるグランドピアノを使ったコンサートができればとDuetwoを招いたそうです。

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 市内の小学校4校で実施したミニコンサートは、「身近なところにクラシック音楽があることを知って欲しい」と運動会の曲としてお馴染の『天国と地獄』でスタート。一人で弾いているかのように二人が息を合わせるモーツアルトの『ソナタ第一楽章』、逆に、楽しい音、哀しい音、激しい音がぶつかり合うビアソラの『リベルタンゴ』と、デュオならではの多彩な演奏を披露しました。特に子どもたちの心をとらえたのが、おもちゃのピアノの速弾き。小さな鍵盤の上を撫でるように指が動くと、ピアノからまるで魔法にかかったような軽やかな音楽が流れ出し、子どもたちも先生も、ポカンとした顔で聞き入っていました。

 今回のアウトリーチでメインイベントとなったのが、子どもたちの描いた町の風景画をもとに大嶋さんが作曲した直方のためのオリジナル曲の発表です。「これからその曲を弾くから曲名を考えてください。これからもいろいろなところで演奏するし、CDにも収録します!」と、大嶋さんから大役を仰せつかったのは、上頓野小学校の6年生。演奏が終わった途端、「いつもやさしい直方」「夕方の帰り道」と自然にタイトルが口をついて出る……。「考えながら聞かせるのが目的だった」とは言うものの、子どもの素晴らしいインスピレーションに脱帽した瞬間でした。
 「アウトリーチをするのに“デュオって何だろう”と改めて二人で考えたのですが、結局、一緒に演奏するのが楽しいってことなんですよね」と木内さん。こうしたデュオ・マジックからか、ミニコンサートが終わると、「ピアノに触りたい、弾きたい」という子どもたちでピアノはあっという間に囲まれ、『猫ふんじゃった』の演奏会に。
 「心をひとつにすれば何人でも何でもできることがわかりました」という感想に、デュオによるアウトリーチの成果が集約されているような音活でした。

 

公共ホール音楽活性化事業に関する問い合わせ
 芸術環境部 小澤・中俣 Tel. 03-5573-4074

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