一般社団法人 地域創造

平成15年度公共ホール音楽活性化事業スタート

●公共ホール音楽活性化事業
 羽咋(はくい)の“日本の歌コンサート”で15年度音活スタート

 

 9月に入り、「公共ホール音楽活性化事業」(通称:音活)が本格的にスタート、今年度も全国18地域で多彩なアクティビティとコンサートが繰り広げられます。今月号では、単独の実施団体としてはトップバッターの石川県羽咋(はくい)市「コスモアイル羽咋」の企画を、9月22日のアクティビティを中心に紹介いたします。

 

●UFO神話のまち、羽咋

 羽咋市は、UFO神話のまちとして知られています。コスモアイル羽咋も空飛ぶ円盤のようなかたちをしており、館内には900名収容の大ホールのほかに宇宙科学博物館や市立図書館が併設されています。

 「外観から宇宙科学博物館のイメージが強く、ホールは何となく影の薄い存在になっていました。これからはもっとこのホールを活用して、芸術文化を通じ市民と繋がりあえる施設にしていきたいと思って申し込みました」と、音活への応募動機を語るコスモアイル羽咋主事の萬澤(かずさわ)正俊さん。

 出演アーティストは、“日本のうた”を歌うソプラノ歌手薗田真木子さんと伴奏のピアニスト長町順史さんです。幅広い年齢層の人に受け入れられやすいジャンルであること、そして何よりも、今年5月に東京で開催された公開プレゼンテーションにおいて、萬澤さん自身が最も感動したアーティストだったことが選定の理由でした。

 

●思わず涙のアクティビティ

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 初日の9月22日は、羽咋小学校とコスモアイル羽咋の2カ所でアクティビティが開催されました。そのうちコスモアイル羽咋で行われたアクティビティには、市内の知的障害者授産施設「あおぞら」の通所者およびその保護者ら約50名が参加。平素、市立図書館によく訪れる通所者たちが本格的な音楽を鑑賞する機会が少ないことを知った萬澤さんが、「あおぞら」にアクティビティの話を持ちかけたところ、是非参加したいということで実現しました。

 通所者たちは、アーティストと同じ大ホールのステージに上がって客席を眺める形で座り、アーティストは客席に背を向けて演奏するというスタイルで催されました。ステージには、通所者が制作した秋をテーマにした絵や草木染めの作品、作業所のボランティアが摘んできたススキやコスモスが飾られ、照明が暗くなるとまるでお月見に来ているかのような雰囲気に。

 薗田さんが心を込めて『赤とんぼ』『ふるさと』などの懐かしい日本唱歌や、映画『千と千尋の神隠し』の主題歌など十数曲を披露。通所者たちは1曲目からリズムをとったり、手を叩いたり、一緒に歌ったりと体全体で楽しさを表現していました。最後、リクエスト曲『ベストフレンド』を全員で合唱した時には、薗田さんはじめ皆の目にはうっすらと涙が浮かんでいました。

 

●コンサートも大盛況

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 10月4日のコンサート当日。「お客さんは来てくれるのだろうか?」とのスタッフの心配をよそに、開場前から幅広い年齢層の観客が会場に詰めかけ、大ホール1階600席の大半を埋める盛況ぶり。

 「忘れかけたあの日の思い出を、甦らせてみませんか? 日本のうたコンサート」と題されたこのコンサートでは、『この道』『雨降りお月さん』『ちいさい秋見つけた』などの懐かしい歌が次々に登場。コンサート中盤では、“このホールでいつかは第九を歌いたい”という願いを込めて命名された羽咋混声合唱団「フロイデ」や、邑知小学校4年1組の児童による合唱も披露されました。客席ではアクティビティに参加していた「あおぞら」のみなさんが、薗田さんや長町さんの名前を書いたプラカードを掲げて声援するなど、会場にはクラシックコンサートとは思えない華やかさが満ちていました。

 「反省点もいろいろあって私自身大変勉強になりました。何よりも終演後の観客の皆さんがいい表情をなさっているのを見て、胸がとても熱くなりました。この気持ちを忘れずに、これからも市民の皆さんとともに企画を考えて親しまれるホールにしていきたいです」と、萬澤さんは安堵の表情を浮かべていました。

 

●平成14・15年度登録アーティスト

  田村緑(ピアノ)、中川賢一(ピアノ)、礒絵里子(ヴァイオリン)、唐津健(チェロ)、

 神代修(トランペット)、竹内直子(ハーモニカ)、浜まゆみ(マリンバ)、

 大森智子(ソプラノ)、薗田真木子(ソプラノ)、羽山晃生(テノール)

 

●公共ホール音楽活性化事業に関する問い合わせ

 地域創造芸術環境部 小澤・宮地 Tel. 03-5573-4074

 

●音楽とコラボレーション!
  ~市町村立美術館等活性化事業の新しい試み~

 

 今回で4回目を迎える市町村立美術館等活性化事業。今年は全国4カ所の美術館が参加し、「版画家としてのシャガール─夢想と追憶のポエジー」展を開催しています。その第1弾として9月14日から10月5日まで、北海道の釧路市立美術館で展覧会が開催されましたが、初めての試みとして、公共ホール音楽活性化事業(音活)の手法を取り入れた企画が行われました。

 

◎シャガール作品を目と耳で体感!!

 マルク・シャガール(1887~1985)は、20世紀の巨匠画家のひとりとして知られており、油彩もさることながら多くの版画作品を残しています。今回はその作品の中から、初期の『死せる魂』やリトグラフの最高傑作とされる『ダフニスとクロエ』『サーカス』などの代表的な版画集を中心に、タブロー3作品を含む91作品が展示されました。

 音楽に親しんでいたシャガールは、絵の題材としても演奏家や楽器を数多く取り入れています。そこで今回、こうした音楽との関わりに着目し、美術館スタッフと演奏家がアイデアを出しあい、シャガール作品とクラシック音楽のコラボレーションコンサートを企画しました。

 参加したアーティストは、平成14・15年度音活登録アーティストでヴァイオリニストの礒絵里子さんとピアニストの田村緑さん。事前に、2日間にわたって市内の養護学校、特別養護老人ホーム、児童養護施設でミニコンサートを行い、展覧会の初日に合わせて美術館に併設されている多目的ホールで本番が催されました。

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 「ヴァイオリン&ピアノとシャガールの世界」と題したコンサートでは、第1部の演奏とトークに続いて、シャガールをテーマにした第2部がスタート。釧路市立美術館学芸員の角井千代絵さんがシャガールの生涯や作品等についてスライドを使った説明を行った後、スクリーンに映し出されたシャガール作品をバックに、田村さんの詩の朗読や2人の演奏が行われました。会場を埋めた約200人の観客は、大人も子どもも一緒に、シャガールの幻想的で色鮮やかな世界を目と耳で体験していました。

 このほか、美術館独自の関連事業として、高橋直裕さん(世田谷美術館教育普及課長)をコーディネーターに招いた小学生対象のアートオリエンテーリングも行われました。9月26日の十勝沖地震の翌日が開催日だったこともあり、影響が懸念されましたが、予想以上の40名が参加。コミュニケーションゲームの後、いつもは入れない収蔵庫やボイラー室等、美術館の裏側を探検し、大好評でした。

 角井さんは、「今回の事業は、何もかもが初めてづくし。でもどの企画にも手応えがあって、これからのことを考えるための一歩が踏み出せたと思います」と、話していました。

 

●今後の市町村立美術館等活性化事業の日程

◎萬鉄五郎記念美術館(岩手県東和町)

 [日程]10月11日~11月3日
 [問い合わせ]Tel. 0198-42-4402・4405

◎砺波市美術館(富山県砺波市)

 [日程]11月8日~30日
 [問い合わせ]Tel. 0763-32-1001

◎中山道広重美術館(岐阜県恵那市)

 [日程]12月4日~25日
 [問い合わせ]Tel. 0573-20-0522

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