一般社団法人 地域創造

新潟県越後妻有6市町村 大地の芸術祭─ 越後妻有アートトリエンナーレ2003

里山や棚田が豊かに残る新潟県の妻有6市町村を舞台にした「大地の芸術祭─越後妻有アートトリエンナーレ2003」(※1)が7月20日に開幕した。今回参加したのは、23カ国、157組のアーティスト(商店街の活性化プロジェクトを行った全国の大学のゼミ・研究室の学生を含む)。常設されている第1回作品と合わせて、計224作品が762km2の広大な農村地帯に集積するという、他に類をみない展開になっている。

 

※1 大地の芸術祭

1994年に県知事によって提唱された広域地区活性化政策「里創プラン」に則り、アートにより地域の魅力を引き出し、交流人口の拡大等を図る10カ年計画「越後妻有アートネックレス整備構想」がスタート。この事業の柱が、6市町村に異なるテーマをもつ地域の拠点施設を整備する建築プロジェクト「ステージ」、3年に1回開催する野外アート展「大地の芸術祭─越後妻有アートトリエンナーレ」、住民とアーティストの協働で整備する「ポケットパーク事業」など。

 

今回のトリエンナーレで特筆すべき点は3つ。1つ目は地域ごとに異なるテーマをもつ拠点施設「ステージ」がオープンしたこと。2つ目が地域復興の核として「集落」に着目し、約200ある集落の内、50がアーティストとの協働による作品づくりに参加、素晴らしい成果を上げたこと。3つ目が、集落の閉鎖された小学校、廃屋になっていた古民家などをアートの場として活用することで、ほとんどコストをかけずにそこを交流拠点として再生させることに成功した点である。

つまり、これはただの野外アート展ではなく、アートを媒介にした「協働」により進められている、地域づくりの最前線の現場なのだ。

 

 

8月9日。台風10号が日本列島を縦断している最中、新しい拠点施設のひとつ、絹織物のギャラリーと温泉施設を複合した「越後妻有交流館キナーレ」に向かった。3年前、第1回トリエンナーレが行われた時、ここは、廃業した織物会社の倉庫を改装したインフォメーションセンターとイベント広場があったところだ。

同様に、アートイベントを行っていた空き地には、農村文化をテーマにした「まつだい雪国農耕文化村センター」と自然観察をテーマにした「森の学校キョロロ」が誕生していた。いずれも贅沢なつくりではないが、地域の情報が蓄積し、住民との有機的な繋がりをもてるよう工夫されている。アーティストと住民が協働してポケットパークをつくる事業も16カ所すべてが完成していた。これだけ見ても、この3年、妻有では一時の休みもなく活動が続けられていたことがわかる。

松代町の雪国農耕文化村センターを訪ねると、全戸の屋号(1,400軒中1,200軒)がカラーバーに記された回廊と住民が出演したビデオ挨拶が出迎えてくれた(ジョセップ・マリア・マルティン「まつだい住民博物館」)。どの部屋も異なるアーティストの作品になっている。ショップでは不思議なものを載せた移動式商品棚が動き回り(牛島達治)、壁も机も地球儀も「落書き自由」の黒板でつくられた夢の学習室(河口龍夫)があったり、鏡のテーブルに映った四季の風景(天井にディスプレイされた住民が撮影した写真)を見ながら食事のできるレストラン(ジャン=リュック・ヴィルムート)など、アートと地域と生活が一体になった空間が広がっていた。

「今はこへび隊(※2)を中心に運営しているが、会期後は産直や田んぼのオーナー制度などの工夫でこの施設が自立できるよう準備をしているところ。経営が軌道にのったら、住民が株主になった株式会社にできればと思っている。政治や経済で地域を見ると合併ということになるのかもしれないが、文化は違うぞ、と作品づくりでは徹底的に集落にこだわった。その成果をぜひ見に来てもらいたい」と、総合プロデューサーの北川フラム氏は言う。

 

※2 こへび隊

東京の学生を中心にした自主的なサポート組織。準備段階から「あれやこれや会議」で主体的に話し合いながら、広報・企画・アーティストサポートを行う。会期中は連日、100人余りが廃校を活用した宿舎に泊まり込み、無償で運営に携わる。

 

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血が逆流するような一つの作品と出合った。十日町市のはずれ、減反で泥肌をさらす山間の田んぼ。そこの下条集落の人々は、アーティストの古郡弘氏とともに、その泥とワラをこねて、人の手だけで高さ6メートルにもおよぶ巨大な城壁をつくりあげた。人々の力がアーティストのイメージを超え、想像物であって想像物でない、形にできなかった集落のエネルギーをアートによって結集した作品が立ち上がっていた。

3年を経て、どのアートプロジェクトからも社会をつくるための迂遠な営みとしての息遣いが聞こえてくるようになった──、そんな思いが強く心に残った。

(坪池栄子)

※その他のアートプロジェクトのコラムが地域通信トピックスにあります。

●大地の芸術祭─越後妻有アートトリエンナーレ2003

[会期]7月20日~9月7日
[会場]新潟県越後妻有6市町村(十日町市、川西町、津南町、中里村、松代町、松之山町)全域
[総合コーディネーター]北川フラム

 

地域創造レター 今月のレポート
2003.9月号--No.101

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