●アートを通して地域と関わる試み~大阪市立中央青年センター事業係・本田真弓(談)
3月16日、「コンテンポラリーダンス・ツアーin 新世界」を開催しました。これは、大阪市立中央青少年センターの事業「青年芸術文化劇場」として企画したものです。通天閣、天王寺公園内にある大阪市立美術館前の広場、フェスティバルゲート、スパワールドなど、大阪・新世界を舞台に4組のアーティストがパフォーマンスを繰り広げ、参加者はツアー形式でまちの賑わいを感じながらダンスを鑑賞。また、その場に居合わせた人々は、突然現れたコンテンポラリーダンスに遭遇する──というイベントです。ツアーがスタートする直前の2時間、フェスティバルゲート内の劇場「Art Theater dB」で、「からだとあそぶダンスワークショップ」と題して、障害者、健常者が一緒に参加するワークショップも行いました。
そもそも「青年芸術文化劇場」は、毎年1回開催している事業で、以前は一つの公演団体にお願いをし、中央青年センターのホールで公演をするという形式でした。私は平成12年度から担当者になったのですが、「優れた芸術を紹介する」といっても、40万円という限られた予算で、どれだけのことができるか悩んでいました。そんなときに、日本アートマネジメント学会関西部会の講演で“芸術文化事業が単にイベント的なものとして存在するのではなく、まちづくり、社会的なことに関係している”という話を聞き、とっても面白いと思いました。
それで、まずは理解を深めるために13年度、14年度と、センターで「アートマネジメントセミナー」を開催しました。14年度は「まちと呼吸するアーツを求めて」というテーマで9月から10月の1カ月間で7回の講義を行い、20~30代を中心に30名ほどが参加しました。
このセミナーの成果という位置づけで、今回のダンス・ツアーを企画しました。セミナー受講生に呼びかけたところ、企画から関わるボランティアとして男性1名、女性3名が参加してくれました。
そして具体的なプロデュースを、体験セミナーの3回目の講師として来ていただいた大谷燠さんが代表を務めるNPO法人「DANCE BOX」に業務委託しました。DANCE BOXは「Art Theater dB」の企画・運営をしているのですが、劇場を出てアウトリーチ的なことをやりたいと思っていたとのことで、考えが一致したんです。
それと、今回はセンターとNPOとの協働事業の実践という意味合いもあったので、「DANCE BOX」には事業のプロセスに深く関わっていただき、アートマネジメントの学びの場としてこの企画を活用したいとお願いしました。ですから、かなり会議には時間を割きましたね。
プロジェクトメンバーのひとりが障害者と芸術を通じてコミュニケートするという活動をしている団体「EARTH color」の主宰者ということもあり、そのノウハウが役立ったり、新世界を拠点としている「DANCE BOX」だからこそまちの人々の了解が得やすかったり。また、美術館への許可申請などは、センターと同じ大阪市教育委員会の管轄なのでスムーズにいったりと、お互いの特性を活かした協働事業ならではのメリットが大きかったと思います。
当日は一般公募のボランティアスタッフ13名が加わって運営をしました。あいにくの雨模様にもかかわらず多くの参加者にも来ていただき、みんなが楽しんでくれたようでホッとしています。
ただ、今回のような取り組みを継続するとなるとやはり大変です。昨年度のセミナー受講者でグループを立ち上げてはいますが、今回の「DANCE BOX」のような専門家がいないと難しいかもしれません。大阪のさまざまなところでまちとアートの企画が生まれてくることを目標に頑張りたいです。
●コンテンポラリーダンス・ツアー in 新世界
[日程]3月16日(ダンスワークショップ13:30~15:00/コンテンポラリーダンス・ツアー15:00~17:00)
[会場]Art Theater dB(フェスティバルゲート3F)、大阪市立美術館前、通天閣、スパワールドほか新世界周辺
[主催]大阪市立中央青年センター
[制作・企画]NPO法人DANCE BOX
[出演]中西恵子(ワークショップナビゲーター)、竹ち代毬也+勝野タカシ、KEN MAI(ケン五月)、エメ スズキ、CRUSTACEA(クルスタシア)
地域創造レター 今月のレポート
2003.5月号--No.97