-地域や市民に求められる財団となるための提言-
財団法人地域創造では、全国の公立文化施設の活動状況を把握するとともに、今後の運営の指針となるような調査研究事業を実施しています。本年度は、数々の問題点が指摘されている公立文化施設の財団運営のあり方について、アンケートとヒアリングによる調査を実施しました。併せて専門家委員会を設け、計6回の検討会を行いました。
アンケート調査の対象となったのは、公立文化施設の管理運営を委託されている全国30財団と、それらの財団を設置した地方自治体です。回答を踏まえて、その内の5財団(およびその設置自治体)を抽出し、さらに詳しいヒアリングを実施しました。
また、地域創造が2000年12月に実施した全国の公立文化施設に対する悉皆調査(「地域の公立文化施設に関する調査」)を再分析し、芸術文化施設(※1)を運営する財団についての全国データを整理しました。
今回の調査では、財団運営の現状をできるだけ実態に即して把握できるよう、基本的に自由記述方式で回答していただきました。そのため、調査対象となった団体の方々には大変お手数をおかけしました。ご協力をいただきました皆さま、本当にありがとうございました。2月初旬に正式の調査報告書が発行される予定になっていますが、今号では、活気ある財団運営を行うための提言内容および主な調査結果の一部をご紹介したいと思います。
※1 芸術文化施設とは、主たる施設内容が、「ホール」「美術館」「練習施設」「創作工房」とその複合施設である施設。
●活気ある財団運営に向けての提言
今回の報告書の特徴は、専門家のご意見を伺いながら、多くの課題を抱える芸術文化施設運営財団が、地域や市民に求められる活力ある財団となるための提言書としてまとめられているところです。主な内容は下記の通りです。「時代・環境を認識せよ」「すべては『ミッション』からはじまる」など6項目に分け、具体的な各地の取り組み事例を入れてわかりやすく整理されています。2月1日以降、地域創造ホームページよりダウンロードできますので、興味のある方はご参照ください。
◎提言の主な内容
(1) 時代・環境を認識せよ
地方分権の進展などの時代の流れや財団を取り巻く厳しい環境を認識し、財団のメリット(「柔軟な運営」「専門人材の登用」「弾力的・効率的な財政運営」「民間的発想の導入とサービスの向上」)を活かした積極的な運営を。
(2) すべては『ミッション』からはじまる
原点に立ち返ることにより、市民に開かれたわかりやすいミッションを構築し、plan→do→seeで目標を達成し、成果の評価と公表を。
(3) 活力ある財団運営は内部改革から
職員の多様な雇用形態を取り込んだり、柔軟な勤務形態の活用など積極的な財団の内部改革により、職員が支える柔軟な運営体制の実現を。
(4) 施設を有効に活かせ
専用使用や優先利用の検討など施設を有効に活用し、多様化する施設利用への対応を。
(5) 財団の活性化はわが国文化行政の緊急課題
民間や認定NPO法人をも含めた関連団体との連携や財団間での人的交流の実施など、相互交流による活性化を。
(6) 地域や市民に求められる財団であれ
財団と地域がお互いに成熟し、相互発展・協働(スパイラルアップ)するような関係の構築を。
●アンケート調査の主な結果
【財団調査】財団の設立目的・理念/事業・活動の内容/施設の運用・管理/芸術家やアーティスト、市民やNPOとの関係/運営体制・組織構成/運営予算/事業の評価や情報公開、アカウンタビリティ(説明責任)/課題・将来像
【自治体調査】自治体の文化政策、設置する財団等外郭団体全般(文化振興財団を含む)の管理・運営に対する基本方針等/調査対象財団の設置目的、メリット、財団設置の成果・課題/運営体制・組織構成/運営予算/事業の評価や情報公開、アカウンタビリティ(説明責任)/財団運営の方向性、現状の課題等
●全国の芸術文化施設運営財団の現状
2000年12月の調査で得られた芸術文化施設データを再分析した結果、財団が運営している施設(以下、財団運営施設)は835施設、自治体が直接運営している施設(以下、直営施設)は1,882施設となっていました。
財団運営施設と直営施設ごとに設置自治体の割合を見ると、財団運営施設では、「市」が53.2%と半数以上を占めているのに対し、直営施設では、「町村」が59.8%と最も多く、設置自治体によって芸術文化施設の運営組織のあり方に顕著な差がみられました(図1参照)。
図1 財団運営/直営ごとにみた設置自治体の割合
また、財団運営施設の規模について見ると、常勤職員数は全国平均で11.0人で、都道府県設置施設(18.2人)、政令市・特別区設置施設(12.1人)、市設置施設(9.7人)、町村設置施設(6.2人)の順になっていました(図2参照)。
図2 財団運営施設の常勤職員数―平均値
なお、財団運営施設、直営施設数の推移については、公立文化施設建設ラッシュを受けて、いずれも80年代、90年代に急増していました(図4参照)。
図4 財団運営施設/直営施設数の推移
●専門家委員会メンバー
朝日信夫(財団法人救急振興財団副理事長)、衛紀生(舞台芸術環境フォーラム代表)、中村晃也(財団法人墨田区文化振興財団事業課長)、細川紀彦(金沢市民芸術村村長)、山本章(財団法人静岡県舞台芸術センター専務理事) ※五十音順
●「地域文化施設における財団運営に関する調査研究」問い合わせ先
地域創造芸術環境部 Tel. 03-5573-4069 碇政幸