●市民参加型にシフトした「おかやま音楽祭」~友延由紀恵(岡山市企画局文化政策課)
9月21日から10月6日まで岡山市内各所で「第9回おかやま音楽祭」を開催しました。今回の音楽祭の特徴は、市民グループが主催し、企画から運営までを行う催しを集めて音楽祭のメニューにしたことです。
そもそも「おかやま音楽祭」は1991年にオープンした岡山シンフォニーホールの開館3周年記念事業としてスタートしました。ですから、音楽祭の内容もクラシックが主で、岡山フィルハーモニック管弦楽団のコンサートや地元の音楽関係団体で構成された実行委員会の企画を直接主催するかたちで進んできました。
しかし、2年前に文化政策課が教育委員会から市長事務部局に移ったのを機に、まちづくりとの関わりで音楽祭を見直そうと、プログラムの一部として市民が企画する「小さな街角コンサート」をスタート。今年から全面的に切り替え、市民が企画運営する催しだけで構成することになりました。
プログラムには、オカヤマ・オペラ・プロジェクトが16世紀末に初演された当時の古楽器や楽譜にできるだけ忠実に上演したバロックオペラ『オルフェオ』(モンテヴェルディ作曲)、ストリートやライブハウスなど街中で展開して大成功した「おかやまJAZZフェスティバル」、廃校になった小学校の体育館を会場に廃品の楽器を演奏した「未来チンドンガラクタ音楽会」、走っている路面電車を会場にした「コンサート電車」、テープ審査で出演者を募集した街角コンサート「大好きクラシック」などなど、刺激的で楽しい催しが並びました。
早いところで昨年の9月ぐらいから準備をはじめ、週1回ペースで定期的に集まって相談や作業を行ってきました。古楽器演奏家の下山恭正さんを中心にしたオペラ・プロジェクトは、最初数人で立ち上げたのですが、大道具、小道具、衣裳、宣伝、美術などすべて市民の手づくりで行い、岡山県立大学や中国デザイン専門学校の学生も協力した参加型事業になりました。ジャズ・フェスも徐々に輪が広がり、最後はメーリングリストに500名が名を連ね、当日は200人を超えるボランティアスタッフが参加する盛り上がりで、すでに来年も続けたいという声が出ています。
次回からは企画の公募も考えていますが、今年は移行期だったので岡山市内で活動している市民団体に声をかけて、一部は実行委員会をつくって実施してもらいました。道路使用許可申請など市が間に入った方がいいケースを除いて、会場の手配などもすべて市民が担当。市は総事業費の3分の1を補助したのと、全体の広報宣伝をやりました。
企画内容については、市民が考えていることをそのままやっていただこう、というスタンスです。ただ、せっかく補助金が出るんだったらと、どんどん規模を大きくしてしまうケースもかなりありました。チケット収入は主催団体に入るのですが、予算書を見ると、収入は最大限、支出は最小限になってる!(笑)。赤字が出ると主催団体に負担がいくので、そこは何度も話し合いをして、適正な規模に調整していただきました。
市民参加型の音楽祭をやってみて思うのは、コンサートにお客さんとして来るのではなく、やりたいことを積極的にやっている人たちは本当にいい顔をしているということ。一流のコンサートが聴ける環境づくりも重要ですが、改めて市民参加型事業の必要性を痛感しています。
今後の課題としては、音楽祭としての一体感をどうつくるか、市民団体同士の交流をどう図るかといったことがあります。岡山市内では小中学校の統廃合が進み、空き教室や廃校なども生まれているので、そういった場所を市民の文化活動拠点として暫定利用するなど、今回できたネットワークを活用していろいろな取り組みを考えていきたいと思っています。(談)
●第9回おかやま音楽祭
[主催]おかやま音楽祭実行委員会、岡山市、(財)岡山シンフォニーホール
[会期]9月21日~10月6日
※一部、プレ事業、アフター事業あり
「おかやまJAZZフェスティバル」(8月9日、10日/岡山シンフォニーホール、後楽園幻想庭園、ストリートほか)/「おかやまアカペラフェスティバル2002」(8月29日~9月1日/ママカリフォーラム岡山ほか)/「現代の音~和楽器+JAZZ」(9月21日/岡山県立美術館ホール)/「室内楽とワークショップの夕べ」(9月21日/オリエント美術館)/「コンサート電車」(9月23日/超低床式路面電車MOMO)/「チルドレンズ・ライブ2002」(9月23日/岡山シンフォニーホール)/バロックオペラ『オルフェオ』(9月28日/岡山市民会館)/「未来チンドンガラクタ音楽会」(9月29日/旧出石小学校体育館)/街角コンサート「大好きクラシック」(10月6日/アムスメール上之町)ほか
※日程は関連事業を含んだものです。
地域創造レター 今月のレポート
2002.11月号--No.91