1930年代から60年代後半、日本の美術はヨーロッパの動向を追いつつ、表現を成熟させていきました。パリを中心とする滞欧作家の帰国が相次いだ洋画では、前衛美術の余波を受けて、幾何学的抽象やシュルレアリスムを日本になじませる方向が模索されます。戦争を挟みながらもモダニズム、モダンアートという表現方法を世界と共有しつつ、日本人なりの表現がさまざまに求められ、やがて各人の作品に結実していった時代ともいえるでしょう。
地域創造が平成14年度「市町村立美術館等活性化事業」として実施するのが、この時代に交友関係のあった国内3作家にスポットを当てる「モダンアートの旗手たち」展で、8月31日から全国4カ所での巡回がスタートします。村井正誠(むらいまさなり/1905~1999)、矢橋六郎(やはしろくろう/1905~1988)、山口薫(やまぐちかおる/1907~1968)は、滞欧をともにするなど20年代から山口の没する60年代まで、友として、よきライバルとして同時代を過ごします。新時代洋画展、自由美術家協会、モダンアート協会といずれも近代から現代の日本洋画を語る上で欠かせない団体の結成をともにした3人は、互いを近くに意識しながら、「日本の抽象表現」など、同世代共通の課題に取り組みました。
その足跡は、1930年代の「モダニズム」から「戦後美術」と呼ばれたモダンアート傾向、さらに60年代以降の現代美術へという動向とも重なります。本展では、3人の出身地等としてゆかりの深い和歌山県立近代美術館・岐阜県美術館・群馬県立近代美術館や本巡回展開催館のコレクションなどを中心に、同時期作品、同テーマ作品など42点を並べて展観することで、その交友を偲ぶとともに、抽象と具象のはざまに揺れる同時代の表現傾向の一端にもあわせて触れようとするものです。
●市町村立美術館等活性化事業「モダンアートの旗手たち~村井正誠・矢橋六郎・山口薫~」展 巡回日程
○大垣スイトピアセンターアートギャラリー(岐阜県大垣市)
[日程]8月31日~9月23日
[問い合わせ]Tel. 0584-82-2310
○豊科近代美術館(長野県豊科町)
[日程]9月28日~10月27日
[問い合わせ]Tel. 0263-73-5638
○高崎市美術館(群馬県高崎市)
[日程]11月2日~24日
[問い合わせ]Tel. 027-324-6125
○田辺市美術館(和歌山県田辺市)
[日程]11月30日~12月23日
[問い合わせ]Tel. 0739-24-3770
●市町村立美術館等活性化事業に関する問い合わせ
地域創造総務部 右谷誠
Tel. 03-5573-4056
市町村立美術館等活性化事業「モダンアートの旗手たち~村井正誠・矢橋六郎・山口薫~」展スタート
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