一般社団法人 地域創造

平成14年度公共ホール音楽活性化事業「全体研修会」

 市町村の小規模なホールも気軽に参加できることから好評をいただいている公共ホール音楽活性化事業(以下、音活)。平成14年度の取り組みが、4月23日から25日まで北とぴあ(東京)で行われた「全体研修会」でスタートしました。
 これは、本年度参加ホール17館の担当者と事業をサポートするコーディネーター、および音活に協力する演奏家が一堂に会する“音活版ステージラボ”。詳細スケジュールは、下表にあるとおりで、事例紹介やコーディネーターを交えた企画づくりワークショップなど、実践的なプログラムになっています。
 特に全体研修会の目玉となっているのが、地域に派遣される登録アーティストが演奏とトークを披露する公開プレゼンテーションです。新メンバーに入れ替わったこともあり(2年で更新)、初々しさと緊張感溢れるパフォーマンスになりました。
 また、今回から新たに「OB研修会」がスタート。過去の参加館に呼びかけたところ大反響で全国から27名の担当者が再結集。音活をきっかけにアウトリーチの先進館として活躍しているホールも多く、後輩たちのよき相談相手となっていました。

 

●平成14・15年度登録アーティスト

田村緑(ピアノ)、中川賢一(ピアノ)、礒絵里子(ヴァイオリン)、唐津健(チェロ)、神代修(トランペット)、竹内直子(ハーモニカ)、浜まゆみ(マリンバ)、大森智子(ソプラノ)、薗田真木子(ソプラノ)、羽山晃生(テノール)

 

●平成14年度コーディネーター/アドバイザー

児玉真(音楽プロデューサー、第一生命ホール・オープニングプロジェクトアドバイザー)、箕口一美(音楽プロデューサー、第一生命ホール・オープニングプロジェクトプロデューサー)、能祖将夫((仮称)北九州芸術劇場準備事務局プロデューサー、美野里町四季文化館芸術監督)、楠瀬寿賀子(津田ホールプロデューサー、びわ湖ホールプロデューサー)、津村卓(地域創造チーフプロデューサー)、宮地俊江(地域創造ディレクター)、小澤櫻作(地域創造ディレクター)、吉本光宏(ニッセイ基礎研究所主任研究員)

 

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長谷部一郎さんによる
学校訪問コンサート
(埼玉県富士見市・平成13年度)
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白石光隆さんによる
学校訪問コンサート
(埼玉県児玉町・平成13年度)

 

●平成14年度公共ホール音楽活性化事業開催地

 苫前町公民館(北海道)、六ヶ所村文化交流プラザ(青森県)、登米祝祭劇場(宮城県)、東村文化センター(福島県)、水海道市立生涯学習センター(茨城県)、見附市文化ホール(新潟県)、河口湖町円形ホール(山梨県)、関ヶ原ふれあいセンター(岐阜県)、文芸セミナリヨ(滋賀県)、西脇市立音楽ホール「アピカホール」(兵庫県)、清水町文化センター(和歌山県)、アクティブライフ井原(岡山県)、山川アメニティセンター(徳島県)、大牟田文化会館(福岡県)、おきえらぶ文化ホール「あしびの郷・ちな」(鹿児島県)/ネットワーク事業開催地 瀬戸田町民会館ベル・カントホール(広島県)、ビッグハート出雲(島根県)
※会場は予定

 

●個性派揃いの登録アーティスト

 「プレゼンテーションを最後まで聞いたら、どの演奏家にも違った魅力があって選べなくなった」と担当者たちが頭を抱えるほど、14・15年度の登録アーティストは個性派揃いでした。
 ハンガリーの現代作曲家クルタークを取り上げ、両手に靴下を履いて(!?)演奏したピアニストの田村さんをはじめ、足に鈴を付け手に4本のバチをもってマリンバの魅力を全身でアピールした浜さん、チェロ用に見事に編曲された『荒城の月』で魅了した唐津さん、旅行先でのエピソードを交えながら自慢の喉を披露したソプラノの大森さん等々。また、初期の登録アーティストに比べ、トークの技術が飛躍的に向上しているのも驚きでした。
 交流会では、お目当ての演奏家の前に担当者が行列。「グランドピアノがないのですが」「ハーモニカとマリンバの組み合わせは可能ですか」「子どもたちに絵を描いてもらいたいのですが」「星空コンサートはできますか」など、いろいろな質問が飛び交っていました。
 河口湖町から参加した野沢藤司さんは、「2,700人収容の野外ホールで観光と連動した大型の音楽イベントをやっています。小ホールの方で地元の人を対象にした事業を考えたいと思い、音活に参加しました。マリンバは視覚的にも楽しめて面白かった。音のでる楽器を子どもたちにつくってもらって共演できれば」と、頭の中はアイデアで一杯の様子でした。

 

●OB研修会のテーマは継続

 OB研修会の事例発表で登場したのが、兵庫県和田山町の藤田茂樹さんです。和田山町では、平成10年の音活で初めてアウトリーチ活動を実施して以来、町の単独予算や他の地域とのネットワークにより5年にわたって事業を継続してきました。
 「和田山町は“演歌圏”なのでクラシックコンサートは著名な演奏家しか集客できません。それでアウトリーチ活動を有効に使って観客を育成していこうと、この事業に継続的に取り組んでいます。3年目は北海道新冠町、新潟県小出郷と連携してやりましたが、4年目は地元の但馬地域内でネットワークがつくれないかと考え、温泉町と生野町に呼びかけました。ジュラシックパークで恐竜に出合うように、但馬をクラシックに出合うクラシックパークにしようと“TAJIMAクラシックパーク”と名付けました(笑)。これからもOBとして他の町に声をかけながら、こういう取り組みのできる職員を増やしていければと思っています。兵庫クラシックパーク、近畿クラシックパークと活動を広げるのが夢です」

 ナビゲーターを務めた地域創造・武居丈二芸術環境部長は、締めくくりに「継続しているところは、地域やホールの中で事業がきちんと位置づけられていることに加え、行政や町長の理解といったインリーチがあるように思います。音活はこれまで延べ60地域で実施されましたが、皆さんのホールで行われているような地道な取り組みが社会全体に広がることで、世の中を変えていけるように思います。OB研修会で新しいアーティストや仲間との輪を広げていただき、事業の継続の助けにしていただければ」とあいさつ。OBの今後の活躍に期待感を滲ませていました。
 最終日、OBから14年度参加館の担当者に向けて「音活32カ条」が読み上げられると、会場は大爆笑に。「音活は健康に忍耐」「答えは現場にある」「使えるものは誰でも使え」など。紙面で紹介できない過激な(?)内容もありますので、興味のある方は担当者にお問い合わせを。

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「全体研修会」ゼミの様子

 

●全体研修会スケジュール

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●OB研修会スケジュール

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