●子どもミュージカルで友好都市交流を
(栗東芸術文化会館さきら・山本達也 談)
3月23、24日の両日、さきら子どもミュージカル『天河を越えて―我想飛越銀河―』の一行59名が中国湖南省衡陽市での遠征公演を敢行しました。これは、1992年に栗東市と衡陽市が友好都市締結をして今年で10周年にあたることから、その記念事業として企画されたものです。毎年12名の中学生が交換留学制度によって交流しているほか、99年に栗東芸術文化会館さきらがオープンしてからは、文化交流の拠点として雑技団や武術団などを年1回招聘してきました。
「さきら子どもミュージカル」は、地元の小中学生たちに歌、演技、ダンスの3要素が揃ったミュージカルで生の舞台を体験してもらおうと、開館記念事業としてスタートしたものです。子どもたちには本物に触れてもらいたいと、脚本・演出の生田智章さん、作曲の丸山和範さんなど創作スタッフはすべてプロで、演奏もオーケストラによる生演奏を基本にしています。2000年1月に第1作目の『未来への約束~栗の木の東の国で』を発表し、昨年、再演。3回目になる今年は、ほぼ同じスタッフで衡陽市での公演を前提に新作をつくりました。
何せ初めての中国遠征で、会館のメンバーも創作スタッフも試行錯誤でした。中国遠征を前提に出演者公募、オーディションを行い、稽古は7月末から約8カ月にわたって計70回ほど実施しました。出演者32名を5班のグループに分け、子どもたちが主体的に準備や後始末に取り組めるようにし、遠征の際もグループで集団行動しました。衡陽市までは、関空から上海に飛び、上海から湖南省の首都にある長沙空港まで飛び、さらに高速バスで約3時間という長旅でしたが、グループを核にうまく統率が図れました。
また、作品の内容は、第1作同様、地元の題材をモチーフにしながら、衡陽市との交流や日中友好がテーマになるよう演出の生田さんに検討していただきました。手をつなごうという意味の「手牽手(ショウチエンショウ)」や銀河を越えてという「我想飛越銀河(ウォシアンフェイユエインフー)」など中国語を使ったテーマ曲もあり、合唱と中学生役で衡陽市の中学生30名が出演。予めテープで練習してもらい、先乗りした生田さんたちが現地指導しました。
装置は衡陽市のプロのスタッフに発注し、衣裳は出演する中学生の保護者にお願いするなど準備を進めていたら、何と公演の2カ月前に劇場が変わってしまった。当初は市内の古い劇場を使う予定で、昨年10月には技術スタッフ9名が現地視察にも行ったのですが、急遽、私たちのためにわざわざ新しい劇場を準備してくださることになり、建築中だった衡陽市会議中心を劇場仕様にして、名誉あるこけら落としをやることになりました。
そもそも劇場ではないので、舞台は石造りだし、設備も予定と違っていたので、必要な音響、照明機材等について連絡をしたのですが、みなさんとても大らかな方たちなので、仕込みのスタッフが現地入りした時には一部の機材がまだ届いてなくて、舞台の掃除から始めたという、まさに「こけら落とし」の状況(笑)だったそうです。
字幕付きで計約3,000名の観客に見ていただきましたが、歌や踊りが終わる度に拍手が沸いていました。楽屋では子どもたちが漢字でコミュニケーションしていたり、大変でしたが、いい交流になったと思います。2年後にも衡陽市公演を行う話があり、「さきら子どもミュージカル」にとっていい目標になるのではないでしょうか。
今回の出演者の6、7割が、第1回目から関わっている子どもたちです。考えてみると彼らは3年間にわたって土日、夏休み、冬休みをミュージカル漬けで過ごしたことになります。高校生になるとこの事業の対象からもはずれますし、これからこうした子どもたちの受け皿をどうするかが問われてきます。今、大人を対象にした市民ミュージカルを検討しているところで、今後の課題になっています。
●あらすじ
物語の舞台は北京オリンピックが開催される2008年の衡陽市。交流のために衡陽市を訪れた栗東の子どもたちが、地元の中学生たちと合同ハイキングに出かけるが、時空の歪みのために「壬申の乱」が始まったばかりの古代の栗東にタイムワープしてしまう。山火事に巻き込まれた子どもたちは協力して消火活動を行い、2008年の中国から携帯電話で災害用ヘリコプターを古代に呼び寄せて鎮火する。これが、栗東の光山の竜伝説となる。
●『天河を越えて―我想飛越銀河―』
[栗東公演日程]3月9日、10日
[衡陽市公演日程]3月23日、24日
[作・演出]生田智章
[作曲・指揮]丸山和範
[振付・ダンス指導]中野栄里子
[歌唱指導]橘千佳
[オーケストラ演奏]オペラハウス管弦楽団(衡陽市公演はテープ)
[合唱]栗東少年少女合唱団(衡陽市公演は衡陽の中学生のみなさん)