一般社団法人 地域創造

理事長 新年のご挨拶

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●理事長あいさつ

◆去る12月1日に、国民が待ち望んでおりました愛子内親王殿下がお生まれになりました。2002年を迎えるに相応しいこの明るい知らせを、財団職員一同、地域の方々とともに心よりお慶び申し上げたいと思います。

 

◆振り返ってみますと、昨年は、華々しい新世紀の幕開けを祝った直後から、いろいろと不幸な出来事が続きました。しかし、目を転じれば、アメリカ大リーグで新人王、首位打者、盗塁王、そして最優秀選手賞まで獲得したイチロー選手を筆頭に、宣言通り世界最高記録を出したマラソンの高橋尚子選手など、スポーツ界を中心に若い人たちが世界に飛躍した年でもありました。いよいよ本年5月末にFIFAワールドカップが開幕しますが、サッカーでも中田英寿、川口能活、小野伸二、稲本潤一、高原直泰などナショナルチームのメンバーがサッカーの本場にわたり、堂々たる活躍をしています。日本国内には不況や構造改革など難問が山積していますが、日本と世界の垣根を取り払ってチャレンジするこうした若い人たちの姿に、私はとても希望を感じています。とともに、新世紀が、人に生きていく力と自信を与えてくれる「スポーツと文化の世紀」であることを、改めて痛感した次第です。

 

◆昨年12月に、4党合同の議員立法として提出された「文化芸術振興基本法」が成立しました。これまで芸術文化振興に取り組んできた私たちにとりましては、今まで行ってきたことが、改めて法律という形で「宣言」されたことになります。仏つくって魂入れずにならないよう、国民や住民が芸術文化を通じた豊かな生活を実現するために、各地の首長にはより一層のご尽力をいただければとお願いする次第です。財政難でお互いに厳しい状況ではありますが、私ども財団も知恵を出してできうる限りのご協力をさせていただきたいと思います。

 

◆さて、財団の事業についてですが、地域創造の原点とも言える研修事業の「ステージラボ」が9年目を迎えます。濃密なカリキュラムにもかかわらず、皆さんが楽しみながら参加されているのを見て、主催者としてとても嬉しく思っています。ラボがよい思い出となるよう、また、卒業生としての奮起を期待して、修了証書の発行や参加者同士のきめ細やかなネットワークづくりのためのシステムなど、いろいろと工夫していきたいと思っています。また、一昨年には「地域住民とともにある公立文化施設」という視点に立った「美術コース」を新設しました。今後とも、公立施設が共通してもつこの課題を地域の美術館の方々と考えていければと思っておりますので、お知恵を拝借するという意味からも、より積極的なご参加をいただければ幸いです。

 

◆私どもの調査によりますと、公共ホールの約63%で自主事業への取り組みが行われていました。私は、「人が育たなければ行政で芸術文化をやる意味はない」と思っています。自分たちで事業を制作し、発信する中で、はじめて芸術家も観客も地域の人々も共に育っていくのではないでしょうか。地域創造では、「演劇製作ネットワーク事業」「公共ホール音楽活性化事業」「ステージクラフト」と、それぞれ形は異なりますが、ホール職員が主体性を持って企画や制作に参加し、ノウハウを修得できる場を設けていますので、活用していただければと思います。東京での発表の機会を提供している「リージョナルシアター・シリーズ」や「地方都市オーケストラフェスティバル」も同じですが、研修で得たノウハウや東京のパワーで飛躍した力を、ぜひとも、地域にフィードバックしていただきたいと思います。そして地域の発展に多少なりともつながることを心から願っています。

 

◆来年度は、「芸術見本市」を東京都が主催する「アジア舞台芸術祭」と同時開催する予定です。ワールドカップの日韓共催に加え、日中国交正常化30周年などアジアへの関心が高まっている折から、芸術文化の国際的な交流の場としてご期待いただければと思います。9月11日の悲劇を待つまでもなく、世界を見渡せば、国境、人種、宗教の対立による紛争が絶えません。私たちが担っている「芸術文化による地域づくり」とは、国内の一地域にとどまることではなく、多様な価値観を認め合える「文化・芸術・スポーツ」の振興によって、人々が平和に暮らしていける世界をつくることでもあります。地域の方々とともに、改めて、芸術文化の意義について考えてみたいと思います。

(聞き手:坪池栄子)

 

●遠藤安彦(えんどう・やすひこ)
自治省事務次官を経て、1998年2月から財団法人地域創造理事長。FIFAワールドカップ日本組織委員会副会長兼事務総長。超過密スケジュールをこなす理事長のストレス解消法は、何と「横山やすし・西川きよし」のビデオ。「もう10巻全部見たよ」と、満面の笑みでした。

 

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