北海道・東北
●山形県米沢市
伝国の杜 置賜文化ホール
〒992-0052 米沢市丸の内1-2-1
Tel. 0238-26-2666 村野隆男
◎9月29日オープン
米沢市の中心部、上杉神社隣接地に整備された多目的ホール。敷地内には米沢市上杉博物館も併設。能楽が盛んなことから可動式の本格的な能舞台もしつらえた。空気浮上式能舞台で、使用しないときは、ホール脇のエントランスで来館者を迎える。ホールでは伝統芸能や室内楽などの自主事業を実施するほか、「子供のための狂言教室」を企画するなど芸術普及活動にも力を入れる。
[オープニング事業]柿落とし公演「金剛流」「観世流」能
[施設概要]ホール(通常500席、能舞台設置時552席)、練習室(4室)、会議室(3室)
[設置者]山形県
[管理運営者]米沢市
[事業運営者]財団法人米沢上杉文化振興財団
[設計者]関・空間設計
●岩城宏之率いるアンサンブル金沢の本拠地~石川県立音楽堂
◎洋・邦のクラシックホールが合体
9月14日、JR金沢駅前に「石川県立音楽堂(以下、音楽堂)」がオープンした。この音楽堂は、旧国鉄操車場跡地に、10年以上にわたり石川県を拠点に活動してきた日本初の公設室内オーケストラ「オーケストラ・アンサンブル金沢」(*1)の練習場と発表の場として建設されたものだ。
この施設の最大の特徴となっているのが、アンサンブル金沢の拠点となるパイプオルガンを備えたシューボックス型の「コンサートホール」に併せて、回り舞台や花道のある伝統芸能の殿堂「邦楽ホール」が設けられているところ。石川県は藩政時代から培われた伝統芸能の土壌がある芸どころで、今も盛んに日舞や邦楽が行われている。こうした愛好家から発表の場をとの要望があり、洋・邦のクラシックホールが一体となった全国でも珍しい音楽堂として結実した。
ちなみに「邦楽ホール」は、金沢箔や輪島漆など石川県の伝統工芸が随所にちりばめられた内装で、歌舞伎小屋をイメージし提灯の下がったホール内は伝統芸能の殿堂と呼ぶにふさわしい佇まいとなっている。「至芸つどう」と題された柿落としでは、舞踊の西川扇藏や長唄の杵屋喜三郎など人間国宝をはじめとする邦楽・邦舞界の至宝が揃い、目の肥えた観客を前にその芸を披露した。
◎オーケストラ・アンサンブル金沢の拠点
音楽堂の運営を行うのが、アンサンブル金沢を専属楽団として抱え、運営を行ってきた「石川県音楽振興事業団(以下、事業団)」である。1988年、石川県と金沢市は共同で事業団を設立し、指揮者の岩城宏之を音楽監督に招いて、アンサンブル金沢の活動をスタート。以来、事業団では、県下全域で年間20本(平成13年度)のアンサンブル金沢定期公演を中心に県外・海外でも定期的に公演を行うほか、学校や福祉施設などでのアウトリーチ活動を積極的に展開してきた(10周年には2年かけて全市町村で無料コンサートを実施)。
音楽堂の運営にあたっては、アンサンブル金沢の音楽監督でもある岩城宏之を芸術総監督に迎え、洋楽監督の武田明倫と邦楽監督の高橋秀雄のもと、コンサートホールとオーケストラを運営する「洋楽部」、邦楽ホールを運営する「邦楽部」が自主事業の企画などを行っていく。
「音楽堂でのアンサンブル金沢の活動は、月2回の定期公演、月1回の室内楽コンサート(邦楽ホール)の他、年100日は午前中を中心にここで稽古を行う予定です。コンサートホールの自主事業(月1回)では、フルオーケストラやアンサンブル金沢に刺激になるような海外の室内管弦楽団の招聘の他、一般の方にホールに足を運んでもらえるようなポピュラーなコンサートも考えています」(洋楽部長・山田正幸氏)。
また、貸し館にも積極的に対応できる体制になっており、オーケストラを運営してきた事業団がどのようなホール運営を実現するか、その手腕が試されるところだ。
(*1)オーケストラ・アンサンブル金沢
フルオーケストラのおよそ半分の人数で編成される室内オーケストラ。音楽監督は設立当時から一貫して岩城宏之。40名の団員は世界中から公募し、四分の一を外国人演奏家が占める。一部を除き、楽団員は事業団の所属。
●石川県立音楽堂
[オープン日]9月14日
[所在地]〒920-0856 石川県金沢市昭和町20-1
Tel. 076-232-8111
[設置者]石川県
[運営者]財団法人石川県音楽文化振興事業団
[設計者]芦原建築設計研究所
[施設概要]コンサートホール(1560席)、邦楽ホール(720席)、交流ホール(450m2)、練習室(7室)、音楽資料室
[オープニング事業]柿落とし公演(オーケストラ・アンサンブル金沢ほか)、邦楽邦舞至芸つどう