一般社団法人 地域創造

「ステージクラフト~舞台技術ワークショップ~」開催

本番の舞台で実践経験、緊張感あふれる舞台技術ワークショップ

 財団法人地域創造では、平成9年度から財団法人埼玉県芸術文化振興財団(彩の国さいたま芸術劇場)との共催で「ステージクラフト~舞台技術ワークショップ」を実施してきました。この事業は、財団創立以来、力を入れて取り組んできたホール職員の研修・交流事業「ステージラボ」の舞台技術版にあたるものです。

 ステージクラフトの最大の特徴は、実際に公演される舞台に裏方として参加するかたちで、「音響」「照明」「舞台」の研修を行うところにあります。本年度は、11月5日から彩の国さいたま芸術劇場で公演されるボーボーズ作・竹内銃一郎演出『21世紀グリム2. ~あの川を渡ろう~』に合わせて研修が企画されています。今回は、ステージクラフトの趣旨や本年度の取り組み内容について、プロデューサーの津村卓氏、演出家の竹内銃一郎氏、財団法人埼玉県芸術文化振興財団事業部舞台技術課主査の白神久吉氏にお話を伺いました。

 

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テクニカル・トレーニング
(音響・舞台・照明チェックの模様)

───ステージクラフトを始めた経緯は?

 津村 地域創造では人材の育成を事業の重要な柱として考えています。ホール職員の舞台技術研修の必要性も認識していましたが、優秀な技術職員がスタッフとして常駐していて、プロデュース公演を行っているホールの協力がないと実施が難しいということで検討課題になっていました。1997年に彩の国さいたま芸術劇場(以下、劇場)から協力の申し出があり、「ステージクラフト」がスタートしました。

 白神 劇場では舞台技術課の職員の研修を目的として、開館当時から技術スタッフだけで作品をつくって上演する試みが行われ、地元のアマチュア劇団にも協力していただいて内部研修会を続けていました。3年目からせっかくなのでこうした研修の機会を他の公共ホールの職員の方にも提供できれば、ということで地域創造との共催事業に発展したわけです。

 津村 「ステージクラフト」を立ち上げるにあたっては、ホールの技術職員だけを対象にした方がいいのでは、といった議論もありましたが、地域のホールでは少ない職員が事業も技術も掛け持ちでやっているのが現状です。それで、事業など一般の担当者も含め、舞台技術の経験年数が0年から5年までの職員を対象にすることにしました。

 

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セクション別ミーティング

───ステージクラフトの内容は?

 津村 コースは「音響」「照明」「舞台」の3つで合わせて30名を募集しています。本物の公演の裏方を体験しながら舞台技術の基礎を学ぶというのが基本的な考え方で、指導者(インストラクター)はその公演の演出家、音響・照明・美術プランナーと劇場の技術スタッフです。

 白神 どんなカリキュラムにすればいいのか、最初の頃は試行錯誤でした。2日ぐらい講義をしていた時期もあるのですが、参加者の実技への要望が強く、今はほとんど実習だけになっています。

 

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『21世紀グリム1.
~へんてこな森があった~』の本番

───具体的なカリキュラムは?

 白神 僕ら劇場の技術スタッフ(演出家と舞台美術は外部プランナー)が参加してつくった作品の一般公演が終わった翌日から、研修はスタートします。演出家やプランナーにその作品についての解説を受けてから、コースに分かれて、基礎技術の研修を行います。後は、本物の舞台を使って仕込み実習、稽古、A・B班に分かれてのテクニカルリハーサルをやります。最終日に研修生のオペレーションで一般公演と同じキャストでお客さん(研修生や関係者)を入れた本番同様の試演会を班別に上演します。

 

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大道具仕込み

───今回の作品は?

 津村 平成11年度の『ハロー・グッバイ』から劇場がプロデュースしている竹内銃一郎さん(劇作家・演出家)の作品に参加させていただいています。竹内さんは、高校生のオーディションで芝居をつくるなどプロの演劇人として素人を生かすというか、育てるのが大変うまい方です。今回は、昨年に引き続き、竹内さんの戯曲私塾のメンバー「ボーボーズ」がグリム童話をテーマに書いたオムニバス作品『21世紀グリム2. ~あの川を渡ろう~』で研修を行います。

 白神 昨年は「森」がテーマで舞台班は立葵(たちあおい)の花をつくったりしましたが、今年のテーマは「川」。舞台上に本水の川をつくる予定ですので、なかなか体験できない研修になると思います。こうやって研修で一緒につくった作品が参加者のホールでも公演できるようになると理想的なのですが……。
 津村 舞台技術者同士の交流も生まれ、ネットワークができていると聞きます。本当にそうなるといいですね。

 

●竹内銃一郎コメント

 「ボーボーズは一昨年の1月に劇作をやりたい人を公募して自宅で始めた。テーマを出して、書いてもらって、みんなで話し合うというのを隔週で1年続けた。60人ぐらい応募があった中から作風の異なる9人を選んだが、途中で脱落し、今残っているのは5人(22~29歳)。以前からグリム童話を競作して1本の芝居にできないかと考えていて、彩の国さいたま芸術劇場のプロデュースで実現できることになり、ボーボーズと僕で書くことにした。できれば数年は続けたいと思っている。ステージクラフトについては、こういう場がないと、技術スタッフが他のホールの人を教える機会はない。自分の私塾も同じだが、人に教えることは自分の仕事を相対化するとてもいい機会になる。それと芝居をつくる過程につき合うことで、現場のつくり方はもう少ししんどいものだというのがわかるだけでも、ホール職員としていい経験になるのではないか」

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●「ステージクラフト~舞台技術ワークショップ~」に関する問い合わせ

地域創造芸術環境部 齋藤・山口・坂田
Tel.03-5573-4067

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