●常務理事が代わりました
「6月に財団の常務理事に着任し、ステージラボ仙台セッションで初めて財団の事業に参加しました。邦楽やダンスのワークショップなどを見学しましたが、講師と受講生の距離が近くて、想像していた以上に濃密な研修で驚きました。こういう実践参加型の体験は、参加者がたとえ畑違いでも具体的な印象が持てるので、何かの時にきっと役に立つのではないかと感じました。
私は1971年に自治省に入省してから、福井県、和歌山市、広島県、松山市、福岡県などで地域づくりの現場に携わってまいりました。ちょうど、各地で公立文化施設が建設された時期でもあり、財政などの総合的な立場で、いくつかの文化施設建設に関わることになりました。
改めて思い返してみますと、当初、行政が果たしていたのは“基盤が整備されていないので施設をつくりたい、つくるんだったら可能な限り立派な施設にしたい”といったハードづくりについての責任だったように思います。その頃もスタッフの確保や運営方法などについての問題意識はあったのですが、専門外なので身近な議論の中からノウハウが出てこないもどかしさがありました。
“3バケ”という言葉があるのですが、これは文化化、情報化、国際化の3つの“化”を合わせたもので、新しい地方自治の課題を冗談めかして表した言葉です。当時、こうした新しい分野に自治体が積極的に取り組むようになり、そこでも“自分たちで考え、自分たちで実行する”という、今の地域づくりに繋がる流れが生まれてきました。
併わせて、施設づくりにおいても何を目的とするかを意識する時代に変わっていったように思います。例えば、松山市総合コミュニティセンターは市民ができるだけ多く集う松山市の核として考えられた複合施設ですし、アクロス福岡はアジアの交流拠点としての福岡を意識してつくられたものです。
こうした取り組みを通して見えてくるのは、多様性のある地域の姿です。これからの時代は、地域同士が交流することでこうした多様性をお互いに発見していくような、そんな取り組みが求められているように思います。地域創造の事業が取り持つ縁で、そうした交流のためのネットワークがつくれれば幸いです」
◎牧野清文
1946年生まれ。東大法学部卒、71年自治省入省。
2001年6月より地域創造常務理事。
学生時代は航空部でグライダーを飛ばしていたそうです。空から陸を眺める快感が忘れられず、今でも飛行機は窓側の席とのこと。