一般社団法人 地域創造

公共ホール音楽活性化事業

「全体研修会」で事業参加ホールをサポート

 平成13年度事業のスタートを飾るのが、5月29日から31日まですみだトリフォニーホールで開催される公共ホール音楽活性化事業(以下、音活)の「全体研修会」です。

 これは、本年度の参加ホール20館の担当者と事業をサポートするコーディネーター、および音活に協力する演奏家が一堂に会して行われる“音活版ステージラボ”(右表参照)。2日目の「公開プレゼンテーション」は、ホール担当者が演奏家を選ぶために行われるデモンストレーション演奏(登録アーティスト10名と1団体による15分ずつの演奏)を一般公開するもので、聴き比べができる面白い試みとしても注目されています。

こうした音活の仕組み全体について、チーフコーディネーターの児玉真さんに解説していただきました。

 

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小学校での出前コンサート
(宮城県大河原町/12年度)

 「公共ホール音楽活性化事業」は、若い演奏家を地域に派遣し、アーティストと公共ホール職員が知恵を出しあってコンサートや地域交流プログラムを考えるプロジェクトで、音楽による地域づくりと聴衆の育成、およびホール職員の人材育成を図る欲張りな事業です。

 前年の9月に参加ホールを募集。全体研修会の公開プレゼンテーションで地域に招く演奏家を選考した後、コーディネーターのサポートを受けながら、各ホール担当者が演奏家との具体的な交渉や地域内の調整を行い、プログラムの企画立案から実際の事業実施までを実践します。

 

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小学校での出前ピアノワークショップ
(兵庫県和田山町/11年度)

─全体研修会の趣旨と内容は?

 音活では、ホールから外に出かけて実施する地域交流プログラムなど、これまで経験したことのない取り組みが求められます。こうした趣旨を説明し、何をやればいいかわからないという担当者に考える機会をもってもらう目的で、全体研修会を開いています。

 研修会の内容は、(1)趣旨説明、(2)これまでに実施されてきた音活の事例紹介、(3)アーティストとの付き合い方講座、(4)登録アーティストのプレゼンテーション演奏と交流会、(5)企画づくりワークショップの5つです。

 特に、地域交流プログラムでは、地域の事情と演奏家のできることをすり合わせるなど、演奏家との直接コミュニケーションが不可欠となります。マネージャーやプロモーターと交渉したことはあっても、演奏家と付き合いがない人がほとんどのため、演奏を聴いて、直接彼らと話をする機会をつくりました。企画に協力してくれるプロのアーティストを自分の目で選ぶ経験は、みんなこれが初めてだと思います。

 

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小学校での出前コンサート
(岡山県真備町/12年度)

─登録アーティストの選考方法は?

 日本クラシック音楽事業協会の協力により隔年で全国公募のオーディションを実施しています。テープ選考の合格者約20名を対象に、実際の演奏による2次審査を行います。審査員は、音活のコーディネーター、地域の公共ホール職員、マネージャー、クラシック音楽番組のプロデューサー、評論家、指揮者ら計7名です(平成12-13年度)。審査では、演奏の実力に加え、地域交流プログラムに対する意欲やコミュニケーション能力などがポイントになります。

 オーディションに合格した登録アーティストには、客前での話し方やプログラムのつくり方など、ステージ上での心得を指導する研修が行われます。大切なことから話す、センテンスは短く、といった基本的な内容ですが、演奏家がこうしたステージングの基礎を学ぶ機会は皆無で、大変喜ばれています。

 

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水楽器づくりワークショップ
(島根県川本町/12年度)

─音活の成果は?

 昨年までで計37館がこの事業に参加しました。事業がスタートして4年目になり、コーディネーターを含めて手探りだった当初に比べ、さすがにみんなアーティストとの付き合い方がうまくなってきたと思います。どのホールの職員も自分の仕事に自信がもててきているのではないでしょうか。

 特に、音活後も継続して地域交流プログラムを行っているところでは、町民や学校など地域の人々の公共ホールを見る目が明らかに変わってきていると言います。
 例えば、音活で議会の理解が得られるようになったという福岡県城島町の城島町総合文化センターでは、2年目から町の独自予算で小学4年生全クラスに出前コンサートを続けています。また、合唱指導で声楽家の沢崎恵美さんとの交流を深めている北海道新冠町のレ・コード館では、町民オペレッタにチャレンジしています。

 他のホールとネットワークして地域交流プログラムや登録アーティストのジョイントコンサートを次々に企画している兵庫県和田山町の和田山町文化会館ジュピターホール、「クラシックのエントランス」という年4回のクラシック音楽入門シリーズを立ち上げた富山県黒部市の黒部市国際文化センター(コラーレ)など。個人的な意見ですが、こうした取り組みを見るにつけ、1年で結論が出る事業ではないだけに、数年かけてステップアップできる仕組みが必要だと感じています。

 地域で演奏家が暮らせるようにならなければ、本当の意味での問題解決にはならない、というのが僕の基本的な考え方です。そういう意味で、音活は、地域と演奏家がどれだけ関係を深めていけるかのモデルづくりでもあると思っています。

 

日程
時間 内容・講師
5月29日 13:00 オリエンテーション
13:15 ゼミ(1)公共ホール音楽活性化事業の概要と進め方
 児玉真
14:45 ゼミ(2)アウトリーチと公共ホール
 吉本光宏
16:00 ゼミ(3)12年度の事業より~色々なアクティビティ
 箕口一美、小林史真(登録アーティスト)、杉本政輝(悠邑ふるさと会館)
17:30 ゼミ(4)12年度の事業より~出前コンサートの実例
 能祖将夫、白石光隆(登録アーティスト)、水戸雅彦(えずこホール)
30日 10:00 ゼミ(5)マネージャー/アーティストからのアドバイス
 新井汎(サウンドギャラリー代表取締役)、百瀬力(共同組合音楽芸術家協会代表)、
 山崎祐介(平成10-11年度登録アーティスト)、桧森隆(日本クラシック音楽事業協
 会地域部会長)
13:00 ゼミ(6)地元の財産を考える~アクティビティの可能性
 各コーディネーター
15:00 登録アーティスト公開プレゼンテーション
19:00 演奏家とホール職員の交流会
31日 10:00 ゼミ(7)グループ別企画検討
 各コーディネーター
14:30 ゼミ(8)アイデア発表
 進行:児玉
16:00 まとめ

●平成13年度コーディネーター/アドバイザー

児玉真(音楽プロデューサー、第一生命ホール オープニングプロジェクトアドバイザー)、箕口一美(音楽プロデューサー、第一生命ホール オープニングプロジェクトプロデューサー)、能祖将夫(青山劇場・青山円形劇場プロデューサー)、楠瀬寿賀子(津田ホールプロデューサー、びわ湖ホールプロデューサー)、鉾谷かおり(音楽プロデューサー)、津村卓(地域創造チーフプロデューサー)、宮地俊江(地域創造ディレクター)、吉本光宏(ニッセイ基礎研究所主任研究員)

 

●平成12-13年度登録アーティスト

青盛のぼる(ソプラノ)、村上敏明(テノール)、黒田晋也(テノール)、小林史真(クロマチックハーモニカ)、丸山勉(ホルン)、長谷部一郎(チェロ)、大森潤子(ヴァイオリン)、田中靖人(サクソフォン)、白石光隆(ピアノ)、三上徹(ピアノ)、トウキョウ・ウィンズ(木管5重奏)

※8月には平成14-15年登録アーティストのオーディション募集を行う予定です。詳しくは上記音活担当までお問い合わせください。

 

●公共ホール音楽活性化事業 平成13年度開催地

岩出山文化会館スコーレハウス(宮城県)、矢島町コミュニティセンター(秋田県)、ひたちなか市文化会館(茨城県)、田原コミュニティプラザ(栃木県)、児玉町総合文化会館セルディ(埼玉県)、富士見市立鶴瀬コミュニティセンター(埼玉県)、八潮市民会館(埼玉県)、茅ヶ崎市民文化会館(神奈川県)、入善コスモホール(富山県)、塩尻市文化会館レザンホール(長野県)、穂積町総合文化センター(岐阜県)、岐阜市文化センター(岐阜県)、大東町文化会館(静岡県)、大和高田市文化会館(奈良県)、わくわく倶楽部中山町創造館(鳥取県)、ふれあいホールみと(島根県)、神辺町文化会館(広島県)、鏡町文化センター(熊本県)、中津江村民ホール(大分県)

※会場は予定。

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