一般社団法人 地域創造

公共ホール演劇製作ネットワーク事業報告

平成12年度公共ホール演劇製作ネットワーク事業報告

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『サド侯爵夫人』(静岡芸術劇場)

 財団法人地域創造では、公立文化施設が単独で実施することの難しい事業に共同で取り組むネットワーク事業を推進しています。その中のひとつとして、平成12年度から複数の公共ホールが共同で演劇製作を行う「公共ホール演劇製作ネットワーク事業」(昨年度はモデル事業を実施)をスタート、7館の参加により三島由紀夫作『サド侯爵夫人』の共同製作に取り組みました。

 今回は平成12年度事業の模様を振り返るとともに、平行して進んでいる平成13年度事業についてその進捗状況をご紹介します。

 

●平成12年度事業の経緯と反響

 

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積雪2メートルの利賀公演
(富山県利賀芸術公園)

 「演劇製作ネットワーク事業」の特徴のひとつは、事業への参加を希望する公共ホールが集まり、作品、スタッフ、キャスト、公演スケジュール、経費負担等について白紙の状態から検討しているところにあります。平成12年度の事業の流れは別表の通りですが、99年8月には事業への参加を希望する全国17団体の方々にお集まりいただき、3団体から企画プレゼンテーションをしていただきました。

 その中から「日本には優れた戯曲があるのに上演される機会がほとんどない。こうした作品をプロデュースするのが公共ホールの共同製作の意義だ」というコンセプトで企画提案を行った財団法人静岡県舞台芸術センター(静岡芸術劇場)の『サド侯爵夫人』が選ばれました。

 公演後に実施したアンケートの途中集計(2館分)によると、作者と作品を観劇の動機としている人が47%、1年に3回以上演劇を見る人が53%(内5回以上が29%)に上っていました。

 簡単に結論づけることはできませんが、演劇をよく見る層の人たちにオリジナリティのある名作戯曲の公演が待望されていたということなのかもしれません。

 

●関連事業は仕込み公開とワークショップ

 

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夏木マリ氏のワークショップ
(熊本県立劇場)

 「演劇製作ネットワーク事業」のもうひとつの特徴が、各地域が地元のニーズに合わせて企画する関連事業の数々です。今回は、上演館が制作に参加しているからこそ可能になる「舞台美術の仕込み公開」が人気企画になりました。関連事業のひとつ、2月14日に行われた熊本県立劇場の「夏木マリ・ワークショプ」「原田一樹・朝倉摂シンポジウム」の模様をご紹介しましょう。

 夏木マリさんのワークショップでは、18歳から68歳までの市民17名が約2時間にわたって直接指導を受けました。ワークショップは、「燃える森の風景」「デモの中にいるあなた」など言葉によってイメージをコントロールするところからスタート。面白かったのは「ゴミ拾いを演技する」「朝食べたものを台詞にする」という夏木さん考案のエチュードでした。「ゴミ拾いを演技する」という課題に、参加者は汚いものに触るふりをしたり、箒で掃く真似やゴミ箱を抱えた振りをしたり…。

 「それはゴミやゴミを拾うということを説明しているだけ。ゴミという情報は与えられているのだから、拾うということに集中して」と夏木さん。表現することの楽しさを味わう開放的なワークショップとは異なる、プロの俳優の厳しさに裏打ちされたエチュードでした。日常的な動きやしゃべり方とすべてを意識的にコントロールしている俳優の演技の違いが実感できたのではないでしょうか。

 また、原田さん、朝倉さんのシンポジウムは、図面片手に実際の『サド侯爵夫人』の舞台セットを見ながら行われました。「三島さんの作品には装飾の裏側に廃墟があるような二重性がある。それを神殿のようなセットで表したかった」と言う原田さんに対し、朝倉さんは「演出家には言ってないけど、舞台の真ん中に巨大な地球儀があってそれが最後に崩れるというアイデアもあったのよ」と応じるなど、ひとつの作品を一緒につくりだしてきたもの同士の気のおけない会話が続きました。 こうした関連事業はいずれも共同製作だからこそ可能になるものが多く、これからも「演劇製作ネットワーク事業」の目玉になるのではないでしょうか。

 

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原田一樹、朝倉摂両氏による
シンポジウム
(熊本県立劇場)

 

●平成12年度公共ホール演劇製作ネットワーク事業

 

『サド侯爵夫人』(作/三島由紀夫、総合プロデューサー・照明/鈴木忠志、

演出/原田一樹、装置/朝倉摂、衣裳/谷原義雄、音楽・出演/高田みどり、

出演/夏木マリ・美加理・久保庭尚子・木全晶子・平井久美子、

共同製作参加ホール/静岡芸術劇場(静岡県)・つくばカピオホール(茨城県)

・ピッコロシアター(兵庫県)・富山県利賀芸術公園(富山県)

・熊本県立劇場(熊本県)・中町文化会館ベルディーホール(兵庫県)

・栗東芸術文化会館さきら(滋賀県)

 

●平成13年度事業は『若草物語』

 

 平成13年度事業については、2000年7月の企画制作準備会議において共同製作作品の選定が終わり、参加団体がほぼ決まってきました。共同製作作品は、財団法人札幌市芸術文化財団が企画提案したオルコット原作『若草物語』で、北海道を舞台に翻案して松本修演出で制作する計画です。 今回の特徴は、上演ホールをもたない財団と共同で制作する点です。参加団体のひとつ、世田谷パブリックシアターが稽古場協力を行うなど、参加団体の資源、ノウハウを出し合った新しい体制での制作となります。 今回の共同製作に参加することが決まった人口1万2000人、岡山県早島町「ゆるびの舎」の船越長平さん(館長補佐)は、「開館2年目でこれまで音楽を中心にやってきました。演劇製作はこの事業が初めてです。全国のホールの方とお付き合いでき、演劇についてスタッフが勉強できるので参加しました。『若草物語』は四人姉妹の話なので関連事業で四人姉妹でも募集しようかなと今から企画をつくるのを楽しみにしています」とのこと。 すでに平成14年度事業の参加団体の公募もはじまっています。「演劇製作ネットワーク事業」に興味をお持ちの方はぜひ地域創造担当者までご連絡ください。

 

●平成14年度公共ホール演劇製作ネットワーク事業「第1回企画制作準備会議」参加団体募集中

[日時]
2001年4月25日(水)13:30~
[会場]
東京都内
※開催会場が決まり次第参加申込ホールに通知します。
[申込方法]
地域創造にお申し出ください。所定の企画制作準備会議参加申込書をお送りしますので、
ご記入の上、地域創造までお送りください。
[申込締切]
2001年4月20日(金)

 

●問い合わせ

財団法人地域創造芸術環境部 公共ホール演劇製作ネットワーク事業担当 内田大輔・細野毅
Tel. 03-5573-4066 Fax. 03-5573-4060

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