一般社団法人 地域創造

アーツセンター情報

北陸・中部

 

●美濃加茂市

みのかも文化の森

〒505-0004 美濃加茂市蜂屋町上蜂屋3299-1 
Tel. 0574-28-8551 村瀬英彦

 

◎10月1日オープン 自然の森を生かした9ヘクタールの敷地内に、市民ミュージアムとさまざまな野外体験施設を設置した体験型総合博物館。“森”は4つのゾーン(自然観察の森/創造の森/遺跡の森/体験の森)に分かれていて、滞在創作活動ができるアトリエも整備されている。今後、年間を通 じて陶芸、美術、歴史や自然観察など多様な講座を開催し、博物館と教育センターの機能を併せ持つ新しい教育・文化活動の拠点を目指す。

 

[オープニング事業]野外劇「真夏の夜の夢」(10月1日)、「芸術と自然─若林奮・大久保英治・山口啓介」展(10月1日~29日)
[施設概要]企画展示室(260m2)、美術工芸展示室(150m2)、展示ホール(167m2)、常設展示室(452m2)、緑のホール(166m2)等
[設置・運営者]美濃加茂市
[設計者]株式会社日建設計

 

九州・沖縄

 

●福岡市

福岡市音楽・演劇練習場祇園分館(ぽんプラザホール)

〒812-0038 福岡市博多区祇園町8-3 
Tel. 092-262-5027 中川武人

 

◎9月1日オープン 福岡市博多区祇園町、キャナルシティ隣に新設されるポンプ場の4階に開館。ホールは、可動式座席と照明・音響設備を備え、108席、60席、平土間と使用目的に合わせ自由に設定可能な小ホール。音楽、演劇、ダンス、伝統芸能など舞台芸術の発表と練習に活用してもらう。オープニング事業は、小ホールならではの空間を生かしたラインナップ。

 

[オープニング事業]アルゼンチンのスーパートリオ「トダ・ラ・ムシカ」タンゴライブ(9月1日)、福岡ROCK PARADAISE 2000(9月2日)、上妻宏光津軽三味線ライブ(9月14日)ほか
[施設概要]ホール(108席)
[設置者]福岡市
[運営者]福岡市文化芸術振興財団
[設計者]日本工営株式会社

全国初の公設民営劇場 富良野演劇工場オープン

10月20日、北海道富良野市に演劇専用劇場「富良野演劇工場」がオープンする。NPO法人“ふらの演劇工房”が運営する国内初の公設民営劇場として話題の劇場だ。

 

◎演劇のソフト工場

富良野市は、作家・劇作家として著名な倉本聰氏と、同氏の主宰する「富良野塾」の拠点。設計にあたっては、「演劇のソフト工場に」という倉本氏の意見が反映され、大道具・衣裳製作室やリハーサルルームなど、創造のための空間・設備が充実した劇場が実現した。運営にあたる“ふらの演劇工房”は、富良野塾を応援する“ALの会”をもとに、演劇を通 じた公共的な事業に取り組む団体として発足したもの。1999年2月に国内初のNPO法人として認証を受け、同劇場の管理・運営を市から受託することになった。

 

◎演劇を核としたふるさとづくり

ふらの演劇工房では、劇場の管理運営のほか、倉本氏や富良野塾と連携しながら、“演劇を核としたふるさとづくり”をコンセプトにさまざまな独自事業を展開する方針だ。主な事業は、①富良野塾の定期公演をはじめとする鑑賞事業、②演劇学校(2001年4月開講)などの人材育成事業。さらに、障害者施設や老人福祉施設で入所者とともに公演をつくりあげ、演劇を通 して心と体の回復を図る“演劇リハビリテーション”事業も大きな柱の一つ。 これらの事業を担うのは、常勤スタッフ3名と登録ボランティア80名。「単なる観劇の場でなく、大人も子どもも、誰もが参加できる場にしたいですね」(ふらの演劇工房 篠田信子)。北の工場の“実験”に今後も注目が集まりそうだ。

●富良野演劇工場

〒076-0011 富良野市末広町20-7
Tel. 0167-22-3800
[オープニング事業]倉本聰作・演出 富良野塾公演『走る』(11月17日~12月2日)、講演と対談「幻夢一夜」(12月3日)ほか
[施設概要]ホール300席、リハーサルルーム、ワークショップルーム(大道具製作室)、ワードローブ(衣裳製作室)
[設置者]富良野市
[運営者]特定非営利活動法人ふらの演劇工房
[設計者]中原設計事務所

 

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革新的な公立文化施設運営の草分け、水戸芸術館が10周年

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1990年に開館した水戸芸術館は、それまで行政がやらないできた芸術文化施設としての“専門性”に真っ向からチャレンジし、評判になっている施設である。音楽・演劇・美術の専門施設を複合化した磯崎新氏の設計、各専門ジャンルに対応した芸術総監督の起用と専門学芸員の導入、市総予算の1%を管理運営費とする1%予算の確保、水戸室内管弦楽団などの専属楽団・専属劇団の編成、貸し館をせず自主事業のみのホール利用、コレクションを持たず現代美術の企画展とワークショップのみで運営される現代美術センターなど、他に類をみない運営方針を次々に打ち出した。あれから10年間。水戸芸術館はどのような歩みを辿っているのか、計画段階から関わっている三代目事務局長の大津良夫さんに総括していただいた。

●設立の経緯

「市制100周年記念事業という枠組みがあったので前例をみない内容にもかかわらず検討期間が短期間だった」というように、水戸芸術館は、中心市街地にあった五軒小学校の跡地に市制100周年記念事業として計画された。小学校が移転した1985年から、横浜市の美観整備を指揮した都市文化行政のエキスパート、田村明氏を委員長に迎えた「五軒小学校跡地利用懇談会」を設けて本格的な検討を開始。その中で、当時の市長、故・佐川一信氏の戦略的文化都市(下水道や水環境の整備も含めて文化的な生活環境による都市づくり)の中核施設として位 置づけられ、水戸のシンボルになる芸術館の構想が持ち上がる。芸術総監督制などの運営体制は、後にその役割を担う吉田秀和(館長兼務)、鈴木忠志、中原佑介の3氏に設計者の磯崎新氏らを加えた「芸術館運営会議」(87年発足)で提言され、こうした専門家の意見は建物の実施設計においても随所に活かされたという。

 

●芸術総監督制度から企画運営委員会へ

水戸芸術館では運営基本理念として、①新しい芸術文化を創造する、②国際的な視野に立って芸術文化の交流を行う、③楽しみながら考える、④市民の芸術文化活動の拠点となる、⑤都市の活性化に寄与する、という5つの柱を掲げている。①②の実現を図るため、芸術面 での責任者として設けられたのが日本で初めての「芸術総監督」である。各部門の芸術総監督は部門内の人事権を有するほか、館長と共に年1回の「芸術委員会」で館全体の方向性を話し合い、それに則って部門ごとに1億円~3億円をかけて年間40~50本ほど実施される自主事業内容を決定していく。芸術総監督の元には事業の現場責任者として「芸術監督」が置かれ、専門職の学芸員と共に事業を遂行するが、「音楽、演劇については学芸員の資格制度もなく、どういう人材が必要なのかわからず、手探り状態でのスタートだった」という。

 

しかし、就任1年にして美術部門の中原佑介氏が辞任(以後空席)、96年には演劇部門の鈴木忠志氏が静岡県舞台芸術財団の設立に伴って辞任(以後空席)、音楽部門は92年に吉田氏から畑中良輔氏にバトンタッチされ現在に至っている。「音楽部門では、館長と兼務だったのと、吉田さんの自分の趣味に偏りたくないという意向もあり、当初から企画運営委員がいた。それに合わせて97年からは他の部門にも6名の委員で構成された企画運営委員会(年1回開催)を設けることになった。これからはこうした集団指導体制に移行していくと思う」。各委員が個別 にコンサートシリーズをもつ音楽部門、有識者的な役割の美術部門など、企画運営委員会の内実は部門の事情により異なる。

 

●特徴的な自主事業と専属楽団・専属劇団

水戸芸術館には情報発信力が強く、継続的に取り組まれている独自の自主企画事業がある。1つが設立から10年間、現代美術に特化して展開してきた現代美術センターの一連の企画展とワークショップである。98年にスタートさせた講座と鑑賞を組み合わせた市民講座や他の美術館との共同企画による「なぜ、これがアートなの?」展など、近年は教育普及的な取り組みにも力を入れている。

 

2つめが吉田館長総監督、小澤征爾顧問という水戸室内管弦楽団(38名)の活動である。毎年、春秋に2プログラムずつ発表する定期演奏会(メンバーは1週間前から水戸に滞在して稽古)を行い、98年には初のヨーロッパ公演を実現(2001年にも予定)。「水戸のオーケストラは水戸で、という方針だったが、要望が多いため96年からは館外公演も行っている。ここのコンサートホールは収容人員680席と少ない。これは水戸市のクラシックコンサートの動員力を元にはじきだした数字。おかげでどんなコンサートも8割以上集客している」。このほか、ATMアンサンブルと99年に編成したミト・デラルコが年1回の定期公演を行っている。

 

また、演劇部門には専属劇団のACM劇団がある。「当初はプロの俳優とも契約していたが、現在は若い俳優とダンサーなど9名が所属し、百人劇場シリーズとして年3~4本の本公演を行っている。公演活動のほかに5月に開講して翌年3月に卒業公演を行う市民演劇学校、市民舞踊学校、こども演劇アカデミーの講師なども務め、年間を通 じて劇場で活動を行っている」。

 

●芸術文化振興から市民参加・地域活性化へ

「開館当時は基本理念の①②に力を入れ、水戸と言えば水戸芸術館がイメージされるほどになった。関東近県の都市がテレビで紹介されてもどこだかわからないが、水戸は芸術館のタワーが映るとすぐわかる。都市にとってこういう特徴があるのは大切なことだと思う。開館当時は、自主事業だけで運営することに追われていたが、5~6年経って自分たちの仕事がわかってきてからは地元の人たちと仕事ができるようになってきた。地元商店街の方にも目の前の芸術館を活用したいというニーズが生まれ、商店街との共催によるクラシック初心者向けマイタウンコンサートや芸術館をイルミネーションで飾るスターライトファンタジー事業などもスタート。広場で第九を唱おうと公募したら300人も応募があった。市街地の空洞化などの問題も起こっており、これからは③④⑤の取り組みで、芸術館が地域にどのような寄与ができるか考える時期にきているように思う」。

 

市総予算が増えているため管理運営費の割合は0.72%に減ったが、市から館への支出は開館当時から変わらず9億から10億円。顧客は4割が水戸市内、4割がそれ以外の茨城県内。10年間の総来場者数は約180万人。年間の自主事業プログラムを見てみると現代美術センターといくつかのシンボリックな事業を除くと、驚くほど多彩 なプログラムが並んでいる。10年目の水戸芸術館の実像は、案外こちらのほうなのかもしれない。 (坪池栄子)

 

●1999年度支出実績(単位:千円)

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水戸芸術館 組織図

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●水戸芸術館概要

[開館] 1990年3月22日 
[所在地] 〒310-0063 茨城県水戸市五軒町1-6-8 
[管理運営主体] 財団法人水戸市芸術振興財団 
[設計] 磯崎新アトリエ 
[総工費(設備含む)] 10,355,842千円 
[施設概要] 敷地面積(13,941m2)、建築面積(6,874m2)、延床面積(22,432m2)、コンサートホール(620~680席)、劇場(472~636席)、美術展示室(9室・壁面 長285m)、会議場(78席)、塔(高さ100m)、レストラン、ミュージアムショップ、広場、駐車場

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