一般社団法人 地域創造

特集「2000年夏のフェスティバル」

今年も恒例「夏のフェスティバル特集号」の時期がやってきました。話題の大型企画から、本格的な取り組みが増えている子ども向けの催しまで。一挙にご紹介します。

 

●企画色豊かな子ども事業

 今年の特徴は、これまでのような関連企画的な取り組みではなく、子どもたちのためのオリジナル企画が増えているということです。例えば、秋田県立近代美術館で開催される「親子で遊ぶ~木とのふれあいワールド展」。これは昨年度、岡崎世界子ども美術館が静岡大学の協力を得て企画したもので、触って遊べる木の玩具、彫刻をはじめ、大人気の“木の砂場”など五感を通じて木に多角的にアプローチしてもらう催しです。好評のため今年春から全国10会場で巡回展が開催されていますが、公立の美術館が会場となるのは、秋田県立近代美術館が初めて。また、広島市現代美術館では「アートで遊ぼう・アートを学ぼう~美術の中の国語、算数、理科、社会・・・」と題し、“言葉の展覧会”のイチハラヒロコを「国語」、時間がテーマの宮島達男を「算数」のコーナーで紹介するなど、子どもたちにとって身近な切り口で現代美術を提案する試みが行われます。
 クラシック音楽もこれまでのような親子向けの曲目を並べたファミリーコンサートではなく、ホールを動物園、楽器を動物に見立てた「楽器の動物園」(長岡リリックホール、コラム10頁参照)など、オリジナル企画に取り組むところが増えています。公立文化施設が本格的に子どもたちに開放されてきた証なのではないでしょうか。

 

●見逃せない大型イベント

  夏フェス情報常連組の中で注目されるのが、「第16回〈東京の夏〉音楽祭2000」です。この音楽祭は、アリオン音楽財団が日本初のテーマ型音楽祭としてスタートし、地域や国の文化をクローズアップしてきました。1995年以降はバレエをテーマにするなど、ジャンルをクロスオーバーさせる方向に企画をシフト。今回の内容はその極致といえるもので、テーマは“今世紀の最も発達したメディア-映画”です。映画で音楽を語るといっても、映画音楽のコンサートなどという生やさしいものではなく、日本未公開ものを含め、無声映画の生演奏付き上映が何本も並ぶという、映画祭では実現できないスケールになっています。
 ショスタコーヴィチの映画音楽第1作、ロシアの無声映画『新バビロン』をマーク・フィッツ=ジェラルド指揮、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏付きで上映するのをはじめ、ロシアでフィルムが発見された日本の無声喜劇映画『爆弾花嫁』を尺八の新曲演奏付き、ギタリストのビル・フリーゼルの新曲演奏付き、斎藤晴彦のトーク付きの3バージョンで上映。実験映画『アンダルシアの犬』4バージョン上映、最盛期のキリ・テ・カナワやプラシド・ドミンゴが出演している門外不出のパリ・オペラ座公演ビデオ連続上映などなど。意欲的なプログラムが目白押しです。

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  このほか、新規事業には、新聞紙上でも話題になっている「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」があります。これは、新潟県越後妻有の6市町村、762平方キロメートル全域を会場に、現代美術作家約140名がインスタレーションを展開するという一大プロジェクト(7頁コラム参照)。現代美術が過疎地にどのような刺激をもたらすのか。ぜひ現地で確かめていただければと思います。

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