一般社団法人 地域創造

石川県金沢市 金沢市現代美術館(仮 プレ・イベント

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 65日・24時間稼働、市民の自主管理という「金沢市民芸術村」で注目を集めた金沢市が、今度は美術館の運営で話題をさらうことになりそうだ。金沢市は、ご存知のように加賀百万石で栄えた城下町で、金沢城祉と兼六園を中心にして香林坊、片町、竪町などの繁華街が位置している。しかし、城祉内にあった金沢大学が校舎の老朽化を機に95年に移転、将来的にも県庁移転を抱え、また中心市街地の空洞化にも悩まされるなど、都心部の再編成が市の大きな課題になっていた。

 

 金沢市が現代アートに拘るのは、「新しい取り組みを付加していかなければ伝統文化も衰退する。その危機感があるからだ」と事務局長の丹羽勇氏は言う。こうした現代アート推進の波は、市立の金沢美術工芸大学にも及び、3年前に評論家の乾由明氏が学長に就任してからは、海外アーティストを招き学生と交流させる滞在制作事業を始めるなど、カリキュラムにも変化の兆しが見え始めている。

 

 会場で何人かにインタビューしたが、「豪華粗品 !!」展実行委員長、4年生の永田宙郷さんの話が面白かった。福岡県出身。刀鍛冶志望で、だからこそ現代アートに興味があるという。

 

 「僕ら美大生がゼーマン氏の話を聞くだけでいいのか、刺激を受けるだけでいいのかと疑問に思い、お互いが刺激を与え合うような関わり方をしようと実際に展覧会をつくることにした。学内の有志がゼロから話し合い、僕たちにとっても、ゼーマン氏にとっても、参加者にとってもプレゼントになることをやりたくて「豪華粗品」というタイトルにした。豪華な粗品って矛盾した言葉なのに自然に使っている。絶対に英語に訳せない。こんな風に100%伝わらないけど誤解が繋がって伝わるのが現代美術なんじゃないかという意味を込めて付けた。金沢に来て、45万人という人口規模が個人で動ける最大規模で何かやるにはちょうどいいと感じた。だからこそやりたいと思った時に市民芸術村みたいな開かれた空間があることが生きてくる。今度の現代美術館にもそういう意味で期待しているが、僕らがどれだけそこに潜入して共有できるかを問われていると思う」

 

 世田谷美術館や水戸芸術館で腕をならしていた学芸員がここに参加しているのも話題になっている。「気持ちのいい環境をつくりたい」という彼らと、永田さんのような若者たちが出会って何が始まるか・・この期待感こそがこれからの金沢を変えていく原動力になるのではと思った。

(坪池栄子)

 

●金沢市現代美術館(仮称) [開館予定]2003年度

[所在地]金沢市広坂1-2-30
[用地面積]26,987m2(芸術交流館部分を含んだ金沢大学付属学校跡地全体) [建物延床面積]約17,000m2
[特徴]1900年代以降のエポックとなった現代美術作品と1980年以降に制作された作品の収蔵を行うなど、現代美術色を鮮明に打ち出しているのに加え、現代美術と市民との交流を目指しているのが特徴。また、キュレーター、エデュケーター、エキシビジョンデザイナー、パブリックリレーション・オフィサーなどの専門職を置き、総合的な美術館運営を志す。

 

●プレ・イベント1999-2000 「日本美術の伝統とコンテンポラリーアート」(講師:高階秀爾)、ワークショップ「視聴覚交換マシン」(講師:八谷和彦)、「21世紀の美術館の変貌」(講師:ポール・シンメル)、「コンピュータ・ネットワークと人間の表現」(講師:藤幡正樹)、「情報社会におけるデザインの変遷について」(柏木博) ※本年度も映画上映会ほか4~5回のプレ・イベントを予定。詳しくは金沢市現代美術館建設事務局(Tel.076-220-2801)まで。

 

地域創造レター 今月のレポート
2000年6月号--No.62

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