講師 山名尚志(メディアプロデューサー)
日本でインターネットの商用接続(大学・研究機関以外の一般の企業、家庭への接続)が始まったのは1993年、たった6年前のことである。それが、昨年(98年)には、利用者数1,694万人。事業所普及率19.1%、世帯普及率11.0%にまでに急成長した(郵政省調べ)。世帯普及率が1割を突破するまでには、携帯電話でさえ、15年を要している。インターネット拡大のすさまじさがよくわかる。
普及が進むにつれ、ネット利用の姿も様変わりしてきた。とりあえず世界とつながっていることを体感してみる、とか、何でもいいから面白いページを探すといった「ウェブ・サーフィン」的な使い方をしていた時代はもう終わり、今や、ネットは、あくまでも「日常」であり、「実用の道具」になってきた。インターネットなしにどうやって仕事をしていたのかさっぱり思い出せない、というのがユーザーの素直な実感だろう。今回は、そうした「インターネット日常化の時代」におけるネット活用術について簡単に解説してみたい。
●情報を集める
ネットの普及によって最も変化したのは、やはり、情報収集の容易さだ。それも、当初の玉石混淆といった状況はかなり改善され、今では「公式の信頼性の高い」情報を手早く手に入れることができるようになっている。
まず、見ておくべきなのは、官公庁のホームページである。各種統計資料や白書のウェブ版、報道発表資料、そして助成事業のお知らせなど公式情報がほぼすべて掲載されているし、官報も、目次だけではあるが、リアルタイムで掲載されている。行政マンとしては、自治省、文化庁をはじめとした関連官庁のページ・チェックは欠かせない作業だろう。
次に業界団体や企業のページがある。芸団協、JASRAC、国際交流基金、日本オーケストラ連盟、音事協、そして各音楽出版社、梶本や神原などの音楽事務所、劇団等々。今やある程度の活動歴がある芸術・文化団体だったらホームページをもつのが普通になりつつあるし、芸団協や国際交流基金では、関連の芸術・文化団体の紹介リストをネット上に公開している。例えば音楽事務所だったら、マネジメントしている演奏家を調べ、招聘予定の海外オケのスケジュールを見た上で営業上の問い合わせをすることができるし、演劇だったら、劇団の営業窓口へのコンタクトだけではなく、舞台美術・舞台制作の企業のホームページにアクセスして見積依頼のメールを出したりすることも勿論可能だ。
業界の専門知識を調べるのにもインターネットは役に立つ。「UraKata」や「T's Project」などの舞台制作系の企業のページには、簡単な舞台用語事典がついており、地絣とか綱元とかいう謎のワードの正体を調べることができる。また、クラシック担当なら、一度、楽器工房のページを見ておくといいかもしれない。ピアノやバイオリンなどの楽器の歴史から修理の様子、適切な価格帯にいたるまで様々な情報が掲載されている。
ファンの立場で「ジャンルのいま」を感じたいのならば、クラシック、演劇、美術などなどの総合サイトやウェブマガジンを見てみるのがいいだろう。クラシック系でお薦めなのは、やはり、クラシカ。個人サイトだが充実度が凄い。業界のニュースを知りたい場合には、music.co.jpや音楽の友社のサイトにクラシック関連のニュース・コーナーがある。演劇は「えんげきのぺーじ」。小劇団中心、かつ、相変わらずカジュアルなイメージだが、演劇系の総合サイトとしては押しも押されぬ老舗。情報量が圧倒的である。美術系では大日本印刷が運営している「MUSEUM INFOMATION JAPAN」がお薦めだ。日本・世界への美術館へのリンクが完備しているし、ARTSCAPEというオンライン・マガジンのコーナーでは、美術評論家によるお薦め記事や展覧会情報が掲載されている。松下電器の「TOWN ART GALLERY」も、関西を焦点に合わせてなかなかの充実。若手アーティストのインタビューが豊富に掲載されている。
こうしたウェブサイトを探す入り口となるのが各種の検索サイト。大手ではyahooとgooの2つのサイトがあるが、yahooが「人間がサイトを選んでいる」のが売りのウェブサイトのリンク集であるのに対し、gooは、ロボットによって世界中のウェブ・ページの情報を自動的に集めてくるWWWデータ集と大きく性格が違う。お気に入りのウェブサイトを見つけたい時にはyahooを、ともかく情報を調べたい時にはgooを、といった使い分けが必要だ。
●サービスを使う
最近のネットが一番違ってきたのは、何と言っても、「実生活にそのまま役立つ」サービスを提供してくれることだ。
例えば出張に行くとしよう。まず交通手段。航空会社のサイトにいけば、ネットから簡単に予約が可能。JRは、まだ残念ながら予約はできないものの、時刻表と空席情報は調べられるので、画面を見ながらすぐに旅程が立てられる。次に宿泊施設。大手のホテルなら、大概サイトがあり、オンラインでの予約受付が可能だ。ホテル名がわからない場合には「社団法人全日本シティホテル連盟」のページが便利。加盟ホテルを地域毎、料金水準で検索し、かつ、空室状況を調べてその場で予約ができる。交通・宿泊込みのパックを利用したい時は、JTBや近畿日本ツーリストなどの旅行代理店のページへ。クレジット・カード登録が必要だが、一旦済ませてしまえば、ネット上ですべての手配が事前に可能になる。
現地に着いた後についてもさまざまな情報が手に入れられる。東芝の「駅前探検倶楽部」は、首都圏中心だが、東京に着いてからの細かな乗り換え情報や、目的地の駅周辺の飲食施設、地図、さらには天気までわかるという優れもの。モバイル機器を持っていたらアクセスしない手はない。さらに「ぴあ」のサイトにいけば、出張の日の夜のコンサート、芝居などのチケットもゲットできる。
もちろん、出張をしなくとも、便利なサービスはたくさんある。中でも最近利用が増えているのが書籍のオンライン・ショッピングだ。近場の本屋にいってもベストセラーや雑誌ばかり。業務に必要な書籍はまるで置いておらず、取り寄せても、何週間も待たされた揚げ句に品切れを宣告されたりする。この不便を一挙に解消してくれるのが、紀伊国屋や丸善、ヤマトなどが展開しているオンライン書店のサービス。送料がかかるので、まとめ買いをした方がお得だろう。
●コミュニケーションする
ネットをやっていて一番感動的なのは「インターネットがなかったら一生出会えなかっただろう」人と出会えることだ。プライベートはもちろん、それが仕事の関係につながっていくこともしばしば。ネットワークとは、何より「人と人とのつながり」であることを実感できる体験である。
こうした出会いの第一歩は、ネット上で、コミュニティ系のサービスを利用すること。一番気軽なのはホームページ上の掲示板だが、これはともすれば書き捨てになりがちで、安心して付き合える人を探すのは難しい。むしろ使い勝手がいいのは、会員制をとっているメーリング・リストやコミュニティ・サイト。メーリング・リストとは、簡単に言えばメールを会員全員に回送するシステムのことで、日本語のものだけでも万単位存在している。先ほどの検索サイトから調べ、多くの場合紹介のホームページがついているので、それを読んで興味があったらその場で参加。後はメールが送られてくるのを待つだけだ。一方、コミュニティ・サイトとは、掲示板やメーリング・リストに加え、チャット、さまざまな情報を蓄積しておけるライブラリなどの機能がセットになったもの。パソコン通信時代からの老舗のニフティや、インターネット専門のガーラ・フレンド、アットクラブなどがある。
ベテラン会員の発言を読んで学び、性格を知り、自分でも発言してみる。参加者によってはなかなか普通は手に入らないような貴重な情報、意見を聞くことができる。すべてはあなたの努力次第だ。
(財)地域創造
http://www.jafra.or.jp/
芸団協(加盟芸術団体、音楽著作権データベースへのリンクあり)
http://www.geidankyo.or.jp/
JASRAC
http://www.jasrac.or.jp/
国際交流基金
http://www.jpf.go.jp/
(社) 日本オーケストラ連盟
http://www.orchestra.or.jp/
(社) 日本音楽事業者協会 [JAME]
http://www.jame.or.jp/
CLASSICA
http://www.classicajapan.com/
音楽の友社(主だった音楽関係の機関、企業へのリンクあり)
http://www.ongakunotomo.co.jp/
music.co.jp内のclassic NEWS
http://www.music.co.jp/classicnews/
MUSEUM INFOMATION JAPAN(国内外の美術館へのリンクあり)
http://www.dnp.co.jp/artscape/index.html
yahoo
http://www.yahoo.co.jp/
JRサイバーステーション
http://www.jr.cyberstation.ne.jp/
日本交通公社
http://www.jtb.co.jp/
近畿日本ツーリスト
http://www.knt.co.jp/
紀伊国屋書店
http://www.kinokuniya.co.jp/
MARUZEN Internet Shopping
http://www.maruzen.co.jp/
クロネコヤマトのブックサービス
http://www.bookservice.co.jp/
ニフティ・サーブ
http://www.nifty.com/