一般社団法人 地域創造

アーツセンター情報

北陸・中部

 

●サンビーム日和ヶ丘(石川県田鶴浜町)

 

〒929-2104 鹿島郡田鶴浜町(たつるはままち)字垣吉へ部24
Tel. 0767-68-2277 [担当]中村宗幹
99年4月3日オープン
日和ヶ丘カルチャーパーク内に建てられた複合施設。既設のマルチメディアを備えた図書館にホールを増設。多目的ホールは、音楽、演劇、講演などに利用可能なプロセニアム形式。35ミリ映写機2台を設置し、映画館のない能登地域の住民に広く映画を鑑賞してもらう。今年度は、最新作4本、過去の名作10本を自主上映する予定。館内には近年公開作品のポスターが飾られ、今後の上映作品の希望を募るなど、地域密着型の運営を目指す。

 

[オープニング事業]落成式前夜祭・オーケストラ・アンサンブル金沢演奏会(4月2日)
[施設概要]多目的ホール(373席)、楽屋2、研修室2、OA学習室、ハイビジョンシアター
[設置・運営者]田鶴浜町
[設計者]浦建築研究所

 

●名古屋ボストン美術館(名古屋市)

 

〒460-0023 名古屋市中区金山町1-1-1
Tel. 052-684-0752 [担当]加藤泰博
99年4月17日オープン
金山総合駅南口に建設された複合施設「金山南ビル」内に設置の美術館(3~5階)。同館のほかホテル、名古屋都市センター、駐車場が入る。米国ボストン美術館の姉妹館として米館所蔵作品を専用展示。展覧会は常設展(5年間)と企画展(年2回)の構成で、ボストン美術館と共同して企画する。学芸員による作品紹介や展覧会関連のビデオ上映、講演会なども定期的に開催。運営は、地元経済界、愛知県、名古屋市が出資した財団があたり、寄付金など地域から広く協力を受けていく。

 

[オープニング事業]開館記念企画展「モネ、ルノワールと印象派の風景」(4月17日~9月26日)
[施設概要]常設展示室(522m2)、企画展示室(600m2)、日本コーナー、レクチャールーム、図書コーナー
[設置者]名古屋市
[運営者]名古屋国際芸術文化交流財団
[設計者]日建設計

 

中国・四国

 

●しまなみ交流館(テアトロシェルネ)(広島県尾道市)

 

〒722-0036 尾道市東御所町10-1
Tel. 0848-25-4073 [担当]山根広史
99年5月1日オープン
市街地再開発事業によりJR尾道駅南口に建設された文化施設。貝殻の形の屋根が特徴。ホールは、プロセニアムタイプの多目的型。今年秋まで、瀬戸内海大橋完成記念イベント「しまなみ海道'99」の拠点会場の一つとして利用されるなど、地域住民のほか観光客からも親しまれる施設運営に努める。オープニングは、中村橋之助の素踊りや尾道邦楽会の箏曲を披露。地元出身大林監督作品映画『あの、夏の日』も全国に先駆けて上映。6月からの尾道演劇祭では、現代演劇の招聘公演のほか、広島・愛媛県内の8劇団によるコンテストが開催される。

 

[オープニング事業]開館記念行事 映画『あの、夏の日』上映会(4月30日)
[施設概要]ホール(690席)、楽屋4、控室、会議室3
[設置・運営者]尾道市
[設計者]アール・アイ・エー

 

九州・沖縄

 

●鏡町文化センター(熊本県鏡町)

 

〒869-4202 八代郡鏡町(かがみまち)大字内田468-1
Tel. 0965-52-1114 [担当]沖田丈房
99年4月27日オープン
町庁舎南側に建設された複合施設。ホール、図書館、公民館が入る。文化ホールは、プロセニアム型で音楽を中心に多目的に利用する。野外イベントのための屋外劇場も設置。自主事業は町民9人からなる実行委員会を結成し、各種ジャンルの招聘公演のほか町民主体のフェステイバルなど今年度10本程度を計画。実行委員会は企画のほか運営にも積極的に協力する。招聘公演では、熊本県立劇場を中心とするネットワークを活用した海外アーティストの公演などを予定。

 

[オープニング事業]ベルギー古城音楽祭イン・ジャパン(6月3日)
[施設概要]文化ホール(594席)、リハーサル室、楽屋3、研修室、視聴覚室、屋外劇場
[設置・運営者]鏡町
[設計者]黒川紀章建築・都市設計事務所

 

クローズアップ

~福岡市の大型再開発事業の中核施設、博多座の試み

●都市型複合施設による再開発事業の取り組み

 

 福岡市では博多地区など旧中心部の再開発が課題とされ、アジア全域からの集客を想定した都市型複合施設による大型再開発事業「キャナルシティ博多」(96年4月開業、敷地面積約34,748m2)、「博多リバレイン」(99年3月開業、敷地総面積約21,860m2)への取り組みが行われてきた。前者が民間、後者が福岡市が出資した第三セクターによるプロジェクトだが、両者とも、ホテル、物販、飲食、オフィスといった従来の複合アイテムに加え、目玉の集客施設としてエンタテイメント施設を有しているのが最大の特徴となっている。特に「博多リバレイン」では、アジアの現代美術をテーマにした「福岡アジア美術館」と、公設民営劇場「博多座」という公立文化施設としてはきわめて意欲的な取り組みが行われ、話題を集めている。

 

●公設民営劇場「博多座」運営の仕組み

 

 「博多座」はかつての芸どころ博多の演劇文化の復興と個性豊かな町づくりを目的として、福岡市、九州経済界、演劇興行会社5社(松竹、東宝、コマ・スタジアム、明治座、御園座)が協力し、歌舞伎からミュージカル、宝塚歌劇など、多彩な演目を月替わりで常打ち興行する、日本初の「公設民営劇場」である。

 

 「公設民営」の内容は、市が313億円(土地の収用費含む)をかけて劇場を建設し、年間の維持管理費(来年度予算では年間5億7000万円)を負担。その運営を、年間3億円で施設を借り上げる第三セクターの株式会社博多座(市が資本金の約27%、興行5社のほか、九州電力、福岡銀行、九州旅客鉄道などの地元財界が出資)に全面的に委託するというものだ。基本的には博多座の事業費(11カ月で40億円~50億円見当)と人件費(役員を含め45名。内、市、興行各社等からの出向6名。技術スタッフは委託)をチケット収入で賄いたいとしており、そのためには月6万人の動員が必要と言われている。

 

 実際の興行については、当面5社体制での取り組みが行われ、松竹3カ月、東宝3カ月、コマ2カ月、明治座1カ月、御園座1カ月の公演が予定されている。(残りの2カ月は宝塚歌劇と市民に貸し出す12月の「市民桧舞台」)。

 

●特徴的な事業~博多座会と市民檜(ひのき)舞台

 

 「博多座」では、博多の市民ひとりひとりが劇場を支えていくという問題意識で個人会員組織の「博多座会」を設立。これは、入会金5万円(退会時に返却)を預かるというもので、月会費無料で優先予約、チケットの無料郵送、会報誌のサービスが受けられる。2万人を上限に募集したところ応募者が殺到したことで話題となったが、相当額の維持費が必要となるため、今後、会員事業としての成果が問われてくるところだ。現在、会員数は約2万7000人。

 

 また、通常一般人が使用することは考えられない商業演劇の劇場を公設施設として開放するというのが、施設を所有している福岡市が12月に設けた「市民檜舞台の月」である。希望者を公募、企画委員会が選考を行い、有料で貸し出す。一般利用者と商業劇場をつなぐため、プロデューサーを立てて調整を行い、初年度は博多区民による創作ミュージカルなどで11団体が舞台に上がる。

 

 企業劇場の閉鎖(セゾン劇場)、演劇興行界の不振、芸能プロダクションの参入(ホリ・プロダクション、ジャニーズ事務所、吉本興業)、公共劇場の増加と、演劇興行界は今、大きな再編期を迎えている。公設民営劇場「博多座」もこうした流れの中で興行界の慣習を破って生まれたトライアルのひとつなのである。

(坪池栄子)

 

●小坂弘治総支配人に聞く

 

 「福岡市で開かれた『アジア太平洋博覧会』のプロデューサーだった故・伊藤邦輔コマ・スタジアム社長、故・永倉三郎九州電力相談役、当時の桑原敬一福岡市長がかつて博多にたくさんあった芝居小屋を復活したいと話したのがきっかけとなり、計画中だった下川端地区の再開発事業の目玉にすることになりました。

 

 私は、若い頃、帝国劇場のオープニングに関わり、『劇場の建設費をチケット代に付加して減価償却することは不可能です』と社長に進言したことがあって、以前から公設民営という運営方法に大変興味をもっていました。現在も商業劇場は東京、大阪、京都、名古屋にしかなく、公設民営で九州につくれるものならやってみるべきだと。

 

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  これだけの施設を支えるには最低1000万人のマーケットが必要ですが、北部九州圏でみるとちょうど1000万人になる。交通網が整備されているので福岡への一極集中は可能だし、空路もあり都心部だから全国からの集客もできる。私はこの可能性に賭けています。

 

 株式会社博多座はまだまだ興行各社、地元経済界、市役所といった異なる組織の出身者の寄せ集め状態というのが正直なところです。これが一枚にならなければ劇場運営はできません。でもすでに、排他的な興行会社の慣習を破って松竹と東宝がノウハウを出し合って劇場建設をしたわけですし、それだけでも充分に画期的なことだと思います。こうしたプロセスを丁寧に追いかけることが公設民営の中身になっていくのではないでしょうか。

 

 町との関わりでは、“俳優のいるまち博多”をアピールしています。歌舞伎だと200人規模の俳優やスタッフが1カ月も滞在するので、行きつけの店もできる。『博多のホスピタリティが問われますよ』とよく言うんですが、劇場のある町のこうした賑わいをつくれればと思っています」

 

●博多座
[開館]1999年6月
[収容人員]1490人
[所在地]〒812-8615 福岡市博多区下川端町2-1

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