一般社団法人 地域創造

アーツセンター情報

北海道・東北

 

●尾上町総合センター(青森県尾上町)

 

〒036-0242 南津軽郡尾上町(おのえまち)大字猿賀字南田15-1
Tel. 0172-57-3111 [担当]小野勝一郎
99年1月4日オープン
町庁舎の老朽化を契機に建設された複合施設。町庁舎とホール、図書館などが入る生涯学習センターから構成。既存の地域福祉・保健センターを連結し、コの字形に施設を一体配置。多目的ホールは、移動式座席の240席。町民の各種文化活動の発表の場として積極的に利用してもらう。花や植物を素材とした創作活動を行うアレンジメント室と間伐材を利用した木工やミニ盆栽づくりなどを行うウッディクラフト室を設置し、地域の自然素材を生かした創作の場を提供する。

 

[オープニング事業]尾上町文化祭(2月20日、21日)
[施設概要]多目的ホール(240席)、控室・リハーサル室、和室、アレンジメント室、パソコン研修室、ウッディクラフト室
[設置・運営者]尾上町
[設計者]山下設計

 

関東

 

●大田区民ホール(アプリコ)(東京都大田区)

 

〒144-0054 大田区蒲田5-37-3
Tel. 03-5744-1600 [担当]幸正人
98年12月11日オープン
松竹キネマ蒲田撮影所の跡地に建設された文化施設。297台収容の地下駐車場を併設。入口正面のガラス張りの側壁が特徴。大ホールは、生の音の響きを重視した音楽主体のプロセニアム形式。走行式音響反射板や舞台開口部の高さを調整するシステムを利用して、舞踊、演劇、オペラなどにも対応。小ホールは、昇降式舞台を採用し、演奏会、講演会のほか各種発表会の場として利用。展示室は、ギャラリー、研修会など用途・規模に応じて分割可能。映像編集機器を配備したスタジオは、音楽練習のほか各種編集作業にも対応。開館記念公演では、そのために結成された約200人の区民合唱団「AOFC」が、歌詞を公募した混声合唱組曲『大田讃歌』を披露。

 

[オープニング事業]日本フィルハーモニー交響楽団&小山実稚恵(98年12月12日)
[施設概要]大ホール(1447席)、小ホール(170席)、展示室(420m2)、スタジオ2、楽屋8、控室2
[設置者]大田区
[運営者]財団法人大田区文化振興協会
[設計者]山下設計

 

北陸・中部

 

●宮田村民会館(長野県宮田村)

 

〒339-4301 上伊那郡宮田村(みやだむら)7021
Tel. 0265-85-2314 [担当]春日良夫
99年1月4日オープン
ホール、図書館、民俗資料館のほか研修室などの生涯学習機能を備えた複合施設。大ホールは、座席が床下に収納される可動席型を採用し、音楽、演劇、講演会のほか展示会などに利用可能。固定52席の視聴覚室には、150インチのスクリーンを設置。図書館は、99年4月開館予定。民俗資料館は、村出身の民俗学者向山雅重の教育者、歌人の面も含む人物像と業績を展示・紹介する。

 

[オープニング事業]ふるさと芸能フェスティバル(3月中旬)
[施設概要]大ホール(300席)、練習室兼楽屋、研修室7、視聴覚室、調理室、創作室、学習室
[設置・運営者]宮田村
[設計者]城取建築設計事務所

 

九州・沖縄

 

●小川町総合文化センター(ラポート)(熊本県小川町)

 

〒869-0624 下益城郡小川町(おがわまち)大字江頭80
Tel. 0964-43-0004 [担当]上田英二
98年12月20日オープン
町合併40周年に合わせ町庁舎の隣に建てられた複合施設。文化ホール、図書館、中央公民館が入る。「ラポート」とは“心の交流”の意味で、公募で選定。文化ホールは、音楽、演劇、講演などに利用可能なプロセニアム形式の多目的型。音響反射板をセットして本格的なコンサートにも対応。100人収容のリハーサル室は、ダンスなどの軽運動にも利用する。図書館は、99年4月開館予定。

 

[オープニング事業]小川町総合文化センター「ラポート」落成記念イベント(98年12月20日)
[施設概要]文化ホール(577席)、リハーサル室兼軽運動室、楽屋3、研修室2、視聴覚室、和室、調理実習室
[設置・運営者]小川町
[設計者]汎建設設計事務所

トピックス

セゾン美術館の閉館と今後の活動

 

●企業メセナの先駆者

 

 西武美術館から数えれば四半世紀近い歴史をもつセゾン美術館が、この2月に閉館する。現在では当たり前になったデパート美術館の草分けであるだけでなく、その先進的な活動内容においても内外から高く評価されてきただけに、閉館のニュースは波紋を呼んだ。

 

 セゾン美術館は、1975年、西武百貨店社長(当時)の堤清二氏の「時代精神の根拠地たれ」との掛け声のもと、増床した西武百貨店池袋店12階にオープン。89年には隣のビルに移転し、セゾン美術館と改称。コレクションをもたずに斬新な企画展を次々と打ち、70~80年代には西武セゾングループの発展と相まって注目され、模範的な「企業の文化戦略」としてもてはやされたものだ。

 

 だが堤氏は、美術館活動を「文化戦略」と見られることが不本意だったようだ。「美術館設立の動機は純粋に文化のパトロネージュ精神に基づくものだった」と、難波英夫館長は代弁する。

 

 「美術館がスタートしたのは75年ですが、展覧会は60年代前半からパウル・クレー展をやっていたし、70年代前半にはルノワール展やミレー展なども開いていた。その頃から堤さんには、日本にも文化支援のグローバル・スタンダードを根づかせたいという意識があったんです。それがたまたま西武百貨店の成長と重なって、美術館活動が文化戦略という言葉の中に刈り取られてしまったような気がします」

 

 実際、文化戦略とかシャワー効果(階上の展覧会を見に行った客が階下で買い物をすること)を期待するのだったら、催事場でルノワール展やミレー展といった人気展を開いていればよかったはず。それをあえて美術館と名乗って、開館記念展に8000人弱しか入らなかった「日本現代美術の展望」展をもってきたのは、美術館というオーソライズされた場所で同時代の美術を見せる必要性を感じていたからにほかならない。つまり、「文化戦略」として評価するのは矛盾しており、評価するとしたら、「メセナ」という言葉がなかった時代から企業メセナを実践していたことである。

 

●セゾン美術館の果たした役割

 

 開館以来24年間に開かれた展覧会は計264本。その内訳を見ると、内外の近現代美術が半数近くの117本を占めており、また、建築・デザインなどの周辺ジャンルが76本にのぼっている。合わせて7割以上だ。

 

 動員数とは別に、先駆性で話題になった展覧会を挙げてみよう。「アメリカ現代美術の巨匠たち」(1978)、「レニ・リーフェンシュタール写真展」(80)、「マルセル・デュシャン展」(81)、「芸術と革命」(82)、「ヨーゼフ・ボイス展」(84)、「もの派とポストもの派の展開」(87)、「ウィーン世紀末」(89)、「表現としての写真150年の歴史」(90)、「芸術と広告」(91)、「アンゼルム・キーファー展」(93)、「バウハウス 1919-1933」(95)、「ル・コルビュジエ展」(96)など、枚挙にいとまがない。

 

 今でこそ国公立美術館での現代美術展や周辺ジャンルの展覧会も珍しくなくなったが、それを20年以上も前からやってきたのである。逆に言えば、ようやく国公立美術館が時代に追いついてきたわけで、その意味では西武・セゾン美術館の役割は一応果たし終えたと言えるかもしれない。とはいえ、日本の芸術文化に与えた影響の大きさを考えれば、やはり閉館は惜しまれるところだ。

 

 閉館の最大の理由は、いうまでもなく母体企業のセゾングループの経営悪化による。バブル崩壊後の91年には堤氏がグループ代表を退き、美術館の運営も西武百貨店から西友に移管。それまで年に10本前後開いていた展覧会数を以後6~7本に減らし、コストダウンを図ってきたものの、とうとう力尽きたかたちだ。セゾンコーポレーション副会長の絹村和夫氏は言う。

 

 「いくらメセナ活動といっても、赤字を減らそうとするのは経営として当然のこと。そんな中で堤さんの精神を守っていくのは大変なわけで、このまま美術館を継続させても息切れがする。我々には、日本有数の現代美術コレクションをもつ財団法人セゾン現代美術館(軽井沢)もあるので、セゾン美術館のほうを閉館することにしました」

 

●美術館なき美術活動「SAP」

 

 さて、気になる今後だが、閉館といっても美術活動を全面停止するわけではない。学芸員はすでに半減しているものの、これまで培ってきた企画力や技術を生かして「美術館なき美術活動」を行っていくというのだ。難波館長によれば、「美術館というのは、美(コレクション)、術(展覧会ノウハウ)、館(建物)の3つが一体化したもの。セゾン美術館には術しかないので、これからはセゾン現代美術館を拠点に、セゾンアートプログラム(SAP)として、術=ノウハウを生かしていく」とのこと。

 

 SAPの具体的なプログラムとしては、まず展覧会活動が挙げられる。これには、セゾン現代美術館をはじめ全国の美術館に展覧会を供給していくほか、例えば都内20~30軒の貸画廊を借りて同時に現代美術展を開くなど、ゲリラ的な活動も含まれる。これは東京だけでなく、翌年は関西の貸画廊、その翌年には福岡、といった具合に全国展開も計画しているという。まさに「地域創造」である。

 

 次に、定期的なレクチャーやシンポジウムの開催。オープンな場で現代美術を巡る議論を行うことによって視野を拡げ、理解を深めるのが目的だ。そのほか、ネット上でのサイバーミュージアム、季刊の美術誌の出版、全国の学校への美術教育の出前、内外の展覧会ツアーをはじめとする友の会活動、などが計画されている。

 

 コレクションもハコももたない分、身軽に攻めの体勢に出られる「美術館なき美術活動」。あるいはこうした形態が21世紀には常識になっているかもしれない。ちょうど今、デパート美術館が当たり前になったように。

 

(美術ジャーナリスト・村田真)

 

●「アルヴァー・アールト1998-1976展」
2月15日まで。20世紀モダニズム建築を代表するフィンランドの建築家、アルヴァー・アールトの大規模な回顧展。この企画展を最後にセゾン美術館は閉館。

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