一般社団法人 地域創造

アーツセンター情報

北陸・中部

●豊田市コンサートホール・能楽堂(愛知県豊田市)
 
〒471-0025 豊田市西町1-200 豊田参合館8F
Tel. 0565-35-8200 [担当]杉浦隆伸
98年11月3日オープン
都市再開発事業により名鉄豊田市駅前に建設された複合施設「豊田参合館」内に設置。コンサートホール(10~13階)、能楽堂(8~9階)のほか図書館、商業施設が入る。コンサートホールは、クラシックを中心とした音楽専用のシューボックス型。2003年に世界有数のジョン・ブランボー社のパイプオルガンも設置。能楽堂は、桃山時代をイメージした切妻造りの屋根と総檜張りの舞台が特徴。能、狂言のほか邦楽などにも利用。「感動と交流」をコンセプトに、芸術と出会える、人と交流しあえる場の提供を目指す。
 
[オープニング事業]紀尾井シンフォニエッタ東京「オープニング・コンサート」/舞台披き祝賀能~五流家元総出演~(11月3日)
[施設概要]コンサートホール(1004席)、小ホール(80席)、リハーサル室2、楽屋7/能楽堂(458席)、楽屋5
[設置・運営者]豊田市
[設計者]佐藤総合計画/青島設計


●尾西市三岸節子記念美術館(愛知県尾西市)
 
〒494-0007 尾西市小信中島字郷南3147-1
Tel. 0586-63-2892 [担当]吉安恵子
98年11月4日オープン
文化功労者で名誉市民である国際的な洋画家、三岸節子の作品を展示・収集する美術館。外観はノコギリ状の屋根が特徴。常設展示室は、木を利用したフランスの田園住宅の趣きで、ヴェネチアをイメージした水路の設置など三岸の足跡を織り込んだ設計。ほかに、年2回予定の企画展や市民の創作・発表の場として利用できる展示室も設置。開館記念の「三岸節子展」では、所蔵品のほか東京国立近代美術館などの作品を加えた70点を展示する。
 
[オープニング事業]「三岸節子展」(11月4日~12月20日)
[施設概要]常設展示室(258m2)、一般展示室(353m2)、実習・展示室(125m2)、講義室(197m2
[設置・運営者]尾西市
[設計者]浦野設計
 

近 畿

●伊丹市立文化会館(いたみホール)(兵庫県伊丹市)
 
〒664-0895 伊丹市宮ノ前1-1-3
Tel. 0727-78-8788 [担当]黒田麻子
98年11月3日オープン
阪神・淡路大震災で被害を受け、建替した中心市街地の文化施設。オペラにも利用可能な大ホールは、音楽・演劇主体のプロセニアム形式で、電動走行式の音響反射板を採用。中ホールは、美術などの展示会ほか講演、会議に利用。多目的ホールは、リハーサルのほか音楽発表会などに気軽に利用してもらう。開館記念として、一般公募の市民250人の「開館記念合唱団」ほかが、伊丹シティフィルハーモニーの演奏で『カルミナ・ブラーナ』を合唱する。
 
[オープニング事業]伊丹シティフィルハーモニーほか「開館記念公演」(11月3日)
[施設概要]大ホール(1202席)、中ホール(260席)、多目的ホール(150席)、練習室3、楽屋5
[設置者]伊丹市
[運営者]伊丹市文化振興財団
[設計者]佐藤総合計画
 

中国・四国

●防府市地域交流センター(アスピラート)(山口県防府市)
 
〒747-0036 防府市戎町1-1-28
Tel. 0835-26-5151 [担当]渡邊輝美
98年10月31日オープン
市制施行60周年記念としてJR防府駅「てんじんぐち」に建てられた文化交流施設。音楽ホールは、シューボックス型でクラシック音楽主体の多目的タイプ。展示ホールは、企画展のほか市民の創作活動の発表の場にも利用。1階には市民交流のスペースのほか、地元出身の俳人種田山頭火と作曲家大村能章を紹介する部屋も設置。開館記念として、ホールを無料開放する「フェスタ・アスピラータ」を開催し、地元音楽愛好家などにステージ体験してもらう。今後、市の文化振興・人的交流の拠点として気軽に利用してもらうとともに駅前の賑わいの創出も目指す。
 
[オープニング事業]ドイツ・バッハゾリステンコンサート(10月31日)
[施設概要]音楽ホール(602席)、展示ホール(450m2)、リハーサル室、練習室2、控室4
[設置者]防府市
[運営者]防府市文化振興財団
[設計者]日本設計九州支社

 

クローズアップ

開館20周年を迎えたピッコロシアターの歩みを振り返る

 

●勤労青年のCRS活動の拠点としてスタート

 

 ピッコロシアターは正式名称を兵庫県立尼崎青少年創造劇場という。この正式名称からもわかるとおり、そもそもこの施設は、勤労青年が文化活動を行う拠点として整備されたものである。なぜ、20年前に青少年のための文化施設が構想されたのだろうか。当時の時代背景を振り返ってみると、70年代に起こった第一次文化行政ブームで文化的な活動に対する気運が高まっていたのに加え、「各地に革新自治体が誕生した時期で、行政として新しい試みが求められていた」と同劇場の荻野良明次長は指摘する。また、新規事業の財源として法人県民税の1%を超過課税することが認められたのも文化施設建設へのはずみとなった。

 

 こうした流れの中で、兵庫県は、民間レベルでは整備できない勤労青年のための福利厚生施設の整備を計画。勤労青年のCSR(culture、sports、recreation)活動の拠点として、文化施設やスポーツ施設などを次々に建設していく(現在、CSR関連施設は県内19カ所)。ピッコロシアターは、中央労働センター(77年)に次ぐ2番目の施設として、1978年に、JR塚口駅から5分、阪急塚口駅から10分の、マカロニ工場跡地に建設されることになる。

 

 ではなぜ劇場だったのだろう。地域ごとに施設計画を検討するCRS委員会が設けられ、阪神地域(大阪と神戸の間にある7市1町)でも議論が行われた。そこにアマチュア劇団の代表者が参加していたのに加え、尼崎は職場演劇が活発で古くから演劇祭なども催されていたこともあり、劇場を求める声が強く上がったという。

 

 

●貸し劇場から演劇学校が生まれるまで

 

 ピッコロシアターでは青少年やアマチュアの利用が前提になっていたため、手頃な施設規模(400席)にアマチュアでも使いやすい広い舞台面と、今から思えば極めて理想的な劇場設計が行われた。一方、勤労青年への場の提供が目的だったため、自主事業費はほとんど計上されず、運営は建物の管理を中心に考えられていた。しかし、創造施設としての専門性は必要との配慮から、大阪の毎日ホールで企画宣伝業務を担当していた山根淑子氏を副館長(現館長)に招くことになる。知己の新劇人に協力を仰ぎ、ほとんどボランティアで文化セミナーをスタート。また、回数は少ないものの公開リハーサルや1、2日の「青少年のための演劇講習会」、「ピッコロ舞台技術教室」など、後の演劇学校の萌芽となる各種教室を地道に実施していった。

 

 こうした水面化の活動を集大成するかたちで、1983年、5周年記念事業として県から500万円の委託料を受け、本科1年(定員50名)の「ピッコロ演劇学校」が立ち上がる(84年には研究科1年・定員20名設置・現25名)。講義は月約10数日、平日夜を中心に行われ、最後は卒業公演で修了する。また、92年には、以前から行われていた技術教室を発展させた「ピッコロ舞台技術学校」(定員40名)も開校する。

 

 

●日本初の県立劇団「ピッコロ劇団」の設立

 

 かねてから演劇学校卒業生の受け皿として劇団の創設が要望されていたのを受けて、「県立ピッコロ劇団企画運営委員会」が設置され、1年間の検討を経て、1994年、開館15周年、演劇学校開設10周年記念事業として「兵庫県立ピッコロ劇団」が船出する。団員20名(現25名)、総事業費約1億9000万円、劇場向いには専用の稽古場兼事務所もつくられた。

 

 主な活動としては、日本を代表する劇作家の書き下ろしでプロのプランナーが参加する本公演やファミリー劇場、スタジオ公演、地域との交流事業(県内各地での交流公演や演劇セミナーの開催、地元のイベントでの太鼓演奏など)、高校の演劇コースへの指導者の派遣などを行っている。ちなみに昨年度のピッコロ劇団のステージ数は全部で30ステージ、平均年齢28歳、平均年収約230万~250万円。契約は各人との専属契約で、県立劇団としてどのような処遇が望ましいか手探りで運営しているのが現状だという。

 

 ピッコロ劇団の特徴は、劇団代表として大阪芸大教授の秋浜悟史を仰いでいるものの、文芸部も演出部もなく、基本的に演技者しかいないという点にある。演劇学校のカリキュラムも、本科・研究科ともに、「劇表現」など演技の実技指導が中心となっており、劇団員として募集するのも俳優だけである。

 

 偶然かもしれないが、日本初の県立劇団がこうした「演技者の育成」からスタートしていることは、大変興味深い。劇作家や演出家という才能を発掘・育成するというより、地域に演技者というヒューマンインターフェイスを抱えることがコミュニティや町空間にとってどのような意味を持ち、地域がどのように潤うのか――船出から1年もたたずして劇団を襲った、あの阪神・淡路大震災。被災地の子どもたちとともに励まし合った激励公演のあり方が、ひとつの証明になったように思う。

 

(坪池栄子)

 

 

●ピッコロシアター(兵庫県立尼崎青少年創造劇場)
[開館]1978年8月19日
[施設概要]大ホール(396席、舞台床面積648m2、間口13~15m、奥行き15m、高さ6~7m、舞台幅36m)、中ホール(可動200人収容)、小ホール(可動100人収容)、資料室など
[主な事業]鑑賞劇場(新劇、小劇場、落語、狂言、コンサートなど多彩。98年度は20数公演を予定)、文化セミナー、ピッコロ演劇学校、ピッコロ舞台技術学校、県立ピッコロ劇団
[運営]財団法人兵庫現代芸術劇場(地元有識者による「県立尼崎青少年創造劇場運営委員会」で劇場運営、新劇系の演劇人らによる「県立ピッコロ劇団企画運営委員会」で劇団運営を検討)
[受賞歴]97年度文化庁芸術祭賞・演劇部門芸術祭優秀賞、97年度紀伊国屋演劇賞団体賞、98年度尼崎市民芸術賞特別賞
[所在地]〒661-0012 兵庫県尼崎市南塚口町3-17-8

 

●1997年度事業費
ピッコロシアター総事業費約4億1700万円(内、人件費1億6500万円、管理運営費1億700万円、劇団運営事業費9600万円、劇団公演以外の自主事業費4900万円)※総事業費は受講料・入場料等の事業収入、人件費には劇団員報酬を含む

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