●第3回芸術見本市
ミニステージの多彩なプレゼンテーションが好評
皆様のご協力により、「第3回芸術見本市」を無事終了することができました。ご参加・ご協力いただきました方々、本当にどうもありがとうございました。今回の見本市は、国際交流基金との共同主催により、昨年と同じく東京国際フォーラム展示ホールをメイン会場にして9月4日、5日の2日間にわたり実施されました。ブース部門の出展団体は119団体、入場者数は延べ2500人で、前回よりブース出展数こそ少なかったものの、展示ホール内に設けられたミニステージでは会場時間を通して多彩なプレゼンテーションが行われるなど、和気あいあいとした中にお祭り的な盛り上がりのある楽しい催しになりました。
今回、特に気を配ったのが、参加者同士のニーズをどうすればうまく橋渡しできるかということ。その試みとして行われたのが「ミニステージ」「ON NET 見本市」「WANTED CARD」です。「ミニステージ」では、オリジナルのプロデュース公演に力を入れている愛知芸術文化センターが、「私たちが行っている活動を芸術関係者に知ってもらいたい」とカナダの振付家、ビデオアーティスト、音楽家とのコラボレーションで創作しているコンテンポラリーダンスの一部をデモンストレーションするなど、計13団体が発表しました。デモを見た人がすぐに「感動しました」とブースを訪れるなど、相乗効果のある展開になったのではないでしょうか。
このほか、足の上げ下ろしをバレリーナが実演しながらバレエの見方を解説したバレエ講座、ロンドン留学から帰国したばかりの演出家、鴻上尚史さんの講演会など、ミニステージでは多彩な催しが目白押し。鴻上さんは、「ワークショップは学校教育への異議申し立てだ」と先制攻撃した後、「演劇のワークショップとは、身体と言葉を使って表現することの楽しさを知ることであり、表現を楽しむという授業のない学校では、普通の人たちがそれを学ぶのに極めて効果的な方法。知性の教養があるとすると、日本人は身体の教養、感情の教養が足りないと思う」と臨場感たっぷりに話されていました。
また、「ネットワーク促進講座」では、世田谷パブリックシアターを中心にして公立劇場3館が共同制作する舞台を題材に、演出料から著作料、デザイン料など生の数字が飛び交うスリリングな公開打ち合わせが行われました。こうしたプロセスを公開することでネットワーク事業にまつわる問題点を白日の下にさらそうという"勇気ある"講座で、メモをとる人の姿があちこちに見受けられました。
ちなみに、地域創造と社団法人全国公立文化施設協会が共催し、公立ホールの職員100名余りが参加した4日のシンポジウムの中でも、ネットワークがひとつのテーマになりました。パネルディスカッションでは、東九州地域の公立館をネットしたC-WAVE、全国音楽ホールネットワーク協議会などを代表するキーパーソンが登場。「ネットワークが重荷になったら終わり。あくまで手段」という共通認識が示されるなど、ネットワーク頼みの傾向を自制する声も聞かれました。
「ON NET 見本市」は、催しの3週間前から出展団体の情報をインターネットで公開するというもので、会場に設けられたコーナーでは、来場者がガイドブック替わりにお目当ての団体を調べていました。また、「WANTED CARD」(見本市に参加する目的や希望を記入したアンケート)の内容もパソコンで公開されており、来年度の補助公演のプログラム募集中とした北海道文化財団のブースには人だかりができたり、若手のダンスグループSAL VANILLAは「1999年9月 お台場にて予定されている野外プロジェクト"白い船"をフォローしていただける団体求む」と張り紙しているなど、多少は仲人らしくなったかなと喜んでいます。
来年の9月にも「芸術見本市」を開催する予定です。今後ともどうすれば公立ホールや地域の芸術文化団体の方々にとって役立つ見本市ができるか考えていきたいと思っております。ご意見、ご感想がありましたら、担当者までお寄せください。
●ブース部門出展者コメント
◎バンブーオーケストラ 柴田旺山(尺八・横笛、代表)
バンブーオーケストラは竹を素材にした創作楽器やアジアの伝統的な竹楽器を集めた日本で初めての「竹のオーケストラ」です。演奏家が集まってプロとしてコンサート活動するだけでなく、地域で竹楽器を使ったワークショップをやっています。これまで佐賀県宮之城町青年団、福岡県立花町などで行いましたが、佐賀では竹の切り出しから楽器制作、稽古、発表会まで1年以上かけました。竹のある地域でその自然を感じながらその地域の素材を使って音楽を表現したいと思っています。
町を歩いていると「あ~、あのバンブーオーケストラをしとっとるとね」と声をかけてもらえたり、実際に活動していると竹を通してコミュニティが生まれてくるのがわかります。将来は村の伝統芸能のようなものになるのかもしれませんが、それでいいのではないでしょうか。そういう地域をつないで、アジアから竹の演奏家を呼んで、バンブーフェスティバルをやりたい、というのが夢です。
◎北海道文化財団 村山和佳子(事業担当)
去年に続いて参加しました。北の戯曲賞、北海道舞台塾、北海道の公立館をリンクしたホームページの制作などいろいろな事業を行っているのですが、まだ知名度がないため、活動の広報・宣伝をしに来ました。それと来年度、財団が補助して北海道で公演できるプログラムが見つかればと思い「WANTED CARD」を出しました。
10月に演目を決定し、12月には広報誌などで補助演目と1ステージ当たりの値段を発表し、公演したい公立館を募集します。財団からは事業費の3分の2を補助します。希望館が増えればその分、負担金は安くなります。今回は昨年に比べて実演団体のブースが少ないのが残念ですが、WANTED CARDを見てブースに来られた方もあり、効果はあったのではないでしょうか。
◎op. eklekt(オプス エクレクト) 奥陸美
以前から海外の見本市の話を聞いていて、日本でもやるというので95年の第1回目から参加しています。この時にクロアチアのユーロカズフェスティバルのディレクターが気に入ってくれて、フェスを含め5カ国8カ所のヨーロッパツアーが実現しました。その人が97年からイギリスのウェールズのディレクターを兼任したのでイギリス3カ所でもツアーができました。
関西を拠点にしていると、自主公演をやる以外、自分たちの活動をプレゼンテーションできないし、公演に来てもらいたいと思っても宣伝するメディアがない。見本市に参加するようになって、こうしたディレクターと出会えたり、海外に行くと「あそこに出てたよね」と声をかけてもらえたり。すぐ成果につながらなくても、どこかでつながっていくというか、話が通じやすくなるところがあって、本当に得をしていると思います。それに、資料の作り方から見せ方まで、プレゼンテーションのノウハウをいろいろと勉強させてもらいました。ちなみに、このブースデザインは舞台装置の引きうつしです!
私たちは創作活動も宣伝活動も同じパフォーマンスだと考えているので、ここでこうやって座っていることも、次の作品づくりにつながっていきます。見本市というのはオーソドックスなやり方かもしれませんが、これ以上いいプレゼンテーションの方法はないのではないでしょうか。本当に感謝しています。
●「ミニステージ」プログラム
【9月4日】
〒520-0806 滋賀県大津市打出浜15-1 Tel. 077-523-7140 柳本宜伸
○シンポジウムなど
オリエンテーション「見本市活用法」/海外参加者によるプレゼンテーション/ダンス鑑賞のためのワークショップ:バレエ(講師:松澤慶信、協力:牧阿佐美バレエ団)/海外参加者によるプレゼンテーション/海外関連プロジェクト紹介/市民参加型公演の実際(講師:衛紀生)/助成財団の考え方(講師:セゾン文化財団・片山正夫ほか/QUESTION:公立ホールの自主事業担当者様/
○パフォーマンス・プレゼンテーション
[出演]日本音楽集団、宮城流薫風の会、ラ ダンス コントラステ、op.eklekt(オプス エクレクト)
○見本市ミーティング(パーティ)
ミニパフォーマンス
[出演]六三四、大駱駝艦、秘宝館昇天堂一座、サロン オーケストラ ジャパン、サイ、GYM5、DESHO!PRODUCTIONS
【9月5日】
○シンポジウムなど
オリエンテーション:見本市活用法/ネットワーク促進講座「世田谷パブリックシアター来年度公演 公立劇場共同製作案 公開打ち合わせ」(出席:高萩宏、津村卓ほか)/ワークショップの実際:演劇(講師:鴻上尚史)/WECT世界現代演劇百科 アジア・パシフィック編 出版記念レクチャー(講師:ドン・ルービン、扇田昭彦、田之倉稔ほか)/演劇人会議『演劇人』発刊記念シンポジウム「新国立劇場とこれからの劇場のあり方」(出席:鈴木忠志ほか)
○パフォーマンス・プレゼンテーション
[出演]愛知芸術文化センター コラボアート「緑」、劇団I-CHI-MI「GO-JAP」
●第3回「芸術見本市」概要
[会期]1998年9月4日、5日
[会場]東京国際フォーラム
[主催]国際交流基金、財団法人地域創造