一般社団法人 地域創造

高知県大方町 第10回Tシャツアート展

 今年で10回目を迎えた「Tシャツアート展」。今年は審査員に写真の部は写真家の浅井慎平さん、絵画・イラスト・CGの部にイラストレーターでエッセイストの大橋歩さんをお迎えして、5月2日から7日の6日間、砂浜美術館で開催しました。

 

 さて砂浜美術館をご存じない方のために少し紹介をしておくと、建物としての美術館はどこにも存在しません。あるのは長さ4キロに及ぶ砂浜、それに広がる太平洋と緑の松原だけです。そこを私たちは砂浜美術館と称しているだけなのです。

 

 きっかけは「ふるさと創生」が叫ばれ、各地で町おこし村おこし、地域の活性化が競うように言われていた1989年5月、ある大方町役場職員の二人が県内に住む一人のデザイナーと出会ったことから始まりました。出会った私たちは、どちらからともなく、コンサートをすればそれが町づくりかのような当時の町おこしブームに対する不満や疑問を多いに語ったのです。

 

 その中で3人は、まずしっかりした考え方がなければ、物事は本物にならないということをお互い確認し、さらに雑談を進める中でふと出た「何も建物だけが美術館ではない。自分たちの町にはきれいな砂浜(入野の浜)があるのだからそこを美術館と考えてもいいのではないか?」という言葉に触発され、できたのが次のようなキャッチコピーです。

 

「私たちの町には美術館がありません。美しい砂浜が美術館です」

 

 砂浜を美術館とすると、沖に泳ぐくじらも、風でできる砂の模様も、砂浜に残された鳥の足跡も作品です。海岸に流れ着くゴミさえも作品となります。豊かな感性を持って館内を歩くと、見つけられる作品は無尽蔵にあります。

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 このように砂浜美術館は、基本的にはあるがままの砂浜そのものですが、時には企画展も催されます。それが今回の「Tシャツアート展」なのです。

 

 今年の参加点数は1538点。福井県を除くすべての都道府県から参加がありました。参加数を都道府県別でみてみると、最も多いのが東京都で全体の15%、その次に多いのが開催地の高知県で全体の13%、以下神奈川県の6%、埼玉県、大阪府の5%と続きます。

 

 地域別では関東が最も多く全体の33%を占めています。参加者の性別では圧倒的に女性が多く、全体の7割を占めています。また20代が半数を占め、10代を除いて年齢が高くなるほど参加割合は低くなる傾向があります。さらに期間中のアンケートからは、参加者の2割が会場に直接足を運んでいることがうかがえます。

 

 砂浜美術館という物の考え方・見方を生み出して10年近くになります。その理念・哲学を広めるために例えば今回のようなイベントを仕掛けてきました。当初は砂浜を美術館に見立てたユニークなイベントというとらえられ方をされることが多かったのですが、最近では砂浜美術館の考え方そのものに共感を覚えてくれる人が増えつつあることは期間中の来場者アンケートなどでもわかります。

 

 そのことは、例えば今公共工事に代表されるように、開発型の日本社会に対する疑問が呈されている中で、砂浜美術館の、建物は作らなかったが、空気や砂浜、緑、海といったもので結果的に美術館がそこに存在をしている、その「物資としてつくらないことの健全さ」みたいなものに心を癒される人々がいるのではないか、と思われるのです。それこそが本当の地域文化を創造する基盤になるのではないか、といったらうぬぼれでしょうか。

(砂浜美術館事務局 畦地和也)

 

[期間中アンケート]
○ゴールデンウィーク最後の日でお天気もいまいちでどうしようかと思ったのですが来て良かったです。海と砂浜とTシャツとこの曇り空がまたいい感じです。美術館は子どもが楽しめない場所である事が多かったりするけど、子どもも砂浜で思いっきり楽しんでいました。(高知市・女性)

 

○ユニークな催しだと思い応募した。せっかく出品したので見に行こうと軽い気持ちで来たのだが、思いがけず自然にひたる連休の過ごし方ができて満足。子どもも大喜びだった。(鹿児島市・男性)

 

○全国にアートを楽しもうという人が大勢いてそのエネルギーが会場から伝わってくるので大変感動しました。(三重県・男性)

 

○以前来た時はイベントが盛りだくさんだったが今回はTシャツアート展だけですっきりとしていた。(名古屋市・女性)

 

○広いところで皆が好きな事をしているという感じがとても良かったです。屋内の美術館に行くと必ず眠くなるのにここではぜんぜん楽しかった。今度は出品したい。(広島市・女性)

 

○前回も来て砂浜美術館をみて感動し、今回は五感で味わったが、何度きても新鮮な感動を受ける。いつきてもセンスのいいところだなと思う。(京都市・女性)

 

●砂浜美術館
砂浜美術館の企画は、砂浜美術館運営委員会(委員長=町観光協会会長)の承認を受け、事業ごとに実行委員会が組織され運営される。4年前からは増大する事務に対応するため、常設の事務局を設置した。運営資金は、運営委員会に交付される町の補助金、企業の協賛金など。「Tシャツアート展」のほか、夏の「夕焼けコンサート」秋の「らっきょうの花見」「潮風のキルト展」「漂流物展」などの企画を実施。

 

●砂浜美術館事務局
〒789-1931 高知県幡多郡大方町入野2017
Tel&Fax. 0880-43-4915

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