一般社団法人 地域創造

アーツセンター情報

北海道・東北

●函館市芸術ホール(ハーモニー五稜郭)(北海道函館市)
 
〒040-0001 函館市五稜郭町37-8
Tel. 0138-55-3521 [担当]嶋田英司
98年5月9日オープン
五稜郭公園に隣接して建設された文化施設。既存の市民会館を考慮し、小編成の演奏会を意識したホールを設置した。市民の発表の場として、地域密着型の運営を基本とするほか、地元の若手による演奏会や小劇場シリーズなどの鑑賞型事業も提供する。そのほか、屋外のオープンギャラリーと一体利用が可能な展示用ギャラリーを備え、市民の創作活動の場を提供する。ホールをもつ近隣の2町との連携を図り、相互広報などに努めていく予定。
 
[オープニング事業]ピアノの小山実雅恵、オイロス・アンサンブルなどによる演奏会(5月9日)、諏訪内晶子リサイタル(5月31日)
[施設概要]ホール(838席)、リハーサル室、練習室2、ギャラリー(400m2
[設置者]函館市
[運営者]函館市文化・スポーツ振興財団
[設計者]佐藤総合計画

 

 関東

●保谷こもれびホール(東京都保谷市)
 
〒202-8555 保谷市(ほうやし)中町1-5-1
Tel. 0424-21-1919 [担当]江藤裕子
98年5月3日オープン
市庁舎の隣に建てられた文化施設。メインホールは、上・下手に舞台と同じ大きさのスペースを確保し、幅に余裕をもたせた座席を備えるなど、利用者の立場を考慮した全体的にゆとりのある設計が特徴。小ホールは可動式フロアを採用し、多目的な利用が可能。開館記念として、財団鑑賞事業のほかに、市民オープニングフェスティバルを実施し、約100にのぼる市民文化団体が組織する市民実行委員会が企画・運営するさまざまな公演・展示会に対し、5月の1カ月間を無料開放する。
 
[オープニング事業]渡辺玲子ヴァイオリンコンサート(5月4日)
[施設概要]メインホール(662席)、小ホール(250席)、リハーサル室、音楽練習室、AVルーム
[設置者]保谷市
[運営者]保谷市文化スポーツ振興財団
[設計者]山下設計


●鏑木清方記念美術館(神奈川県鎌倉市)
 
〒248-0005 鎌倉市雪ノ下1-5-25
Tel. 0467-23-6405 [担当]吉田絹子
98年4月1日オープン
美人画や風俗画などの作品で知られ、明治から昭和期にかけて活躍した近代日本画家、鏑木清方(かぶらき・きよかた)を紹介する美術館。施設は氏の旧居跡に設置。市に寄贈を受けた日本画の作品に加え、素描、下絵、挿し絵などを展示する。館内には、展示室のほか、生前にアトリエとして使っていた部屋を「画室」として再現。そのほか、氏の生涯や作品を紹介するハイビジョン・システムによる映像コーナーや「絵画検索システム」も備えられている。
 
[オープニング事業]「開館記念鏑木清方展・所蔵作品による」(4月18日~)
[施設概要]展示室(93m2)、画室、映像コーナー
[設置者]鎌倉市
[運営者]鎌倉市芸術文化振興財団
[設計者]鎌倉市住宅建築課
 

 中国・四国

●佐川町立桜座(高知県佐川町)
 
〒789-1201 高岡郡佐川町(さかわちょう)甲346-1
Tel. 0889-22-7878 [担当]岡林護
98年5月15日オープン
地質館や文化センターなどがある文化ゾーン内に建てられた文化施設。ガラスを多用した開放的な外観が特徴で、ホール内に採光することも可能。ホールは多目的な利用ができる可動席型を設置した。ホールの運営方針として1)ホールはサービス業2)利用者の使い勝手を考慮したホール3)ホールは街のたまり場など、オープン前から館のスタンスを明確化し、施設利用の低料金化や練習場・和室の24時までの夜間利用を図るなど、運営システムに工夫を凝らす。そのほか、「桜座CLUB」という名でボランティア・スタッフを募集。現在、裏方養成のための舞台技術研修を実施中。将来的には、イベントの企画から、ポスター・チラシの企画・作成まで携わるボランティアを導入していく予定。
 
[施設概要]ホール(400席)、練習場3
[オープニング事業]地元の音楽愛好家や文化団体を中心とした公演(5月15日~)
[設置・運営者]佐川町
[設計者]ワークステーション

 

クローズアップ

小劇場演劇の拠点化に成功、伊丹アイホールが10周年

 

 1988年に開場した伊丹市立演劇ホール(通称・アイホール)は、プロデューサー制の導入や小劇場演劇を柱にした自主事業など、従来の公立ホールにはみられなかった官民協働のホール運営の草分けとして知られる。97年度までに自主事業で関わった劇団は、プロジェクト・ナビを筆頭に約70劇団。こうしたネットワークをベースに教育普及活動に力を注ぎ、現在では、小規模ながら関西における小劇場演劇アートセンターのような役割を担っている。

 

●設立の経緯

 

 JR伊丹駅前の再開発に伴い、駅前地域の活性化を目的に計画された。マンション街の一角で周辺に商業集積もなく、大阪からは心理的に距離感があるため(梅田から電車で15分)、特徴あるプログラムづくりと地域住民を意識した運営の両立が課題とされた。1987年に伊丹市は文化事業によって地域のイメージアップを図る「劇場都市宣言」を発表。アイホールは、美術館などと並んで伊丹市の文化戦略拠点として位置づけられ、当時、若者文化としてブームになっていた小劇場演劇を軸に、「個性ある文化」と「若者が集う町」のイメージを発信する中核施設となる。

 

 

●運営の特徴と主な自主事業

 

 運営の特徴としては、1)個性ある運営を実現するために民間からホール・プロデューサーを登用し、プログラムづくりを一任したこと、2)長期計画を策定したこと(5年目までの目標はホールを拠点に活動してくれる東京・関西の小劇団とのネットワークづくり。10年目までの目標は市民参加)、3)表現ジャンルと対象を明確に絞り込んだこと(小劇場演劇と若者)である。主な自主事業には公演事業と教育普及事業の2つがあり、特に後者については、長期計画の第2ステップとして市民に開かれた施設づくりを目指し、市民と創作者の交流によって観客育成をする教育普及プログラムを積極的に実施している。その中でも注目されるのが、開館の翌年からスタートした演劇学校を発展的に解消した「演劇ファクトリー」と伊丹市内の中学校、高等学校の演劇部が集まる「中学高校演劇フェスティバル」である。

 

●小劇場演劇の人脈を生かした教育普及事業

 

 「戯曲や芝居づくりについてわかれば演劇がもっと楽しめるのではないか、というのが演劇学校や戯曲教室をはじめた理由です。これまでは芝居づくりについて知りたいと思っても劇団に入るしかチョイスがありませんでした。公立ホールとしてそういう場を提供し、チョイスの幅を広げることが観客育成に繋がると考えています」(プロデューサー津村卓)

 

 当初開講していた演劇学校では、卒業公演に向けて俳優と裏方に役割分担してしまい、芝居づくり全体を体験するという趣旨が形骸化してきたため、97年度からは全員がすべてのパートを経験する「演劇ファクトリー」にリニューアル。それに伴い、これまでアイホールが培ってきた小劇場人脈を総動員して、人気劇団新感線の舞台監督(伊藤一刀)や衣裳(竹田団吾)に講師を依頼。こうした講師陣の充実により劇団の外で学ぶ機会のなかった小劇場系の芝居づくりがオープンに体験できる稀有の場になった。

 

 「自分たちも手探りで舞台づくりをしてきた経験があるだけに、何も知らない若い人に教えるのがとてもうまい。理論から入るのではなく、インプットがあってアウトプットがあります、ハイ、これで音がでます。さあやってみましょう、ですから。卒業公演は大変でしたが、つくることの喜びは充分味わってもらえたと思います。プロを養成するわけではないので、ここでは思いっきり遊んでもらえればそれでいい。それから先は受講生たちが自分で決めることです」(津村)

 

 自主事業として行われている「中学高校演劇フェスティバル」でも、優秀校の副賞を関西若手劇作家のオリジナル戯曲(作家が学校に出かけて生徒と一緒に台本をつくる)にするなど、小劇場演劇の人材との交流が積極的に図られている。ホールの蓄積を地域に生かすという意味で、大変効果的な試みではないだろうか。

 

◎1997年度演劇ファクトリーの事業概要
【期間】通年(毎週水曜日19:00~22:00) ※公演前自主稽古あり
【定員と受講料】30人、年間6万円
【ディレクター】岩崎正裕(199Q太陽族代表)、岡本康子(フリー制作者)
【事業内容】前期の基礎編はディレクターとゲスト講師による30数回の体験講座、後期の実践編は3月中旬にアイホールで実施する卒業公演(全体が2班に分かれてスタッフと俳優の両方を交替で実演する)の制作。

 

◎主なカリキュラム

r37_4.gif

( )内の回数以外に自主稽古あり

 

◎伊丹市立演劇ホール(アイホール)概要
[開場]1988年11月23日
[施設概要]イベントホール(フリースペース、300席)、カルチャールーム2室
[主な自主事業]公演事業/自主企画公演(年10本程度。小劇場演劇、コンテンポラリーダンス等の主催事業)、AI・HALLプロデュース(90年~年1回。伊丹からの創作演劇の発信を目的に市制50周年記念事業としてスタート)、提携公演(年10本程度。ホール使用料の減免と制作・広報補助)など 教育普及事業/演劇ファクトリー(97年~)、レクチャー&ワークショップ(95年~)、北村想による戯曲の書き方講座「伊丹想流私塾」(96年~)、中学高校演劇フェスティバル(96年~)など
[事業費と体制]事業総額2500万円~3500万円。ホール職員数5名(館長1、職員3、常勤アルバイト1)、プロデューサー2名。管理運営は92年3月まで伊丹市直営(市民文化部所管)、4月からは財団法人伊丹市文化振興財団。

カテゴリー