北海道・東北
●木のおもちゃワールド館ちゃちゃワールド(北海道生田原町)
〒099-0701 北海道紋別郡生田原町(いくたはらちょう)字生田原143-4
Tel. 01584-9-4022 [担当]松田昭男
98年4月28日オープン
木製おもちゃの展示・体験施設。施設外観は西洋の城をイメージしてデザインしたもの。「世界のおもちゃ」や「動くおもちゃ」など6つに分かれた展示室において、国内外の木のおもちゃ約6000点を展示。そのほか積み木や木馬などの遊びのコーナー、木のおもちゃづくりが体験できる工房などがある。また、藤城清治氏によるコロポックル(アイヌ伝説の小人)をテーマにした影絵を展示する影絵美術館を併設する。オープンに合わせ、豊富な地元森林資源を活用したクラフト(木工芸)施設を有する網走地区管内の他の8市町村と共同で、クラフトを核とした町づくりのための研究会を発足。情報交換、広報宣伝、観光開発、デザイン講習会開催など、地域振興の推進に取り組む。また、地域の自治体が参加するインターネット上の情報サイトを活用し、事業案内や新たな作品の紹介、公募など情報発信を図る。
[設置者]生田原町
[運営者]生田原町振興公社
[展示面積]560m2
[設計者]岩見田建築設計事務所
●藤沢町文化会館(縄文ホール)(岩手県藤沢町)
〒029-3405 岩手県東磐井郡藤沢町藤沢字仁郷12-5
Tel. 0191-63-5515 [担当]金野壮
98年4月1日オープン
藤沢勤労者総合福祉センター、町立図書館との複合施設。縄文土器をつくる野焼祭に影響を受けた作品を手がけた町ゆかりの岡本太郎のモニュメントをホールの前庭に設置。緞帳デザインにも同氏意匠によるのものを採用している。ホールは周辺地域にない中規模キャパのプロセニアム形式を採用。オープニング事業として西村由紀江ピアノコンサート、わらび座ミュージカル『ヤンタ森へ行く』などを実施する予定。そのほか「地域文化創造人育成事業」と題して、住民ボランティアによるホールの音響、照明、舞台機構のオペレータースタッフの育成に取り組む。あわせてホールの自主開催事業の総合プロデュースまで担当できるような、地域文化を支える人材の養成をも目指す。そのための研修を継続的に開催し、地域文化の向上を図る。
[設置・運営者]藤沢町
[ホール席数]514席
[設計者]松山建築設計事務所
北陸・中部
●天竜市立秋野不矩美術館(静岡県天竜市)
〒431-3314 静岡県天竜市二俣町二俣130
Tel. 0539-22-0315 [担当]一花義広
98年4月25日オープン
文化功労者であり、インドの自然、風土をモチーフとして描いた作品で知られる女流画家、秋野不矩(ふく)の作品を収集・展示する美術館。町を見晴らす丘陵地に設置され、周辺の環境と調和を図るため杉材や土・漆喰など、自然素材を多く取り入れた個性的な設計を採用する。氏の作品を中心に紹介する常設展示室のほか、企画展や市民ギャラリー、講座などに利用できる展示室があり、市民の創作活動のスペースとしても利用できる。収集活動については、秋野氏の作品を中心としながら地元作家の作品も収集。開館記念の「秋野不矩展」では代表作『少年群像』を含む84点の日本画作品のほか、デッサンや絵画資料を展示する。あわせてミニ・コンサートやトークショーも予定。
[設置者・運営者]天竜市
[展示面積]434m2
[設計者]藤森照信・内田祥士
トピックス
●横浜みなとみらいホール・小ホールが先行オープン
横浜みなとみらいホールが今年の6月に大ホールを含めてグランドオープンする。それに先立ち、小ホールが2月1日に先行オープンした。小ホールは座席数440席のシューボックス型で、室内楽を主としたクラシック音楽専用のホール。内壁に木材を使用し、落ち着いた雰囲気の中で音楽が楽しめる。オープン記念として、「矢部達哉&開館記念アンサンブル」「日本の歌・世界の歌」「ブラスの饗宴」「荘村清志&山形由美デュオコンサート」などを予定。
[問い合わせ]Tel. 045-682-2020 横浜みなとみらいホール 野田
[所在地]〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい2-3-6
クローズアップ
日本初の音楽専用ホールの歩み~神奈川県立音楽堂
神奈川県立音楽堂のオープンは、まだ戦争の面影の残る1954年。横浜港を望む丘の上に、県立図書館とともに開館しました。地方公共団体が開設した日本で初めての音楽専用ホールで、世界一の音響を誇るとされた英国のロイヤル・フェスティバル・ホールをモデルとして、前川国男氏が設計にあたりました。
現在でこそ公立の専用ホールが多数建設されていますが、当時としてはまさに画期的なできごとでした。それを支えたのは、当時の神奈川県知事、内山岩太郎氏と、鎌倉在住の音楽家評論家、野村光一氏です。外交官として海外に赴任経験もあった知事は、戦後の荒廃した時期にこそ、質の高い文化事業を実施、提供していく専門性の高い施設が必要だと考え、音楽ホールの建設を計画。知事の発案を受けて、52年、野村氏を中心に音楽家による諮問機関「神奈川県音楽家懇話会」が結成されます。音楽ホール建設に熱意を燃やした専門家たちが、設計から運営方針にいたるまで、協議を重ね、提言を行い、音楽堂が誕生したのです。
しかし、県議会から『運営は音楽だけに偏らないように』という要望を受け、条例上は多目的ホールとして位置づけられることになります。それに対し、野村氏等により組織された運営協議会は、専用ホールとしての運営理念を提示。音楽堂は、音楽に絞った自主事業を実施してゆきました。その中で55年から現在まで続いている長寿自主事業が「特別演奏会」です。
「特別演奏会」は、海外の一流の演奏家を招聘して開催する事業で、これまでウラディミール・アシュケナージ、スビャトスラフ・リヒテルなど世界の巨匠たちがその舞台に立っています。同じく55年に始まった「音楽鑑賞の夕べ」では、レコード演奏+講話、実際の演奏+講話など、現在でいうレクチャー付きコンサートを実施、新しいファンを開拓してきました(94年に終了)。最近では専属室内楽団「アンサンブル神奈川 in 音楽堂」の活動、現代音楽のシリーズなど、常に新鮮な話題を提供していますが、特に94年に始まった「神奈川芸術フェスティバル」では、独自の視点でのプログラムづくりが注目を集めています。
こうした自主事業に加えて、音楽堂のもう一つの特徴となっているのが、音響2名、照明2名、ステージ係3名の専属舞台技術の存在です。音楽堂の響きを熟知したスタッフが、演奏会の時に丁寧に楽器の位置や出のタイミングをアドバイスしてくれるため、アマチュアにとっても利用しやすいホールとして親しまれてきました。こうした蓄積の結果、1960年頃からは音楽専用ホールのイメージが定着。その後、ほかのホールとの役割分担も進み、現在ではクラシックを中心に音楽関係の利用が約90パーセントを占めています。
音楽堂で忘れてならないのが、充実した音楽資料の存在です。開館以来、自主事業、貸館を問わず収集しているすべてのコンサートのチラシとプログラムを綴ったファイルは圧巻で、戦後日本の西洋音楽史を辿る貴重な資料となっています。自分たちの活動史を編纂したいと音楽堂に資料を借りにくる団体もあるそうです。66年にはレコードプレーヤー、辞典、図書、楽譜、レコードなどを備えた音楽資料室を開設(現在は図書館に移設)。研究者、愛好家に幅広く利用されています。
92年の秋、県立音楽堂・図書館を取り壊し、紅葉ヶ丘に新しい形の総合文化施設を建築する「かながわ文化施設21世紀構想」が浮上しました。しかし、建築家は歴史的な建築物として、演奏家は音響の素晴らしさ、市民は、自分たちの歴史を刻んできた場所への思い入れから、建て替えに反対。結局、バブル崩壊の影響もあり、全面的な立て替えではなく、21世紀の文化施設として相応しい改修を加えた上で、保存されることになりました。
今、音楽堂のある丘からは、ランドマークタワー、クイーンズスクエアなどみなとみらい21地区として急速な変貌をみせている横浜港が望めます。今年2月には横浜市文化振興財団の運営する新しいコンサートホールもオープンします。音楽堂がこれまで築いてきた歴史の上に、21世紀、どういった役割を果たしていくのか。改めて注目されるところです。
●神奈川県立音楽堂
[施設概要]木のホール(収容人員1106人/固定席1054席)、
リハーサル室1室、控室5室ほか
[所在地]〒220-0044 横浜市西区紅葉ヶ丘9-2