北海道・東北
●北見芸術文化ホール(きた・アート21)(北海道北見市)
〒090-0811 北海道北見市泉町1-2-22
Tel. 0157-31-0909 黒田輝司
98年2月7日オープン
音楽専用ホールと多目的ホールなどからなる文化施設。側壁がガラス張りの外観が特徴。身近な舞台芸術の提供や市民による自主公演実施などを考慮し、性格の異なる中規模の2つのホールを並列して設置。音楽ホールは室内楽や小編成のオーケストラ演奏向け。オープニングとして札幌交響楽団管弦楽演奏会を実施するほかピアノコンサート、室内歌劇『フォスター物語』などを予定。今後は各種練習室を利用して中高生を対象としたクラシック楽器の講習会を開催するなど地域文化のレベルアップを図る。また、広域のホール間ネットワーク活動を活用した演劇作品の公演も計画中。ホールの運営については表方ボランティアを組織し、市民参加システムを導入。
[設置・運営者]北見市
[ホール席数]576席(音楽ホール)、420席(多目的ホール)
[設計者]石本・毛綱・高谷特別共同企業体
関東
●熊谷文化創造館(さくらめいと)(埼玉県熊谷市)
〒360-0846 埼玉県熊谷市拾六間111-1
Tel. 0485-32-0002 建川崇嗣
98年1月10日オープン
音楽主体のシューボックス型の大ホールと可動席型の小ホール、野外劇場などからなる文化施設。外観はレンガを用いた落ち着いたデザイン。野外劇場はステージ背後にある大ホールの主舞台の利用が可能。地元アマチュアの埼玉交響楽団とフランチャイズ化の協定を結び、定期演奏会や公開練習を実施する。また、市民参加により文芸作品を舞台化するなど地域の文化の向上を目指す。そのほか、ホールで実施する市民の自主企画を一般公募。10本程度選考し、フェスティバル形式で上演する。公演プランには経費助成・使用料免除・広報協力などで支援する。市内3番目のホールということで文化育成、市民参加事業などを含めユニークな運営を目指す。
[設置者]熊谷市
[運営者]熊谷市文化振興財団
[ホール席数]1000席(大ホール)、250席(小ホール)、500席(野外劇場)
[設計者]池原義郎・建築設計事務所
●横浜市栄区民文化センター(リリス)(横浜市)
〒247-0007 横浜市栄区小菅ケ谷1-2-1
Tel. 045-896-2000 鬼木由美
98年2月1日オープン
市が順次整備している5番目の区民文化センター。県立地球市民かながわプラザ、県自治総合研究センター、市町村研修センターなどの施設との合築施設(写真)。銀色の円柱形のある外観が特徴。クラシック主体の小ホール、アートギャラリー、音楽練習室などがある。開館記念としてベルリン・フィルハーモニー・シャルーン・アンサンブル、演奏会形式オペラ『魔笛』など室内楽を中心に実施。そのほか、ティーパーティーを取り入れた平日午後の演奏会や、社会人向けに午後8時を開演時間とした演奏会を企画するなどプログラムに工夫を凝らす。
[設置者]横浜市
[運営者]横浜市文化振興財団
[ホール席数]300席
[展示面積]182m2
[設計者]株式会社松本陽一設計事務所
北陸・中部
●みやま木ごころ文化の郷(福井県美山町)
〒910-2351 福井県足羽郡美山町(みやまちょう)朝谷島2-8
Tel. 07797-4-7112 林幸男
98年11月1日オープン
文化ホールのほか図書館、会議室などを備えた町民交流館やイベント広場で構成される複合文化施設。ホールは幅広いジャンルに対応できる全席収容可能な多目的型のホール。オープンに合わせ、小・中学生40名を含む老若男女79名の団員からなる町民劇団「木ごころ一座」を発足させ、柿落としとして地元民話を題材としたオリジナル作品の公演を実施。この公演から他県の劇団との交流が生まれ、夏期の公演開催が実現。こうした町民参加による舞台芸術の創作により町の活性化や文化振興を目指し、併せて町が推進する若者定住促進、過疎対策をも図る。
[設置・運営者]美山町
[ホール席数]510席
[設計者]合司・大永建築事務所共同企業体
クローズアップ
「移動文化教室」で地域とともに歩み続ける~徳山市文化会館
オープンは1982年。開館以来、音楽を中心にした質の高いプログラムと、移動文化教室などのホールを飛び出した積極的な自主事業を展開し、西日本の公立ホールの中心的役割を果たしているのが徳山市文化会館です。
徳山市文化会館の自主事業の特色は、鑑賞型の「ホール事業」と普及型の「企画事業」の2種類に明確に区分されている点です。ホール事業では、開館以来毎年実施している「松竹大歌舞伎」や「オーケストラ公演」など、地方ではなかなか鑑賞できない公演を中心に招聘、提供してきました。一方、企画事業では、「地域に出かけて」実施する「移動文化教室」など、日常生活の中で、音楽や演劇との接点を提供するきめ細かい事業を実施しています。予算面でも、採算性を重視するホール事業に対し、企画事業は基本的に無料、と明確に区分されています。
自主事業を2つの軸に分けて実施するようになったのは、開館3年目を迎えた84年からのことです。「オープンした年は物珍しさで皆ホールに来たのですが、2年目から集客に苦労することが多くなりました。チケットを売りながら、日常生活の中で文化に接する環境づくりが必要だと痛感し、スタートさせたのが移動文化教室なんです」(徳山市文化振興財団 事業係長西崎博史)
移動文化教室では、音楽教室、寄席、児童劇場など、この13年間で75公演を実施、鑑賞者は延べ1万7220人になります。体育館など、決して設備面で十分な会場での開催ではないのに、実施地域からは必ず「来年も」と要望が出るなど好評を博しているとのこと。その成功のポイントは公民館、学校、会館の3者が主催者となり、地域の行事として協力して実施する仕組みにあるようです。
まず、年度当初に会館が各地区の公民館に出演団体などを提示して受け入れを打診。開催地域が決定すると、3者と出演団体が話し合いを重ねながらプログラムをつくっていきます。例えば、96年10月に行われた大津島中学校での移動音楽教室では、徳山市内外の音楽教師を中心に結成されたアンサンブル「M・Tファイブ」が、クラシックの名曲を中心に、放映中だった人気テレビドラマ「ロングバケーション」の中で使われていたピアノ曲などを織り交ぜて演奏。最後には、身近な校歌を本格的なアンサンブルにより全員で合唱しました。
「各地域で話し合いを重ねてつくるので、プログラムはオリジナルばかりです。進行を学校の先生にお願いするのもポイントですね。会場には、生徒さんのほか、父母や老人会の皆さんなどが集まって、出演者と一緒になって楽しんでますよ」
きめ細かいプログラムづくりが可能なのは、徳山を中心に活躍する実力のあるグループを発掘し、そうした地元のグループに協力を依頼しているからです。
「もちろん出演者のレベルは高いことが必須条件。地域の中で、このように共同でプログラムがつくれる実力のあるグループを探すために、徳山周辺で行われるコンサートにはできるだけ足を運ぶようにしています。また、13年間継続したことで公民館や学校との信頼関係ができ、スムーズに話が進むようになったのも大きいですね」
企画事業にはホールを使った事業もあります。徳山出身の詩人まどみちおさんのうたのコンサート「まど・みちおコスモス音楽会」では、市内の幼稚園・保育園の年長生がステージでまどさん作詞の『ぞうさん』『一年生になったら』などを大合唱。今年は5回目を迎え、「年長になったらホールのステージに立てるって子どもが楽しみにしてるんです」と、お母さんたちに言われるほど、子どもに人気の音楽会となっているそうです。
こうした企画事業と、継続的な鑑賞プログラムを実施してきた結果、ホール事業では「開館5~10年経った頃から、安定してチケットが1000枚以上売れるようになっています」とのこと。また、友の会会員が、年会費3000円と決して安くないにもかかわらず継続率が80パーセント以上となっていることからも、会館が着実にファンを増やしていっていることがわかります。「日常生活にこのホールは欠かせない、と思う人をもっともっと増やしていきたいですね」
●徳山市文化会館
[施設概要]大ホール(収容人員1800人/固定席1647席)、展示室3室、練習室2室、リハーサル室、和室ほか
[所在地]〒745-0874 山口県徳山市公園区5854-41