一般社団法人 地域創造

アーツセンター情報

北海道・東北

●江別市民文化ホール(えぽあホール)(北海道江別市)
〒069 北海道江別市大麻中町26-7
Tel. 011-387-3120 大野忠幸
97年10月1日オープン
ホールと公民館との複合施設。ホールはシューボックス型の音楽を主体とした多目的タイプ。開館記念事業として「弦楽六重奏の夕べ~土田英順と仲間たち」、劇団東劇らによる「ロミオとジュリエット」などを実施。そのほか公募の市民によるクラシック、和太鼓、邦楽コンサートやダンスなどの市民参加公演を開催。
[設置・運営者]江別市
[ホール席数]453席
[設計者]北海道開発コンサルタント株式会社
 
●名取市文化会館(宮城県名取市)
〒981-12 宮城県名取市増田字柳田520
Tel. 022-384-8900 木村敏
97年10月1日オープン
多機能型、音楽専用型、多目的型の大中小3つのホールからなる文化会館。エントランス、ホワイエの空間や舞台の広さなどゆとりのある設計が特徴。柿落としはプラハ交響楽団演奏会。そのほか市民芸術文化祭、ミュージカル『エビータ』などを実施。舞台芸術の企画・制作に興味のある市民を対象とした「舞台芸術未来工房なとり」でアートプロデュース、裏方の2つの講座を開設したり、「大人のためのピアノ教室」を開催するなど市民参加型事業も予定。友の会シーバインズによりホールの支援者を組織化するとともに、表方となる市民レセプショニストを育成する。
[設置者]名取市
[運営者]名取市文化振興財団
[ホール席数]大ホール1350席、中ホール450席、小ホール200席
[設計者]槙文彦+槙総合計画事務所

 

北陸・中部

●新津市美術館(新潟県新津市)
〒956 新潟県新津市(にいつし)蒲ヶ沢109-1
Tel. 0250-25-1301 森山健
97年10月1日オープン
3つの展示室などと野外劇場をもつ美術館。美術品の収集は行わず、ネットワークを活用した自由な企画を目指す。また、劇場やアトリウムなども利用して、音楽、演劇などさまざまな企画のための芸術文化空間を提供していく。開館記念として同市出身の洋画家笹岡了一展を企画。さらに、人間国宝の狂言師野村万蔵らが演ずる新作能『紫上』を実施。併せて作家丸谷才一らによるシンポジウム「源氏物語の女性たち」を開催。そのほか、毎年アーティストを招き、3カ月間の滞在や市民との交流の中から創造活動をしてもらう「ラボラトリイ」を実施。
[設置者]新津市
[運営者]新津市文化振興財団
[ホール席数]野外劇場350人
[展示スペース]1406m2
[設計者]横山正、アルセット建築事務所
 
●山ノ内町立志賀高原ロマン美術館(長野県山ノ内町)
〒381-04 長野県下高井郡山ノ内町上林1465
Tel. 0269-33-8855 野竹恵勇
97年10月5日オープン
美術館棟とミュージアムショップ棟からなる美術館。常設展示として、古代ローマ帝国内で作られた瓶や壷などのローマングラス、18世紀後半のトルコ・コーカサス地方の遊牧民が使用した平織りの織物「キリム」、地元出身の南画家、児玉果亭の作品などを紹介。そのほか、「志賀高原ロマン美術館と黒川紀章」と題したパネルや模型などの展示会を企画。管理運営については、町と他の団体2者との協議会方式による。
[設置者]山ノ内町
[運営者]志賀高原ロマン美術館管理運営協議会
[展示スペース)]727m2
[設計者]株式会社黒川紀章建築都市設計事務所

 

近 畿

●斑鳩町文化振興センター(いかるがホール)(奈良県斑鳩町)
〒636-01 奈良県生駒郡斑鳩町(いかるがちょう)興留10-6-43
Tel. 0745-75-7743 野口英治
97年9月9日オープン
大・小ホール、図書館などからなる複合施設。法隆寺周辺地域ということで景観に配慮した大和棟形式の屋根が特徴。大ホールはプロセニアム型の多目的ホール。小ホールは可動席ホール。柿落としは関西フィルハーモニー管弦楽団コンサート。開館記念として民話ミュージカル『男鹿の於仁丸』、日・中・モンゴルの歌手らによるアジアミュージックフェスタ'97、などを実施。そのほか「聖徳太子フォーラム/古代史国際シンポジウム」など古代や歴史的文化遺産をテーマとする催しを企画。今後住民の力をもとに企画運営などの面でホールを支える「いかるが文化サロン」を組織化し、ホールの活性化を図っていく予定。
[設置者]斑鳩町
[運営者]斑鳩町文化振興財団
[ホール席数]大ホール729席、小ホール224席
[設計者]安井建築設計事務所

 

クローズ・アップ

 芸能による村おこし「文化振興基金事業」と「文化施設ネットワーク事業」~熊本県立劇場

 

 「行動する美しい劇場」。1982年12月にオープンした熊本県立劇場が、その特色をはっきりと打ち出し始めたのは、元NHKアナウンサー・鈴木健二氏が館長に就任した88年7月以降のことです。

 

 鈴木氏は就任後、半年をかけて熊本県下98市町村すべてに足を運び、神楽などの伝承芸能に出合う一方、過疎の現実を目の当たりにしました。そこで劇場に「文化振興基金」を設立、県内で行われる氏の講演会などの全収入と、県内外の個人、企業による寄付を基金として積み立て、県下の市町村でさまざまな事業を展開していくことになります。

 

 最初に着手したのは、波野村に伝わる「中江岩戸神楽三十三座」です。当時、年に1度のお祭りのときに一部が上演されるだけという、いわば消滅の危機にあった伝承芸能を、1年半の年月をかけ、完全に復元。90年1月に異例の徹夜公演を行い、大きな反響を呼びました。

 

 「保存会では最初、3日に分けて公演するという話でした。それを館長が『これは本来、一昼夜かけて舞っていたもの。ぜひ、お願いしたい』と働きかけて実現しました。徹夜公演のため、条例を変更しなければならなかったんですが、これが通常の行政の立場なら、『規則に引っかかる』で、夜通し公演という発想すら出てこなかったのではないでしょうか」(県立劇場企画事業課・本田恵介氏)

 

 公演には延べ6000人の観客が詰めかけ、大成功を収めました。波野村ではこれをきっかけに、定期的に上演できる「神楽苑」「神楽殿」を建設するに至りました。

 

 また、清和村では文楽人形浄瑠璃が危機的状況にありました。村に残っている義太夫のテープは音質が悪く、演目も1つぐらいしかなかったといいます。しかし、NHKとの交渉を経て、人間国宝による義太夫のテープ10巻が村に寄贈されたことをきっかけに、ふるさとの芸能はみごと息を吹き返し、「文楽館」の建設へと繋がっていきました。現在では年間100もの公演が開催され、観光客を巻き込んでの村おこしに一役かっています。

 

 「それまで埋もれていた文化を掘り起こし、県立劇場の舞台に乗せることで、観客が感動し、その感動が継承者である人々の誇りとなる。『文化振興基金事業』は県立劇場としての大きな役割を果たしていると思います」(企画事業課長・上村浩誠氏)

 

 94年度からは熊本県から助成を受けるようになりました。そして、ハンディをもつ人と県民による「こころコンサート」や、劇場専属のチアリーダーチームによる公演など、事業は伝承芸能以外にもさまざまなジャンルに広がっています。

 

 また、県立ならではの事業として、劇場が力を入れているものに、「文化施設ネットワーク事業」があります。これは、県立劇場が招聘元となって国内外の舞台芸術公演を各地のホール(主催者)に低料金で提供するというもの。89年度に、イタリア文化会館の紹介でローマ国際室内管弦楽団を招聘したことがきっかけでスタートしました。

 

 劇場では、招聘からツアーのセッティング、統一広報や共通の印刷物制作を担当し、加えて公演先に職員を派遣し、上演のノウハウを提供します。招聘のための経費(事務費)は県が出し、ギャラや公演のための経費は各主催者が負担金というかたちで出して、劇場で取りまとめています。「ここ10年ぐらい、文化施設が増えていますが、事業費は微々たるもの。いい舞台が安く提供できれば、地域の人々にとってメリットになります。また、新しい施設から職員が県立劇場に派遣され、3カ月~1年の研修を受けるというようなことも6、7年ほど前から続いています」(本田氏)

 

 これまでも年に数回、県の公立文化施設協議会において情報交換はされてきたそうですが、この事業をきっかけに、県内各地のホールとのネットワークが強化されているとのこと。

 

 「今年度からは、"鑑賞の機会をあまねく広げていこう"ということで、新たに内容を見直し、A、Bの2種類に分けました。Aは海外の団体を招聘し、会館で上演するもの。Bは体育館や公民館で楽しめるもので、県の出身者など国内のアーティストが中心。どちらも親しみやすいプログラムになるよう工夫し、ライブの楽しさを知っていただける構成になっています」(上村氏)

 

●熊本県立劇場文化振興基金事業実績(一部) *会場=県立劇場の場合省略

1989年度


 

三加和町・山森こども神楽、秘境に能と狂言が行く(八代郡泉村、五家荘平家の里)、天草音楽祭、中江岩戸神楽三十三座・完全復元徹夜公演

90年度


御松囃子御能、清和文楽人形芝居(県立劇場、山鹿市八千代座、砥用町勢井神社殿)、文政三年棒踊り・想像復元公演、シルエット劇団「まつぼっくり」(県立劇場、玉名市民会館)

91年度


沖縄・八重山舞踊(県立劇場、山鹿市八千代座)、天領の唄を聴く会、熊本の「動」と「静」を観る、シルエット劇団「まつぼっくり」(沖縄県石垣市民会館)

92年度


獅子が舞い、虎が踊る、こころコンサート

93年度


新伝承・宇土太古26(宇土市総合グラウンド)

94年度


太鼓フェスティバル「熊本の空が響く」

95年度


チアリーダー公演「Cheer!青春」、いま、菊池川は流れる

96年度


いま、緑川は流れる

97年度


第2回こころコンサート

●熊本県立劇場
[施設概要]コンサートホール(1813席)、演劇ホール(1172席)、練習室(3室)、リハーサル室(2室)、会議室ほか
[所在地]熊本市大江2-7-1

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