一般社団法人 地域創造

熊本県小国町 第8回 悠木の里 おぐに古楽音楽祭

●「木魂館」との出合いから生まれた音楽祭

森恵美(小国町企画班)

 

 阿蘇山の外輪山の麓に位置する小国町。小国杉で囲まれた小国の夏は、バロック音楽とともに終わりを告げます。

 

 毎年、8月最後の金・土・日に行われる「おぐに古楽音楽祭」。「大自然に育まれたこの悠木の里小国に、古楽のメロディが気持ちよく流れる・・・」。創作活動の場として人々を受け入れる風土と開かれた地域でありたいという私たちの願いからスタートしたこの音楽祭も、早いもので今年でもう8回目を迎えました。

 

 ことの起こりは8年前の熊本古典舞踏研究会の合宿。合宿先だった小国町内の研修宿泊施設・木魂館(もっこんかん)は高い天井と長い残響時間をもつ室内奏には絶好の造り。そのことを合宿で知った研究会のメンバーが長年、室内奏ができる場所を探していた福岡の音楽家、麻生純さんに木魂館を紹介。小国独自の木造建築物で室内奏には最高の木魂館を麻生氏はすぐに気に入ってしまい、ついには木魂館を一望できるすぐ目の前の丘の上にASO音楽ホールを建てて小国に移り住んでこられました。そして始まったのが「おぐに古楽音楽祭」というわけです。

 

  1日目の29日は「古典派時代のフルートと弦楽四重奏」。コンサートの総指揮をとる有田正広氏のフルートに若手演奏家のヴァイオリンとヴィオラ、チェロが加わって、気持ちのいい音楽が木魂館に響き渡りました。

 

  2日目の「5世紀にわたるリコーダーとリュートの音楽」の会場は家畜市場。文字通り、普段は牛の競りが行われるところですが、このときばかりはコンサート会場へと早変わり。理由は木魂館と同じく木造建築なのに加えてコロセウム型だから。毎年、この音楽祭のために小国町に来てくれる佐藤豊彦氏のバロックリュートと、日本語が上手で「物心ついたころには演奏をしていた」という5年ぶりに参加したワルター・ファン・ハウヴェ氏のリコーダーが、私たちを西洋音楽の源流へと導いてくれました。

 

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 そして最終日の31日には、フィナーレ・コンサート「合奏・合唱・バレエでつづる18世紀フランスの雅」が小国中学校の体育館で行われました。このコンサートには有田氏をはじめとする音楽祭参加演奏家が総出演。第1部の音楽祭講師によるコンサート「18世紀フランス器楽曲」に続き、第2部はオペラ・バレエ『カストルとポリュックス』。元々は声楽が専門だったという古賀穂南美氏と古典舞踏からクラシック・バレエまでをレパートリーとする彌吉清孝氏を中心に、熊本古典舞踏研究会のメンバーが華やかなドレスに身を包み、コーロピエーノの合唱に合わせて、ベルサイユ時代の華奢な宮廷物語が踊りで再現されました。

 

 そして3日間のフィナーレは恒例の『七つの子』の合唱。指揮棒を振るのは麻生純さん、演奏は全出演者、そして歌うのはコーロピエーノと会場の皆さんの全員です。「カラスなぜ鳴くの~」、小国の町からこの歌声が聞こえると、阿蘇の山々のススキの穂は頭を振り始めます。小国に秋が来た合図です。

 

 来年はプロとアマチュアの通奏低音が実現するとともに、声楽家も加わる予定です。古楽が町民にごく日常的なものとして受け入れられるのは、そう簡単なことではありませんが、この音楽祭を開くことにより町民と町外の人たちとの間に交流が生まれ、音楽を通してそれぞれの生活が楽しいものになればいい。いろんな文化を吸収できる土壌に肥料や水をまき、いつの日にか古楽文化の大きな花を咲かせ実になれば・・・。そう私たちは考えています。

 

 もうすでに小国では来年の「第9回おぐに古楽音楽祭」に向けての準備が始まっています。

 

 

●第8回おぐに古楽音楽祭

 

[主催]小国古典音楽協会、財団法人学びやの里・18世紀音楽祭協会
[日程]8月29日~31日
[出演・講師]有田正広(トラヴェルソ/音楽監督)、ワルター・ファン・ハウヴェ(リコーダー/オランダ)、佐藤豊彦(リュート)ほか
[会場]木魂館、ASO音楽ホールほか
[問い合わせ]18世紀音楽祭協会事務局 Tel. 092-741-9541

 

地域創造レター 今月のレポート
1997年10月号--No.30

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