一般社団法人 地域創造

アーツセンター情報

北海道・東北

●酒田市美術館(山形県酒田市)
〒998 山形県酒田市大字宮野浦字飯森山西17-95
Tel. 0234-31-0095 岩堀慎司
97年10月3日オープン
眺望の良い丘陵地の芝生が広がる敷地内に設置された美術館。周辺に土門拳記念館、生涯学習施設の出羽遊心館などがあり文化ゾーンを形成。収集方針は、これまで寄贈、購入などで集めた作品群に加え、近・現代の美術品を中心に、市ゆかりの作家などの作品を収集していく予定。常設展示としては、市出身の彫刻家故高橋剛や、洋画家故斎藤長三の作品、地元から寄贈を受けた現代日本具象洋画の森田茂の作品を中心に展示。開館記念展は「卒寿記念-森田茂展」、「平山郁夫展-世界の文化遺産を描く-」。今後、年4回程度、国内外の作品を集めた特別展を開催。そのほか特別展に合わせた講演会、作品解説会、ミュージアムコンサートで展覧会を多彩に演出。また、子どもを対象としたワークショップや絵画展などの教育普及活動も企画していく。
[設置者]酒田市
[運営者]財団法人酒田市美術館
[展示スペース]857m2
[設計者]池原義郎・建築設計事務所

北陸・中部

●福井県立音楽堂(ハーモニーホールふくい)(福井県福井市)
〒918 福井県福井市今市町40-1-1
Tel. 0776-38-8288 本田嘉史
97年9月23日オープン
緑と水に囲まれた広い敷地内に建てられたホール。民家風の屋根をイメージした大・小ホールの外観が特徴。大ホールはシューボックス型の音楽専用ホール。小ホールは2階席をもつミニアリーナ型。県産のハープやマリンバなどを展示するギャラリーも。柿落としは岩城宏之指揮によるマーラー作曲交響曲第2番『復活』を県内外から集まって結成された市民オーケストラと合唱団により公演。そのほか中村紘子ピアノリサイタル、バンブークインテットコンサート、県民音楽祭など。今後、月2本程度自主事業を実施していく。友の会組織のハーモニーメイトによりホールのファンを募り愛好家の裾野を広げていくほか、ボランティアの育成研修を実施するなど市民参加型の運営を図っていく予定。
[設置者]福井県
[運営者]財団法人福井県文化振興事業団
[ホール席数]大ホール1456席、小ホール610席
[設計者]日建設計名古屋事務所

九州・沖縄

●長与町民文化ホール(長崎県長与町)
〒859-06 長崎県西彼杵郡長与町(ながよちょう)吉無田郷73-1
Tel. 095-883-8731 村山和聡
97年7月1日オープン
長崎市に隣接する町の中心街に近い公園内の高台に設置。音楽を中心とした多目的ホールのほかギャラリー、会議室などを有する。外観は円形を基調としたデザイン。ホワイエのガラス越しに町の中心街を眺望することができる。コーラス、器楽演奏など音楽活動が地元で盛んになるのに伴い、町の中で音楽をとの住民の声をバックに、新しいふるさとづくりを目指して計画された。オープン後のホール運営については、民間の音楽、演劇、能などの知識経験者や活性化グループの代表など、10名で構成される運営委員会において企画を決定。今後、表、裏方にボランティア参加の可能性も検討する。オープニングとして九州交響楽団演奏会、わらび座による民話を題材としたミュージカル『男鹿の於仁丸』のほか、ピアノリサイタル、落語などを実施。
[設置・運営者]長与町
[ホール席数]604席
[設計者]長崎建築設計・井上建築設計・ゼン環境設計共同企業体

トピックス

●岐阜県が六本木に土地信託方式によりホールを設置
岐阜県は、10月10日、東京六本木交差点近くにオリベホールをオープンさせる。これは、土地信託方式により岐阜県が他の地権者との共同事業で建てたビルの一部に設置したもの。同じビル内には岐阜県の物産・観光情報フロアーもあり、情報発信も行う。ホールは、ロールバックチェアー採用の250席(最大)の多目的型。ホールの運営は信託方式により民間会社に任されているため、ホール利用の際は委託会社が貸し出しをするかたちとなる。オープニングは県内の地歌舞伎および文楽を県主催で実施し、伝統芸能をPRする。そのほか県・市町村関係のイベント、セミナー、パーティーなどに利用する予定。通常期は委託会社の運営により、ファッション関係の催し、展示会、演劇などが予定されている。
[問い合わせ]岐阜県総務部管財課 Tel. 058-272-1111 内線3600 大野
[所在地]〒106 東京都港区六本木6-1-24 ラピロス六本木内 Tel. 03-3403-9400

 

 

観客とともに育った多目的ホール、19年の足跡~厚木市文化会館

 

 今回は、ステージラボ松山セッションホール運営入門コースで講師にお招きした厚木市文化会館の井上允館長の講義をもとに、厚木市文化会館についてご紹介します。

 

●地域の状況を踏まえた多角的な事業展開

 

 オープンは1978年。開館以来、常に市民に話題を巻き起こす事業を展開、後続の公共ホールのお手本となってきました。その厚木市文化会館も一つの壁に突き当たった時期があります。開館当初は、貸館で大型の興行が次々に入り、自主事業はクラシックを中心に華々しい事業が並びました。しかし3年目を迎える頃から近隣に同規模のホールが続々オープンしたことから貸館、自主事業とも低調になっていきます。危機感をもった会館は自主事業のプログラムを再検討。市民の各層をターゲットに、クラシックに加えポップス、演劇、文化講演会など幅広いジャンルの事業を実施するほか、市民参加事業にも取り組み、新たな観客を掘り起こすことに成功しました。

 

 その後も、PRを兼ねて市民の会館に対する意識調査を度々行ったり、貸館のプログラムに変化がないかと目を配ったり、貸館、自主事業を問わず、観客の反応やチケット売場に並ぶ行列をチェックするなど、日常的にマーケティングを実施しているそうです。こうした情報をフィードバックしながら新しい自主事業の展開を検討し、96年度実績では、自主事業数24本、大ホールの稼働率64%、小ホール81%、年間延べ29万人の市民が会館を訪れる活況をつくっています。

 

 

●子ども芸術鑑賞会と子どもミュージカル

 

 そうした事業のなかで、会館が力を入れてきたものの1つに、将来の文化会館のファンを育てる、子どもを対象としたプログラムがあります。教育委員会、子ども会に働きかけ、3者の共催で「子ども芸術鑑賞会」が85年にスタート。制作費は3者で分担し、子ども会を通じて毎年6000人以上を集客しています。ただし「いいものはお金を払って観るという意識をもってもらう」ためチケットは無料ではなく1枚500円。プログラムは会館の職員が実際に上演会場に足を運び、これならと感じた作品を招聘してきました。

 

 事業を続けるうちに、出演者から「厚木の子どもたちは見方が違う」という声が聞かれ、子ども会が主催する文化発表会でも鑑賞会で観た踊りや歌をアレンジしたものが目につくようになります。そうした状況をみて井上館長は「厚木の子どもたちで何かできるのではないか」と考え、88年の自主事業で宮城まり子さんとねむの木学園の子どもたちのコンサートを実施した際、まり子さんに相談。翌年、実現したのが、ねむの木学園の子どもたちと厚木の子どもたちの共演によるコンサートです。公演の前には学園の子どもたちが市の施設に滞在し、会館で稽古を重ねました。会館の職員も宿舎で当直。この事業を通じて、職員が「何でもできる自信がついた」とのこと。

 

 そして、子ども芸術鑑賞会を始めて10年目の94年から、厚木の子どもたちによるミュージカルに取り組みます。徹底したのは「学芸会にはしない」ということ。作品の質を高めるために、オーディションを実施、厳しい稽古の中から選ばれた子どもが主役を演じ、脇役にはプロを起用。今年8月に上演された『パパの子守歌』では、133人の応募者の中から選ばれた66人の子どもから大人までが、演出を手がけている坂本博士氏の厳しい指導のもと、4カ月間毎週土日、ときには1日8時間にも及ぶ稽古を重ね本番に臨みました。客席では同じ厚木の子どもたちが熱心に舞台を見つめていました。

 

 井上館長は「この事業を鑑賞して『あの劇団に入りたい』と問い合わせてくる子どももいます。ただ、我々はプロを育てるのが目的ではなくて、あくまできっかけづくり。このミュージカルに参加した子が、将来厚木に戻ってきて、自然なかたちで市民ミュージカルができれば、素晴らしいですね」。

 

 

●井上允(いのうえ・まこと)
1947年、神奈川県生まれ。民間会社の勤務を経て、同文化会館の開館時から館の運営と自主事業の企画・制作・実施に携わる。

 

 

●子ども芸術鑑賞会
実施プログラム/公演回数/鑑賞者数(人)
1985年 劇団仲間『森は生きている』 5回/7000
1986年 劇団四季『エルリック・コスモスの239時間』 5回/6300
1987年 藤城清治とジュヌ・パントル影絵劇『銀河鉄道の夜』 5回/6530
1988年 井上バレエ団/神奈川フィル『くるみ割り人形』 6回/6800
1989年 『ウィーンの森少年合唱団』 5回/6720
1990年 ミュージカル『パパの子守歌』 5回/6400
1991年 『中国少年友好芸術団』 5回/7000人
1992年 ゆかいなファミリーコンサート『神奈川フィルハーモニー管弦楽団』 5回/6880人
1993年 劇団仲間『モモと時間どろぼう』 5回/6000人
1994年 ミュージカル『小鳥になったライオン』 5回/7000
1995年 ミュージカル『らくだい天使ペンキィ』 6回/7180
1996年 米倉斉加年演出『不思議な卵』 5回/4930
1997年 ミュージカル『パパの子守歌』 4回/4000
*94年から厚木の子どもによる作品

 

 

●厚木市文化会館
[施設概要]大ホール(1400席)、小ホール(376席)、展示室、練習室ほか会議室など
[所在地]神奈川県厚木市恩名295-1

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