一般社団法人 地域創造

支援事業研修プログラム紹介

都道府県主催の文化担当者育成事業を支援

 

●地域のタイプ別実地研修からポスターづくりまで

 

実践型プログラムで人材育成を目指す

 

 ここ10年ほどの間に、民間、国、大学などで文化施設の運営や事業の制作を学ぶ各種講座が次々に開講されています。加えて、近年では都道府県が市区町村の文化担当者などを対象に研修を開くケースも増えてきました。96年1月に当財団が全国都道府県政令市を対象に行った調査では、実施予定のものも含め34団体が文化関係の研修を企画していました(外郭団体含む)。

 

 市区町村の文化施設を支える人材を育成しようというのが共通の目的ですが、各地域の文化的背景や、住民のニーズを踏まえ、より地域の実情に則した実践的な研修を実施するところも出てきました。研修プログラムも日々進化しているといった感じです。

 

 財団法人地域創造では、そうした人材育成事業の一層の充実を支援するため、今年度より都道府県が市区町村の文化担当職員を対象に開催する研修プログラムへの助成を始めました。今年は、新潟県文化振興財団、石川県、愛知県、和歌山県、長崎県が主催する5つの事業を支援しています。

 

 今号では、石川県、愛知県、新潟県の各担当者に、各県の取り組みと課題についてお話をうかがいました。

 

 

住民主役のホールづくりがテーマ

 

石川県「ふるさとステージネットワーク事業」

 

■谷口薫(石川県地方課)

 

 「石川県では、昨年から県内の公共ホール担当者を対象とした研修事業を開催しています。昨年は、県外から講師を招き、講義やワークショップを中心に企画・制作・広報の基礎知識を学びました。参加者は15人。講義内容は、舞台芸術の提供に止まらず、ホールの果たす社会的な役割にまで及び、大いに刺激になったようです。ただ、理想論を聞いているだけではどうしたらいいか分からないという声もありました。そこで、今年は昨年の基礎編に続く実践編というかたちで、県内2、3の地域のホールを会場として、実際に公演を立ち上げようというプログラムを組みました。

 

 テーマは『住民主役のホール』です。ホールの担当者が住民に文化事業を"提供する"だけでは面白くないし、地域に何も残らないと思います。地域の人に、ホールに関心をもって関わってほしいーーとはいっても、市民と何をどう話せばいいか分からない担当者も多いはずです。そこで市民による自主管理・運営を実践している金沢市民芸術村ドラマ工房のディレクター青海康男さんにアドバイザーをお願いしました。最初に合宿形式のゼミを行って、青海さんとホール担当者で作戦会議をする予定です。

 

 この研修事業で、ホールの活性化ということに止まらず、ホールと住民との新しい関係づくりができればと考えています。ホールが入り口となって、地域づくりなどについて、行政と住民がともに取り組んでいく仕組みができれば素晴らしいですね」

 

 

■青海康男(金沢演劇人協会)

 

 「『金沢市民芸術村』ドラマ工房では、今年から5カ年計画で市民を対象とした演劇ワークショップを開催します。企画を担当するのは自主運営をまかされている面々で、行政側の意向も聞きながらそれをとりまとめるのが目下の私の役割です。

 

 住民参加といっても、行政側だけでプログラムすると、やはり市民はお客さん。一時的な楽しみで終わってしまうという事例がほとんどではないでしょうか。そこで集まったパワーをどのように蓄積していくか。まず、地域で核になる人たちに思い切ってまかせること。一方で参加の窓口は広く開いて多様な人に関わってもらうことも大切だと思います。私の経験からお役に立つことがあれば、と石川県のアドバイザーを引き受けました。

 

 この研修では、まず会場となる地域でユニークな取り組みをされているキーマンを探し、その人に協力してもらって共同で企画を立てます。そのほか広くスタッフ、参加者を募り一緒に企画を実現していこうと考えています。

 

 とはいっても、僕自身、金沢以外の地域で核になるような人に出会えるか正直分からない。とりあえず、その地域の面白い人が集まっている"たまり場"を探すことですね。そこに出掛けていって、みんなの話を盗み聞き(?)することから何かが始まると思っています」

 

 

都市型、都市郊外型、町村型~タイプ別研修

 

愛知県「アート・マネジメント実践講座」

 

■清水俊治(愛知県文化振興局)

 

 「愛知県では、1994年から慶應アートセンターにコーディネートをお願いして講座を開催しています。構成としては、初めに概論を行った後、総務担当、企画担当、広報・営業担当の3つのグループに分かれ、実際に公演を制作します。少人数で、みんなが考えて動くことがこの講座の特色です。

 

 初めの2年間は名古屋市内で開催したのですが、昨年は豊橋市民文化会館を会場に実施しました。参加者の多くは、名古屋以外の地域から参加しています。名古屋で制作を行っても、郊外とはいろいろと条件が違うので応用するのが難しい。例えば、名古屋だとアーティストを呼びやすいし、印刷物をつくるのにも関連会社が多いのでやりやすい。条件が違う郊外で、どう工夫できるのか、昨年実地で研修を行ってみたわけです。

 

 住民のニーズも地域によってさまざま。昨年は、地域の状況を豊橋市の担当者に調べて報告してもらい、それをたたき台に企画をつくりました。豊橋は高校演劇などが盛んなのに、なかなか公演を見る機会がない、ということから昨年1月「D.K.HOLLYWOOD」による演劇公演を行いました。

 

 今年は、幸田町の町民会館を会場に実施する予定です。大都市郊外型とまた背景も需要も違う町村で、どんな文化事業が可能か?事業の実施だけでなく、その検証にも時間をかけたいと考えています」

 

 

文化会館をバックアップする土壌づくりも

 

新潟県「アートプロデュース講座」

 

■丸田洋一(新潟県文化振興財団)

 

 「新潟県では、昨年からアートプロデュース講座を開催しています。基礎編として前半に合宿形式の集中研修を行い、後半は実務編として月1回実践的な研修を行います。最終的には、参加者で実行委員会を組織し、公演を実施します。

 

 昨年の実務編はどちらかというと頭で考える講義形式のものが多かったのですが、今年は実際にデザイナーと話し合いながらチラシやポスターをつくったり、助成制度の説明と一緒に、実際に申請を行うものなど参加者が実際にやってみる研修が中心になっています。

 

 また、昨年の参加者はホール担当者がほとんどだったのですが、今年は市町村の文化担当職員まで枠を広げました。ホール事業というのは、ホール担当者だけでやるのではなく、市町村の文化担当課なども共通の認識をもって、バックアップしていかないと成立しません。この研修でその土壌づくりもできればと考えています」

 

 

●平成9年度地域創造支援研修プログラム

 

◎ふるさとステージネットワーク事業
[主催]いしかわ公共ホール連絡協議会
[担当窓口]石川県総務部地方課
◎アート・マネジメント実践講座
[主催]愛知県
[担当窓口]愛知県総務部文化振興局振興課
◎アートプロデュース講座
[主催]財団法人新潟県文化振興財団
◎イベント・アカデミー(和歌山県)
[主催]世界リゾート博記念財団
◎地域文化プロデュース実践講座
[主催]長崎県
[担当窓口]長崎県生活環境部文化推進室

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