「芸術見本市」報告
1997年2月25日~27日
皆様のご協力により、「芸術見本市」を無事に終了することができました。ご参加・ご協力いただきました方々、本当にありがとうございました。
本年度は2月25日から27日までの3日間、開場したばかりの東京国際フォーラムを会場にしてブース部門を中心に「地域創造塾」や国際交流基金のフォーラムなどたくさんの関連事業が実施されました。ブース部門の出展団体は昨年度の2倍を上回る215団体、入場者は延べ5000人にのぼる大盛況となりました。
また、「地域創造塾」にも多数のご参加をいただき、特にシンポジウム「市民ボランティアの可能性をめぐって」は盛況で、ボランティアに対する皆さんの関心の高さがうかがえました。これにつきましては、地域創造の調査報告書が間もなく発行されますので、参考にしていただければと思います。
今回の「芸術見本市」では、出展者の方が直接アピールできる場として、ショウケースとミニプレゼンテーションを設けました。ショウケースでは30分の持ち時間で入れ替わり立ち替わりパフォーマンスが行われるという、まるでバラエティショー状態で、紛れ込んできた子どもがステージにかぶりついて楽しんでいる姿も見られ、ちょっとしたお祭り風景が展開しました。諸々の都合上、ブース会場内ではなく別会場での実施となりましたが、ショウケースの有効性は証明できたのではないでしょうか。
ミニプレゼンテーションでは20~30人が会議室に集まり、出展団体の方との質疑応答が行われました。オーストラリア・アデレード・フェスティバルのディレクター、ロビン・アーチャーさんは、「98年にフェスティバル20周年記念として総括的なプログラムを組んだ後、2000年にはビジュアル・アーティストがフェスティバル・センターを占拠するような催しを企画している。北部の砂漠、海、マレー河を会場にした新作をつくり、センターとつないで映像を流すとか。このコミッションを今からでも始めたい」とプレゼンするなど、海外の最新情報が飛び交う一幕もありました。
●ブース部門
本年度の出展団体の傾向としては、アートカンパニーの充実が上げられます。その中で特に目についたのが、無名の若手グループの参加です。以下、そのコメントをご紹介しましょう。
◎DANCE GROUP 86B210 鈴木富美恵(代表)
「グループ名は昔の私の学籍番号です。言葉だと国によって違うけど数字は同じ。みんな地球人ということを表したかったので、身近な数字を付けました。「芸術見本市」については、東京国際フォーラムにホールについての問い合わせをした時に誘われて。普段出会えない人と会えるんじゃないかと思って出展しました。実際、財団の人とか、つくる側じゃない人と会えてすごく、すごく勉強になりました。具体的に決まったというのはありませんが、フェスティバル関係者の人に関心を持ってもらえたみたいです」
◎D-COM 冬樹(コーディネーター)
「D-COMというのはダンサーが自分たちの手で自分たちのためのアートマネージメントシステムをつくろう、ダンスというジャンルを活性化する活動をやろうという一種の運動体です。大阪にあるTORII HALLで、関西にどれだけダンサーがいるんだろうというので6カ月、20公演やった「DANCE BOX」がきっかけでできました。みんなで一緒にやれば客層をクロスオーバーさせて広げることができますし、個人だと"カラーが合わない"で終わる企画特集も、パックだと"いろいろあります"と言える。ダンスはマイナーだと思っていると弱者になってしまうので、土壌がないなら自分たちでつくろう、積極的にやっていこうと活動しています。「芸術見本市」の感想は、アート関係者が集まっているのにアートっぽくないと思います。そこら辺を工夫するといいんじゃないでしょうか」
◎zicentury 内藤ひろみ(制作)
「うちはまだ知名度が低いので、普段、お目にかかれない人にも知っていただければと思い、参加しました。マスコミ回りをしてもなかなか相手にしていただけないんですが、「芸術見本市」は無名も有名も関係なく、みんな平等にプレゼンテーションできます。皆さん好意的に話を聞いてくださってとてもうれしかったです」
●「地域がおもしろくなる~吉本戦略」
「地域創造塾」の中で異彩を放っていたのが、お笑い界の覇者、吉本興業代表取締役社長、中邨秀雄氏をお迎えしたセミナーでした。大阪の劇場を拠点に若い才能を次々と世に送り出しているだけでなく、近年では、東京、福岡、札幌、仙台、金沢、長崎(計画中)など積極的な地域拠点づくりを進め、自治体職員の受け入れや町おこし企画のプランニングを行うなど、そこには"地域をおもしろくする吉本戦略"が見えかくれしているようです。
講演のポイントを要約してお伝えすると、1つ目がタレントという財産を育てるために劇場がいかに必要であるかということでした。寄席好きの道楽から始まり、寄席のチェーン展開(最盛期で28館)で大成功したという吉本の成り立ちを振り返りながら、タレントを育てるのは劇場に通って来るお客さんであり、お客さんを大切にすることが吉本の基本であると話されました。
2つ目が、メディア・ミックスにより知名度を上げることの重要性です。ラジオに出ると寄席の客が減るという吉本の大反対を押し切ってNHKラジオに出演した桂春団治のエピソードを交えながら、知名度がタレントの商品価値を上げる例がいろいろと披露されました。また、今後のマルチメディア時代を睨んで、新しいメディア対応を考えているとの発言もありました。
3つ目が、タレントやソフトをつくるためには、まず裏方(プロデューサー)をつくれということでした。間寛平のマラソンを例に、プロデューサーが体を張って企画をつくっていること、その重要性が話された後、いいプロデューサーをつくるためにはということで落語の「稽古屋」を引きながら中邨社長流プロデューサー10ヵ条を展開。会場はしばし笑いに包まれ、和やかなセミナーとなりました。
●「芸術見本市」概要
[会期]2月25日~27日
[会場]東京国際フォーラム
[主催]国際交流基金、社団法人全国公立文化施設協会、財団法人地域創造、社団法人日本芸能実演家団体協議会
[後援]東京ときめきフェスタ実行委員会、財団法人東京国際交流財団