一般社団法人 地域創造

福岡市 福岡市総合図書館 映像ライブラリー

  アジアのフィルムセンターを目指して、福岡市にアジア各国の映画を集めた映像ライブラリーが、6月29日オープンした。福岡では91年から、毎年9月に「アジアフォーカス・福岡映画祭」が開催され、日本におけるアジア映画の拠点となっている感がある。そして今回のライブラリーの設立は映画祭という限られた期間に止まらず、日常的にアジアの優れた映画を市民に紹介する場として、これまでの福岡市の文化政策をさらに進めたものといえるだろう。このライブラリーがある福岡市総合図書館映像資料課の松本政博氏に話を伺った。

 

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  「『映像ライブラリー』は、今回オープンした『福岡市総合図書館』の映像に関する機能、映像ホールやフィルム所蔵庫などを便宜的に総称する名前です。つまり、『映像ライブラリー』という独立した施設があるわけではなく、新しい図書館の一機能として映像も扱っていこうという全体の構想の中で実現したものです。日本、アジア各国の優れた映画、また福岡と関係の深い映画を収集保存すること、同時にそれらの映画を市民が日常的に見ることの出来る場所を提供すること、これらを目的としています」

 

  図書館の一機能として視聴覚関係の資料をそろえることは、今日ではめずらしいことではない。しかし、福岡市総合図書館の場合、映像ライブラリーの規模は図書館の一機能というには群を抜いている。まず、映画のフィルムを長期保存するのに必要な温度と湿度を維持できる所蔵庫。これは35ミリの2000フィート・プリントを2万巻、所蔵できる広さをもつ。長編映画を4000~5000本程度保存できる規模である。収集するものはフィルムだけでなく、ビデオや映像関係図書、ポスター、プログラム、脚本なども含まれる。所蔵作品の点検や編集作業のための試写室や編集室も設けられている。

 

  映像ホールでは、現在長編、短編それぞれ約200本ある所蔵作品を上映するほか、さまざまなプログラムが企画されている。

 

  「現在オープニング企画として実施されている『韓国映画祭』は、川崎市民ミュージアム、朝日新聞との共同企画ですが、福岡では全80本のプログラムを2年間で4回に分けて実施する計画です。その第1回が今開催中で、第2回は今年の『アジアフォーカス・福岡映画祭』期間中に協力企画として開かれます。このときには同時に、アジア各国のフィルムセンター関係者や映画人を招待して『アジア映画人会議』を開催します。フィルムの保存、アジア映画振興と映画祭、アジアにおける日本映画といったテーマについてシンポジウムを行う予定です」

 

  このように、映像ライブラリーと福岡映画祭は密接な関係をもちながら運営されている。年間のライブラリーの購入予定本数30本の内、10本が映画祭上映作品となっている。ライブラリーのもうひとつの特色は、アニメーション、実験映画、8ミリ映画などの短編映画も積極的に収集していることだ。地元出身の若手映画監督、石井聰亙の初期の8ミリ作品を16ミリプリントにブローアップして所蔵するなど、ユニークな試みだ。同ホールでは、東京で開催されている若いフィルムメーカーのための映画祭、「ぴあフィルムフェスティバル」と「イメージ・フォーラム・フェスティバル」の福岡上映も計画されている。

 

 一方で、いわゆる日本映画の古典と呼ばれる作品も充実しつつある。

 

 「福岡には名画座がなくなり、若い観客が日本映画の名作をスクリーンで見る機会がありません。ビデオではなく、スクリーンの大きな画面でそういった作品を見てもらいたいのです」

 

 映画祭から常設館へ、点から線へと行政の映画文化への関わりが広がってきた。

(映画プロデューサー 西村隆)

 

●福岡市総合図書館
〒814 福岡市早良区百道浜3-7-1
Tel. 092-852-0608

 

地域創造レター 今月のレポート
1996年8月号--No.16

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